第115話 撃ち手の証明
炉の奥。
さらに熱い。
音が違う。
重い。
深い。
金属が鳴く。
「こっちや」
中央のドワーフが歩く。
ルークたちは無言でついていく。
広い空間。
壁は分厚い。
床は鉄。
傷だらけ。
「試験場や」
短い説明。
リーナが息を吐く。
「……やっぱりそうなるよね」
ルークは軽く笑う。
「分かりやすくていい」
ミカサは腕を組む。
「ここからが“値段決め”や」
ドワーフが指さす。
奥。
黒い塊。
鈍い光。
「黒鋼や。普通の武器じゃ傷も入らん」
ニヤリと笑う。
「壊せ」
試験。
露骨。
ルークは一歩前へ出る。
手を上げる。
魔力が集まる。
形を変える。
魔力が細く伸びる。
握る。
――ハンドガン リボルバー銃の形。
空気が変わる。
「なんやその武器」
ドワーフの目が細くなる。
ルークは構える。
撃つ。
パンッ。
ズドンッ!!
黒鋼が抉れる。
だが――浅い。
「……ほほーそういう使い方するってことか」
再構築。
圧縮。
回転。
重ねる。
撃つ。
ドンッ!!
今度は貫通。
粉塵。
静寂。
ドワーフがゆっくり歩く。
穴に触れる。
指でなぞる。
「……威力はええな」
一拍。
「やがな」
振り返る。
「それは武器やない」
空気が変わる。
ルークの目が細くなる。
「どういう意味?」
「魔力を形にしてるだけや。そのまま叩きつけとるだけや」
ドワーフが鼻で笑う。
「無駄が多い。ブレる。続かん」
核心。
「武器いうのはな」
一歩、近づく。
「力を“制御するためのもん”や」
沈黙。
図星。
ルークは何も言わない。
ミカサが口を開く。
「せやから価値があるんやろ」
一瞬。
ドワーフの視線が動く。
「未完成やからこそ、完成させる余地がある」
ニヤリ。
「違うか?」
ドワーフが笑う。
「おもろいこと言うやないか」
再びルークを見る。
「あとお前、その魔力形成で作った武器合ってないな」
「やっぱり分かる?」
「当たり前や」
即答。
「使い手が武器に合わせとる」
「本来は逆や」
一歩。
「お前専用に作ったる」
空気が震える。
リーナが目を見開く。
ミカサは口角を上げる。
「ただし」
ドワーフの目が光る。
「安くはないで」
「ええで」
ミカサが即答する。
「その代わり――条件がある」
「ほう?」
「2つや」
指を立てる。
「1つ目」
ルークを見る。
「ルークの武器は“魔道具化”する」
ドワーフの眉が動く。
「魔力流したら起動するタイプや」
「ルークは闇魔法と風魔法の使い手やそれを活かしたい」
「……続けろ」
「実体の武器に魔力を流す」
「安定性と威力、両方取る」
「ハイブリッドや」
ドワーフの口角が上がる。
「面白い」
「2つ目」
空気が変わる。
「量産型もつくってほしい」
数人の職人が反応する。
「この“銃”っちゅう構造」
ミカサがルークの手元を指す。
「もちろん、構造はあんたらだけに教える」
ルークが軽く頷く。
「いいよ」
「それを――」
一歩踏み込む。
「魔力なしでも使える形に落とす」
ざわつく。
「材料も工程も軽くする」
「量産する」
ドワーフの目が細くなる。
「誰が使う」
ミカサは即答する。
「兵士や」
一拍。
「ブロックンの兵」
「辺境の守備兵」
「傭兵」
「冒険者」
「“数が必要なとこ全部”や」
沈黙。
熱だけが動く。
「……なるほどな」
ドワーフが呟く。
「ワシらは“ええもん”作る」
「お前らは“売る”」
「そういうことか」
「せや」
ミカサが笑う。
「ええもん止まりで終わるか」
「世界に流すか」
「選べ」
長い沈黙。
そして。
ドワーフが笑った。
「……乗った」
重い声。
完全に決まった。
「ルーク」
呼ばれる。
「お前の銃は、ワシが作る」
「最高の形でな」
ルークが笑う。
「楽しみだね」
その横で。
リーナは静かに見ていた。
さっきの一撃。
あの力。
(……まだ、荒い)
強い。
でも。
(制御しきれてない)
ほんのわずかな違和感。
だがそれは確実に――
“次の問題”だった。




