第十三話 闇より来る者
休む暇など、与えられなかった。
森を抜けたと思えば、再び気配。
枝が揺れる。
風が裂ける。
殺意が、背中をなぞる。
「……来てる」
ルークが低く呟く。
次の瞬間、木の幹に短剣が突き刺さった。
黒装束。
顔を覆う布。
――暗殺者。
賞金稼ぎとは明らかに違う動きだった。
「走る!」
二人は駆ける。
追撃は執拗だった。
矢が飛び、刃が掠める。
途中で現れた魔獣さえ、足止めにもならない。
ルークは片手間で斬り伏せながら進む。
必死に、必死に。
やがて視界が開けた。
水音。
澄んだ泉と草原。
「ここなら……」
見通しが利き、背後も警戒しやすい。
テントを設営し、火を起こす。
簡単な食事を作り、エリシアに差し出した。
「少し休もう」
「……ありがとう、ルーク」
彼女はすぐ眠りにつく。
だが完全には気を抜いていない。
浅い呼吸。
緊張した指先。
(限界が近いな……)
ルークは夜空を見上げた。
(数週間前まで日本でデスクワークしてたんだぞ)
(それが今じゃ命懸けの逃亡生活)
疲れているのに、頭だけ妙に冴えている。
(ファンタジーすぎるだろ……)
苦笑する。
だが現実だ。
守るものがある。
(逃げ続けたら詰む)
国境は封鎖。
街も森も捜索。
街道に出れば密告。
(なら……)
「拠点、作るか」
ログインプレゼントの建築キットを思い出す。
(神の恵み、遠慮なく使わせてもらおう)
明日、場所を探そう。
――と、思ったが。
森が、静かすぎた。
(あいつ……まだ近くにいるんだろうな〜)
(引き返したのかもだけど)
(どう考えても、しつこそうなタイプだよな〜)
小さく息を吐く。
(不意打ちさえ喰らわなければ戦えない相手じゃない)
(でも念には念を)
「準備しとこ」
ステータスUIを開く。
現在属性:無属性
「そういや属性まだだったな」
ルーン石を取り出す。
「闇でいくか」
選択。
冷たい感覚が体を走る。
属性:闇
「お、なんかそれっぽい」
センスを確認。
剣士Ⅱ。
「まだⅡか〜」
強化ルーンを使い一気に剣士Ⅴ最大まで引き上げる。
剣士に備わっているステータスが底上げされる。
使える剣技も一気に習得された。
マナ石を砕く。剣技のレベルを上げていく。
光が体へ吸い込まれる。
剣士の誇り Lv1 → Lv5
剣士の威圧 Lv1 → Lv5
体当たり Lv1 → Lv5
諸刃の剣 Lv1 → Lv5
剣士の覚悟 Lv1 → Lv5
混沌の一振りLv1 → Lv5
次々と剣技・技が開放頭の記憶に刻まれていく。
体の感覚が一段階研ぎ澄まされる。
「……これ、だいぶ違うぞ」
剣を振ると、闇の気配が刃に絡みつく。
(よし)
(来られても大丈夫だな)
ルークは森の闇を見据えた。
「さて……どこから来る?」
ここからは――迎え撃つ。エリシアの安らぎを作るために。




