第116話 鍛造と暴発
工房。
熱が違う。
試験場とは別物。
ここは――“作る場所”。
巨大な炉。
白に近い炎。
鉄が溶けている。
音が響く。
ガン。
ガン。
重い。
規則的。
「始めるで」
中央のドワーフが言う。
腕をまくる。
空気が変わる。
職人の顔。
「素材はこっちで選ぶ」
「お前は“流せ”」
ルークを見る。
「魔力をや」
「了解」
鉄が運ばれる。
黒い。
だが黒鋼ではない。
「魔導伝導率の高い合金や」
「魔力を流すための器やな」
炉へ。
赤くなる。
さらに。
白へ。
「今や」
取り出す。
台へ。
叩く。
ガンッ!!
火花が散る。
「流せ!!」
ルークが手をかざす。
魔力を流す。
鉄が反応する。
“震える”。
「……生きてるみたいだな」
「生かすんや」
ドワーフが叩く。
ガン!!
形が変わる。
長く。
直線的に。
「銃身は細くしすぎるな」
「耐えきれん」
別のドワーフが口を挟む。
「反動逃がす構造入れろ」
「分かっとる」
議論が飛び交う。
完全に本気。
ミカサが小さく笑う。
「ええ流れや」
リーナは見ていた。
ルーク。
魔力の流れ。
(……強い)
でも。
(荒い)
一定じゃない。
波がある。
「集中しろ」
ドワーフが言う。
「流れがブレとる」
「分かってる」
ルークが眉を寄せる。
流す。
だが。
一瞬。
跳ねる。
バチッ。
火花が散る。
「止めろ!!」
ドワーフが叫ぶ。
ルークが即座に魔力を引く。
沈黙。
煙。
鉄は――歪んでいた。
「……今のは」
「過剰や」
ドワーフが睨む。
「流しすぎや」
ルークは舌打ちする。
「加減が難しいな」
「加減ちゃう」
低い声。
「制御や」
一歩近づく。
「お前のは“力任せ”や」
核心。
「そのままやと――」
鉄を指で叩く。
ヒビ。
「武器が先に壊れる」
リーナの目が揺れる。
「……それやと意味ないやろ」
静かな声。
全員が見る。
リーナだった。
「守るための力なのに」
一歩。
ルークに近づく。
「暴れたらダメ」
真っ直ぐ。
ルークの目を見る。
沈黙。
「……分かってる」
短い返答。
だが。
目は少しだけ変わった。
ドワーフが鼻で笑う。
「ええやん」
「ようやく武器使いの顔になってきたな」
ハンマーを持ち直す。
「もう一回や」
「今度は“流すな”」
「通せ」
「……違いは?」
「聞くな」
「感じろ」
雑。
だが核心。
ルークは息を吐く。
目を閉じる。
魔力を掴む。
今度は。
押し込まない。
“通す”。
流れる。
滑る。
鉄の中を。
スッ――
「……それや」
ドワーフの声。
叩く。
ガンッ!!
形が整う。
歪みが消える。
魔力と鉄が――噛み合う。
リーナが小さく息を呑む。
(……変わった)
さっきと違う。
荒くない。
静か。
だが深い。
ミカサが笑う。
「完成、見えてきたな」
ドワーフも笑う。
「まだや」
「ここからが“本番”や」
炉の火がさらに強くなる。
武器はまだ途中。
だが。
確実に――
“完成へ向かっていた”。




