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第42話 終焉に差し込む朝日

夜明け前の街を、二つの影が駆ける。


逃げた強盗団。

ムリソー一派の残党。


血の跡はまだ新しい。


恐怖で統制を失った逃走は、痕跡だらけだった。


「躊躇しないからね」


リーナが低く言う。


「同じく」


ルークの声に迷いはなかった。


最初の一団。


路地裏に追い詰められた三人が振り向く。


「や、やめろ……!」


答えは重力だった。


地面が悲鳴を上げる。


三人が同時に潰れる。


次。


屋根を伝って逃げる影。


リーナが跳ぶ。


影のように距離を詰める。


足を切る。


倒れた瞬間、喉を裂く。


終わり。


「次」


ルークの声は冷静だった。


港近く。


十数人が固まって逃げていた。


「囲め!」


叫び声。


だが遅い。


ルークが手を上げる。


影が地を這う。


絡みつく。


沈む。


重力が落ちる。


骨が軋み、次々と意識が飛ぶ。


残った二人が背を向けた瞬間――


リーナの刃が交差する。


倒れる。


沈黙。


夜はまだ明けきっていない。


ムリソーは仲間数名と共に走っていた。


荒い呼吸。


血の匂い。


背後を振り返る。


「追ってきていない……?」


その瞬間。


前に、立っていた。


「……なっ」


一瞬で距離を詰めていた。


ルーク。


「終わりだ」


ムリソーは躊躇しない。


火焔玉を投げる。


続けざまに雷撃玉。


爆炎が弾け、雷が走る。


だが。


雷は光。


ルークの身体が淡く輝く。


雷撃が触れた瞬間、吸い込まれるように消えた。


「な……」


ルークは静かに手を上げる。


雷を掴む。


収束。


刀の形へ。


「これは、返すよ」


一閃。


雷光がムリソーの胴を切り裂いた。


決着は一瞬。


膝が崩れる。


仲間たちは動けない。


その間に、リーナが影から現れる。


躊躇なく。


一人、二人。


静かに沈めていく。


戦いは終わった。


ムリソーは血を吐きながら見上げる。


「……見逃してくれ」


「頼むよ……」


リーナは無言だった。


感情がない。


ただ、見下ろしている。


ゆっくりとナイフを構える。


ムリソーの首へ。


迷いなく、刺す。


息が止まる。


終わり。


リーナの膝が崩れる。


「……全然楽しくない」


ぽつりと呟いた。


ルークは隣に立つ。


「君は殺しを楽しむ人殺しじゃない」


「守るために戦った、それでいいんだよ」


「お疲れさん」


「みんなが待ってる。帰ろう」


夜が終わる。


朝。


約束通り警備隊が来た。


「引き取りに来たが……捕縛者は?」


牢は空。


警備隊が眉をひそめる。


「冷やかしならやめてくれよな」


偉そうな態度。


リーナの眉が動く。


「あんたたちが仕事しないから――」


言いかけた瞬間。


別の警備隊が駆け込んできた。


「街が大変なことになってる!」


「死体がたくさん転がってる!」


「急いで来てくれ!」


空気が凍る。


ギルドの面々は互いを見る。


理解している。


これで騒ぎになる。


街は変わらざるを得ない。


今までのつけを払う時だ。


誰かが小さく笑った。


倉庫で助けた暗殺者の子供。


孤児たち。


もし、守る場所があったなら。


こんな道に落ちることはなかった。


ルークが口を開く。


「そういえばさ」


「強盗団の金は街の被害者に返すとして」


「問題はこっち」


「月夜のキャラバンから回収しておいた金銀財宝がある」


「これで、この街に孤児院的ないく当てのない子供を受け入れる場所を作らないか?」


一瞬の静寂。


リーナの目が見開かれる。


「……なによ、それ」


「……でも、悪くないわね」


「あんたにしては、たまにはいいこと言うじゃない。」


リーナのツンの部分が出る。


ルークが苦笑いする


ヤンが笑う。


「それじゃあ、うちも一肌脱ぐかな!」


「ギルドも絡めてやろうぜ」


「ガキでも金は必要だ、悪い稼ぎ方じゃなく。正しい稼ぎ方ってのを教えてやる」


「子供たちは守る!この街の未来だからな」


笑い声が広がる。


朝日が差し込む。


血の匂いはまだ消えない。


だが、この街には確かに未来が生まれた。


壊滅の果てに。


始まりがあった。

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