第110話 いつもの時間と、少しの違和感
朝。
ブロックンの街。
復興は順調に進んでいた。
瓦礫は片付けられ。
仮設の建物が並び始めている。
人の声。
金槌の音。
街は、確実に前へ進んでいた。
「ほら、ちゃんと歩けてるじゃん」
リーナが横で言う。
「昨日よりはね」
ルークは軽く体を動かす。
まだ完全ではない。
だが――
確実に戻ってきている。
「無理しないでよ」
「してないよ」
「ほんとに?」
「ほんとに」
軽く笑う。
リーナがため息をつく。
「信用できない」
「ひどいな」
やり取りはいつも通り。
だが。
距離が少しだけ近い。
「おー、元気そうやな」
ミカサが手を振る。
露店の前。
すでに商売を始めていた。
「仕事か」
「そらそうや」
「今が稼ぎ時やしな」
机の上には。
魔石や小さな部品が並んでいる。
ルークが一つ手に取る。
「壊れた装備の修理と改良や」
ミカサがニヤリと笑う。
「街も困っとる」
「うちは儲かる」
「Win-Winやな」
ミカサがふと二人を見る。
視線が止まる。
数秒。
じっと観察する。
そして――
ニヤリと笑った。
「……お二人さん」
リーナが一瞬で警戒する。
「なによ」
ミカサは肩をすくめる。
「なんや空気違うな思ってな」
少し顔を近づける。
「ええことでもあったんか?」
完全に“察している顔”だった。
リーナが固まる。
「なっ……!」
一瞬で顔が赤くなる。
「別に何もない!」
即否定。
ルークは首を傾げる。
「そうか?」
「そうよ!!」
リーナが強めに言う。
ミカサが吹き出す。
「はいはい」
「そういうことにしといたるわ」
ニヤニヤが止まらない。
「で」
ミカサがルークを見る。
「体どうなん?」
「すぐにでも戦えるよ」
即答。
ミカサが苦笑する。
「ほんまかいな」
リーナが横から言う。
「止めても無駄だから」
「もう諦めてる」
「ひどくない?」
「事実」
リーナとミカサが同時に言う。
ルークは苦笑した。
その時。
ルークが小さく言った。
「ミカサ」
「少し頼みたいことがある」
「なんや」
ルークは街の方を見る。
「復興の資材」
「足りてないところに回してほしい」
ミカサがニヤリと笑う。
「ほう」
「金は?」
「出す」
即答。
リーナが驚く。
「え?」
ルークは淡々と言う。
「前の件で得た分もある」
「使うべきところで使うだけだよ」
ミカサが口笛を吹く。
「太っ腹やなぁ」
「ええで」
「うちがちゃんと回したる」
そして少し声を落とす。
「ついでに名前も残しといたるわ」
「いらないよ」
「いるんやって」
ミカサが笑う。
「誰に助けられたか」
「人はちゃんと覚えとく」
そしてニヤリ。
「あと、うちの商会の宣伝もな」
リーナがため息をつく。
「結局それじゃない」
「商人やで?」
数日後。
街の一角。
資材が運び込まれていた。
木材。
石材。
補修用の道具。
そして。
立て札。
――復興支援
ルーク / ミカサ商会
「……ほんとにやったのか」
ルークが呟く。
ミカサが笑う。
「宣伝や宣伝」
「感謝もされる」
「一石二鳥や」
少し離れた場所。
子どもが笑う。
人が動く。
街が、少しずつ戻っていく。
ルークはその光景を見ていた。
そして。
小さく息を吐く。
「……よかった」
リーナが横で言う。
「うん」
「守ったんだよ」
ルークは頷く。
その時。
カン……
小さく鐘が鳴る。
誰も気にしない音。
だが。
確実に闇は動いている。別の国でも




