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第37話 守ると決めた夜

「……もう来てる」


夜風に溶けるような声だった。


「闇ギルド――月夜のキャラバンが」


ルークの目が、わずかに細くなる。


「戻れって言われた」


「戻らないなら消すって」


喉が詰まる。


それでも続ける。


「それだけじゃない」


「次は……あなたを先に消すって」


遠くで波が砕ける音。


静かな夜が、逆に怖い。


「だから距離を取ったの」


視線を伏せる。


「あなたを巻き込みたくなかった」


「私の過去は、私の問題だから」


ルークは小さく首を傾げて笑った。


「そんなこと言うように見える?」


リーナが顔を上げる。


「リーナ」


「君は守る側に立つって決めたんだろ」


「人を殺さないって決めたんだろ」


「それは過去じゃない」


「今の君だ」


胸が締めつけられる。


「でも……相手は私を育てた組織よ!」


「手加減なんてしない!」


「あなたが死んだら……」


ルークは軽く笑った。


「大丈夫!死なないよ」


「死んだら絶対リーナ怒るじゃん」


少しだけ照れたように続ける。


「僕が絶対、君とこの街を守ってあげるから」


「ね?安心して」


リーナの瞳が揺れる。


ルークの声が静かに、しかし強くなる。


「守りたい人ができたら、強くなる」


「今すごい力がみなぎってるんだ」


「君の背負ってきた過去も」


「これからの覚悟も含めて」


胸の奥が熱くなる。


「……一緒に戦ってくれる?」


「もちろん」


夜が、わずかに震えた。


屋根の上。


黒装束が舞い降りる。


「リーーーナちゃーん」


教官の軽薄な声。


「答えを聞きにきてあげたよー」


三日月の紋章。


月夜のキャラバン。


影が揺れ、さらに三人。


四人。


包囲。


構成員の一人が鼻で笑う。


「彼氏連れて逃げるとかさぁ」


「こいつ生かす価値あります?」


別の構成員が肩をすくめる。


「感情に流されると弱くなる」


「それ、基本だろ?」


教官が愉しげに言う。


「才能の持ち腐れだよ」


「腰抜けになったのかな」


「そんなリーナちゃんは再教育が必要だね」


四人が同時に動く。


刃が交差する。


リーナが応戦する。


だが押される。


「ほら、遅い」


「守るための動きは鈍るんだよ」


掌底。


息が止まる。


刃が振り下ろされ――


「はいはい!そこまで!」


ルークが割って入る。


「なに女の子一人を寄ってたかって狙ってるわけ!」


「正直うざいしダサいし、普通に引くんだけど!」


空気が凍る。


「何ふざけてんだこいつ」一人が呟く


視線が冷える。


「選手交代っと」


すかさず。ルークの後ろからショーテル(曲がり剣)が首を狙う。


完璧な殺しの一撃。


――だが。


刃は、届かない。


黒い揺らぎが首元に薄くまとわりつき、

刃を包み込み、滑らせ、逸らす。


「……なぜ届かない??」


教官の声が掠れる。


「当たってるはずだ!」


「刃が……動かない?」


「何が!起きてるんだ。」


ルークは肩をすくめた。


「闇ってさ、こういう使い方もできるんだよ」


次の瞬間。


足元の影が弾ける。


影が、道になる。


月明かりの濃淡が、通路になる。


一歩。


姿がぶれる。


残像。


一人目の背後。


肘が鳩尾へ突き刺さる。


闇が乗る。


空気が潰れる音。


身体が屋根を転がる。


二人目が突く。


だが影を踏んだ瞬間、ルークはもういない。


真横。


腕を絡め取り、闇が関節を固める。


叩きつける。


瓦が砕ける。


三人目が距離を取ってショーテルを振るう。


弧を描く斬撃。


だがルークの身体は、影に溶けるように沈む。


刃が空を切る。


次の瞬間、背後。


拳が背中に突き刺さる。


闇を纏った衝撃が走る。


空気が潰れたような音。


構成員の身体が前方へ吹き飛び、屋根を転がった。


戦場が、静まる。


残るは教官。


ルークは影の上を歩く。


「闇夜は僕と相性がいいんだよね、ごめんね」


一瞬。


間合いが消える。


拳が鳩尾に叩き込まれる。


重い衝撃。


影が絡みつく。


拘束。


「守るって決めたから殺さない」


教官の意識が落ちる。


四人、沈黙。


ギルドへ連行。


ヤンが腕を鳴らす。


「任せろ。事が終わるまで牢屋にぶち込どいてやる」


四人を引きずりながら振り返る。


「やっと過去との決別ができるんだな」


リーナは照れながら言う。


「うん。」


「守る側になるって決めたから」


「ごめんね。今まで面倒かけて」


デコピン。


「迷惑なんてかけられてねーよ」


優しく、そして力強く。


「無事に帰ってこい」


夜風が吹く。


リーナは前を向く。


もう逃げない。


ルークが隣に立つ。


守ると決めた夜だった。

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