第111話 帰る場所と、次の旅路
数日後。
山岳要塞都市ブロックン。
復興は軌道に乗っていた。
瓦礫は片付けられ。
仮設ではあるが、人々の生活は戻り始めている。
そして――
ルークたちは出発の準備をしていた。
「……もう行くんだね」
街の門。
見送りに来た兵士が言う。
「長くはいられないからな」
ルークは静かに答えた。
「やることがある」
兵士が頷く。
「また来てくれ」
「今度は、平和な時にな」
ルークは小さく笑った。
「そうなるように動くよ」
門が開く。
外へ。
振り返る。
街はまだ傷ついている。
だが――
確かに、生きている。
ルークは一度だけ目を細めた。
「……行こう」
歩き出す。
道中。
山を越え。
森を抜け。
数日。
大きな水の気配が近づく。
そして――
視界が開けた。
「着いたな」
水の都トリビエン。
運河が街を巡り。
水面が光を反射する。
穏やかな空気。
戦いとは無縁のような景色。
リーナが小さく息を吐く。
「……戻ってきた」
どこか安心した声だった。
ルークはそれを横目で見る。
(少しは休ませないとな)
心の中でそう思う。
城。
謁見の間。
王の前に立つ。
ルーク。
リーナ。
ミカサ。
「……話は聞いた」
王が静かに言う。
「ブロックンでの戦い」
「厄災の顕現」
空気が引き締まる。
「そして」
「完全ではなかった、という点もな」
ルークが頷く。
「はい」
「不完全でした」
「ですが――」
一拍。
「存在しています」
「確実に」
王の目が細くなる。
「つまり」
「いずれ、完全な形で現れる可能性があると」
「その通りです」
沈黙。
重い空気。
だが――
ルークは続けた。
「だから、動きます」
王が視線を向ける。
「……どう動く」
「厄災の情報を集める」
「封印の場所」
「教団の動き」
「全部です」
迷いはない。
「旅に出ます」
その言葉に。
場の空気が変わる。
王はしばらく黙っていた。
そして。
ゆっくりと頷く。
「……任せる」
「今の話を聞いて」
「止める理由はない」
静かな信頼だった。
「だが」
「無理はするな」
ルークは少しだけ笑う。
「善処します」
リーナが横で小さくため息をついた。
城を出る。
外の空気。
水の匂い。
戦場とは違う。
穏やかな世界。
「……で」
ミカサが腕を組む。
「次はどうするんや」
ルークは少し考える。
そして言う。
「その前に」
「寄るところがある」
孤児院。
街の外れ。
静かな場所。
子どもたちの声が聞こえる。
リーナが少しだけ表情を緩める。
「……久しぶり」
ルークはその様子を見る。
(やっぱりここが一番落ち着くか)
「運営も見ないとな」
ルークが言う。
ミカサが頷く。
「せやな」
「金だけあっても回らんこと多いしな」
商人の目。
現実的な視点。
「ちゃんと続く形にせな意味ない」
ルークは頷く。
「頼む」
「任しとき」
風が吹く。
穏やかな日常。
だが。
それは一時のものだと、全員が理解していた。
厄災は終わっていない。
教団も動いている。
そして――
まだ見えていない何かもある。
それでも。
今は。
少しだけ。
休む時間だった。
ルークは空を見上げる。
青い空。
静かな世界。




