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第39話 闇と闇と誤算

月夜のキャラバンは、異変にすぐ気づいた。


統率の取れた一団にとって、仲間が戻らないという事実はそれだけで異常だった。


「帰還予定時刻を過ぎました」


報告の声は低い。


「西の商業都市へ向かった四名、連絡なし」


沈黙。


ボス――ムリソーは静かに目を閉じた。


「密偵を出せ」


「現場を確認しろ」


影が夜へ消える。


西の商業都市。


瓦は割れ、壁には深い亀裂。


床には引きずられた痕。


激しい戦闘があったことは一目で分かった。


血痕は少量。


だが散らばり方が異常だった。


潰れた木箱。


めり込んだ地面。


「……何だ、この跡は」


「斬撃じゃない」


「殴打とも違う」


理解できない沈黙。


「だが――」


「目標はいない」


「捕縛、もしくは連れ去られた可能性」


互いに頷く。


「報告だ」


影は再び夜へ溶けた。


本部。


報告を聞いたムリソーは静かに手を前へ振った。


「暗殺チーム三班」


「街へ」


それだけで構成員たちは一斉に動き出した。


月夜のキャラバンは、本気で潰しにかかった。


その頃。


捕らえた強盗団の頭目はギルドの牢へ放り込まれていた。


鉄格子が閉まる音が響く。


「ここで大人しくしてて」


リーナが冷たく告げる。


「逃げたら足、使えなくするから」


頭目は必死に頷いた。


ルークは地図を広げる。


赤い印が示す落ち合い場所。


「ここだね」


「早速、行こう」


「時間をかけたら相手に準備される」


二人はすぐに街を駆けた。


冷たい風が流れた。


リーナの目が鋭くなる。


「ルーク、避けて!」


足元から氷の刃が連なって噴き上がる。


石畳を割りながら迫る結晶の槍。


「うわっ!」


跳び退る。


粉砕された地面。


初めて見る魔法。


(いや危険すぎる)


闇の中から影が現れる。


各班三名。


それぞれに魔法使いを含む編成。


一人が低く告げた。


「すでにお前たちは抹殺対象となった」


次の瞬間。


四方八方から投げナイフ。


同時に近接攻撃。


連携の完成度が異常だった。


「……このままじゃリーナを庇いきれない」


ルークは即断する。


リーナの周囲を闇が噴き上がる黒い半球が覆った。


刃が当たる。


減速し、弾かれる。。


「そこから動かないで!」


前方にいた敵へ向けて手を振り抜く。


「ブラインド!」


闇が霧となって弾ける。


前列が一斉に沈む。


「見えねぇ!」


一気に距離を詰め、闇を纏った拳で一人を沈める。


そのまま振り向きざまに――


「グラビティ!!!」


重力が落ちた。


空気が潰れる。


地面が軋む。


背後の暗殺者たちが一斉に叩きつけられる。


武器が散る。


だが敵の猛追は止まらない。


突風が唸る。

風の魔法。


かまいたちが横薙ぎに走る。


同時に闇の向こうからクナイが雨のように飛んでくる。


クナイは当たらない


風が肩をかすめ、頬を裂く。


爆発符付きのクナイ。


クナイは闇の膜に弾かれ


護符が発熱し爆炎が弾け、衝撃が走る。


「いて!ルークは痛みを感じた。守りきれていなかった。なぜ」


ルークは理解する。


影と重力でも、すべては防げない。


現象は止まらない。[物理的なものには重力の影響を与えれるから防げるが

風や炎などは膜を通すってことなのかと]


それじゃあ

攻めの一手しかないな


影が地を這い、沼のように広がる。


その一本一本に重力が宿る。


黒い手が絡みつき、掴んだ瞬間に圧が走る。


抜け出せない。

足が沈む。


もがくほど締め上げられる。


暗殺者たちの動きが次々と封じられていく。


一人、また一人。


その奥。


距離を取って詠唱している魔法使い。


ルークは指先に小さく重力を練り上げる。


圧縮された黒い球。


弾くように放つ。


――ドン。


空気が破裂し、空間が歪む肩が捩れて魔法使いが倒れ込む。


詠唱が途切れる。


影に捕まった暗殺者たちは、完全に動きを失っていく。


しばらく、静寂。


瓦礫の落ちる音だけが残った。


闇の帳がゆっくり解ける。


リーナが外へ出てくる。


顔色は少し青い。


「……今の部隊」


ルークが振り返る。


「魔法使いを含む編成だった」


一拍。


「月夜のキャラバンの幹部クラスよ」


さらに低く。


「本気で始末しにきてる」


そして――


赤い光。


拘束された暗殺者の胸元が輝いた。


「ルーク!」


爆炎。


夜を裂く衝撃。


煙が空へ立ち上る。


遠くに残る煙。


そして――

続けざまに連鎖する爆発。


夜空へ立ち上る煙。


狼煙だった。


遠くで、それを見つめる影。


ムリソーが静かに言う。


「ただ事ではないな」


「誘い込め」


「罠を張り、仕留める」


構成員たちが一斉に動き出す。


追い込みの包囲網が組まれていく。


月夜のキャラバンは、狩りへ移行した。


闇は、もう逃がさない。

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