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第43話 刺すとか言うな

数日が過ぎた。


街の空気は、確かに変わっていた。


夜は静かで、

人々は不安なく通りを歩いている。


――守られている街の音だった。


ルークは街外れの小さな森で、光属性を展開していた。


手をかざす。


淡い光が零れる。


地面の一角が黒く濁っている。


魔素が滞留した場所。


普通の人間なら、立っているだけで呼吸が重くなる。


だが――


光を流す。


じわり、と。


空気が澄み渡る。


圧が抜け、森の匂いが戻った。


「……なるほど」


浄化。


破壊ではない。


歪みを整え、正常へ戻す力。


闇が“押さえつける”力なら、

光は“正す”力。


試しに炎を灯す。


熱い。


腕を叩く。


痛い。


「光だけだな、耐性は」


万能ではない。


「役割がある」


背後から声。


「一人で何ブツブツ言ってるの」


振り返るとリーナ。


淡い緑と青の混ざった髪が風に揺れている。


「魔素を浄化できる」


「アンデッドには強い」


「へえ」


リーナは腕を組む。


「でもこの辺、アンデッドなんて聞いたことないわよ?」


「そそうなんの?」ルークが頭をかく


「他には」


「炎は?」


「熱いです」


「物理は?」


「痛いです」


「じゃあ無敵じゃないじゃん」


「はい」


「使い方次第です」


リーナは満足そうに頷く。


「それでいい」


「無敵とかキモいし」


ルークは笑った。


森の空気は、もう澄んでいる。


その日の午後。


孤児院計画を市長へ打診する。


ギルド経由の面会。


市長は慎重な目で二人を見つめていた。


「孤児院を建てたい、と」


「土地の購入と許可を」


市長は指を組む。


「善意は評価する」


「だが――前例がない」


「この街では民間主導の福祉施設は存在していない」


「議会を通す必要がある」


重い理由ではない。


だが、動かしづらい理由だ。


リーナが口を開く。


「作れて当面の運用資金はあります」


ルークが続ける。


「運営は透明化します」


「帳簿も提出します」


市長はしばらく黙り込み、息を吐いた。


「……検討しよう」


完全な拒否ではない。


だが、すぐには動かない。


政治とはそういうものだ。


外に出る。


「めんどくさいわね」


リーナがぼやく。


「剣の方が早い」


「でも剣じゃ作れない」


「仕方ないさ。組織ってそんなもんだろ」


「きも」


「何わかったようなこと言ってんの、ルークのくせに」


歩きながら、リーナがふと静かになる。


「ねぇ」


「この街にいるって言ったよね」


「うん」


「でも世界は見たいかな」


ルークは空を見上げる。


雲がゆっくり流れている。


「見たい」


「人も土地も」


「この世界はまだ知らないこと、たくさんだからさ」


リーナの目がわずかに揺れる。


「……そっか」


だがルークは続ける。


「すぐじゃないよ」


「まずはこの街を整えるというか」


「孤児院を形にする」


「子供たちに残せるものを作る」


「それからだ」


リーナの表情が戻る。


「……ならいい」


「勝手にいなくなったら刺すから」


「刺されるのは勘弁だな」


「一緒に来る?」


「なんちゃって」


一瞬止まる。


顔が赤い。


「はぁああ?」


「きも」


でも声は柔らかかった。


夕日が街を染める。


守る場所と、

広がる世界。


どちらも、まだ選べる。


二人は、その途中にいた。

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