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第27話 水の都と最初の依頼

 水の国トリビエンへ入国し、しばらく街道を歩いたところで視界が一気に開けた。


「……すご」


 思わず足が止まる。


 眼下に広がる巨大な都。


 川が無数に枝分かれし、街の中を縫うように流れている。

 水路の上には橋がかかり、小舟がひっきりなしに行き交っていた。


 遠くからでもわかる。


 ここは水運で成り立つ都市だ。


「王都とは全然違うな……」


 街へ入ってさらに驚く。


 行き交う人々の耳が長い。


 髪は水色や淡い緑、光に透けるような色合い。


「……エルフ?」


 思わず呟いた瞬間、


「おい邪魔だコラ!」


「ぶつかってんじゃねぇぞ!」


 怒号が飛び交う。


「……なんかイメージ違う」


 優雅な森の民の幻想が崩れる。


 腹の音が鳴る。


「とりあえず飯だな」


 街を散策してると一際


 賑わっている食堂【オイスター】って店に決めた。


 昼間から酒盛り。

 取っ組み合いの喧嘩。


「……ここ食堂だよね?」


 軽く引きつつも席につく。


 店員がやってきた。


「見ない顔だね。旅人かい?」


「今日着いたばかりです」


「へぇ、勇気あるね」


 にやりと笑う。


「決まったら叫びな。ここじゃそれが当たり前だよ」


「チンタラしてたら注文、いつまで経っても届かないよ」


 周囲を見ると皆叫んでいる。


「魚の刺身と!魚の揚げ物と!エールください!」


「いいねぇ!」


 豪快に運ばれた料理を一口。


「ウッっま〜〜!!」


 久々の海鮮。


「醤油とわさびがあれば完璧なんだけどなぁ……」


 店を出ると耳に入る。


「また港で魔物だってよ」


「ギルドが動くだろ」


 自然と足が向く。


 水路沿いの石造りの建物。


 剣と錨の紋章。

 

 港の街らしい


 冒険者ギルドだ。


「新顔だよね。発注?それとも受注?」


 受付の少女が声をかけてくる。


「……すいません」


「ギルド自体、初めてで」


「なるほどね」


「じゃあまず登録からってことになるわね」


「話していくからちゃんと聞いておきなさい」


 きびきびと説明が始まる。


 登録を進めながら、つい口に出す。


「リーナさんってエルフなんだよね?」


「はぁ!?」


 机を叩かれた。


「馬鹿言ってんじゃないわよ!!」


「森に隠れてる連中と一緒にしないで!」


「私たちはシーエルフって種族!」


「あんたこそ本当に人族かい?」


「れっきとした人族です!!」


「ふん、まあいいわ」


「私はリーナ。覚えておきなさい」


 冒険者証を渡される。


「無茶すんなよ!」


「死んだら意味ないんだから!」


 口は悪いが、本気で心配している。


「ありがとう」


「べ、別にあんたのためじゃないし!」


 リーナは依頼書をばさっと広げた。


「初心者ならこれくらいね」


【依頼内容】

森の川から降りてくる赤角ウサギの討伐


【概要】

群れで農地へ侵入し作物被害が深刻

数を減らしてほしい


【報酬】

討伐数十体以上から成果報酬加算


「ウサギって可愛くないのか?」


「甘いわよ!」


「速いし突っ込んでくるし群れる!」


「畑を一晩で壊滅させる害獣よ!」


「十体超えたら報酬跳ねるから頑張りなさいよね!」


 じっと睨む。


「一人で行くつもり?」


「うん」


「バカ!」


「群れ相手よ!」


 僕は肩をすくめた。


「なんとかなると思う」


「一人で旅してきたし」


 瞬間――


「調子乗んなバカ!!」


 鋭いツッコミ。


「運がよかっただけかもしれないでしょ!」


「油断した冒険者から死んでくの!」


 しばし睨み合い。


 そして小さく、


「……気をつけなさいよ」


 声が少しだけ柔らかくなる。


 最初の依頼。


 冒険者としての第一歩。


 水の都トリビエンでの物語が、本格的に動き出した。

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