光になる覚悟
悠記「俺が...この惑星の戦争を止める鍵になる......?
ちょっと思ってた以上にスケールがでかくて
ピンとこないんだけど、本当に俺がそんな大役を担えるの?
御歌ちゃんやアリュゼルンがいなかったら今ここに立ってるのも奇跡ぐらいの存在だよ?」
アリュゼルン「私も最初からそう思っていたわけではありません。ですが、悠記さんの“扉を使ってここへ来た”という話、そこがどうも引っかかっていました。」
悠記「あぁ、海賊みたいな女の人が出したやつ。何か知ってるの...?」
アリュゼルン「悠記さん、さっき私が話した冒険神レルトネヴダ様を覚えていますか?」
悠記「あぁうん、たしか転移能力を使えるっていう?」
アリュゼルン「そうです。私も姿は見たことがないとお伝えしましたが、聞いた話ではレルトネヴダ様はどうやら“女神”らしいのです。」
悠記「........!
なるほど。アリュゼルンの言いたいことがわかったよ。つまり俺をここに連れてきたのがその冒険神レルトネヴダかもしれないってことだな。」
アリュゼルン「はい、その通りです。
レルトネヴダ様はこの世界で宇宙を自在に移動できる唯一の存在だと聞いています。
悠記さんの話が本当なら彼女の転移能力以外では説明がつかないと思います。」
悠記「ちょ、ちょ、ちょっと待って!
アリュゼルンの推測、理解はできたんだけど...そのレルトネヴダって神様なんだよね...?」
アリュゼルン「はい。」
悠記「本当にいるの...?
いや、俺の世界にも神様はいるけど、みんな実際に会ったことはないっていうか...神様ってオバケみたいなもんじゃん?
俺がここに来る前に会った女の人と老人も見た目は普通の人だったし、いきなり冒険の神とか言われても素直に受け入れられないっていうか...」
アリュゼルン「....?どういうことですか?
悠記さんの世界では神様はそこまで崇拝されていないのですか?」
悠記「いや、そう言われると心外っていうか崇拝はしてるんだけどね。
実物を見たことがないから...」
アリュゼルン「みんな神様がいないという認識なのに崇拝しているということですか!?
悠記さんの国は変わってますねぇ…」
悠記「変わってるのか…?神様ってそういうものだと思ってたよ。
え、てことはアリュゼルンは神様を見たことがあるってこと!?」
アリュゼルン「はい、冒険神レルトネヴダ様には会ったことはありませんが、私は“愛神ロヴェリシア様”の信徒ですから、ロヴェリシア様のことは見たことがあります。
ここイムロヴィンは愛の神ロヴェリシア様を崇拝する愛の国ですから。」
悠記「んおぉ...」
アリュゼルン「悠記さん?大丈夫ですか?体調が優れないのですか?」
悠記「は!いやいや、違うんだ。ちょっと情報処理に時間がかかっただけだよ。
冒険の神レルトネヴダに愛の神ロヴェリシア....
そしてイムロヴィンは愛の神を崇拝する国....
アリュゼルンは愛の神の信徒....」
アリュゼルンから伝えられた話は
常軌を逸していて、納得するには少し時間がかかりそうだったが、この惑星における神様は実態もあるし、人々からもはっきり認識されているということなのか。
そしてどういうわけかこの惑星は今、世界規模の大きな戦争の最中にある。
その戦争を止めるために神様が動いているということなのか。
悠記「....うん、そうだよな。この惑星のことはアリュゼルンがよく知ってるはずだもんな。
俺の惑星ではあり得ない超常的な世界観だけど、今はアリュゼルンの話を前提に考えてみるしかなさそうだね。
じゃあさ、俺の前に現れたあの女の人が冒険神レルトネヴダだとして、その隣にいた老人も神様の可能性はあるの?」
アリュゼルン「あると思います。
ヴァリオスにはたくさんの神様がいますから。
イムロヴィンが愛神ロヴェリシア様を崇めているように、世界中の国々がそれぞれ別々の神様を崇拝しているんです。
例えばテックテックキルスは技術の国、技術神様を崇めている国ということです。
つまりテックテックキルスの民であるオイストさんは技術神様の信徒であると言えます。」
悠記「はぇ〜!そうだったんだ!
あの国にも神様がいるんだ!」
アリュゼルン「はい、そして国を治めているのは神様自身かもしくは神様から力を授けられた“申し子”と呼ばれる存在です。
このイムロヴィンで言えば、愛神ロヴェリシア様から力を授かった愛の申し子、“セーラ・ロヴェリシア様”という方が統治しています。
悠記さんが見たその老人は申し子の可能性もありますね。」
悠記「申し子ねぇ...神様から力を授けられたら何ができるの?」
アリュゼルン「私はセーラ様のことしかよく知りませんが、申し子は神様の力が使えるようになるのでとても強いです。
セーラ様はイムロヴィンが攻められた時も私たち民を守るため尽力してくださったみたいですが、今はどうなったかわかりません...。
でもおそらくイムロヴィンは敵勢力に制圧されたと考えるのが妥当ですので、少なくともセーラ様も拘束はされていると思います。」
悠記「侵攻を止められなかったってこと....?」
アリュゼルン「イムロヴィンに侵攻してきたのも各国を治める申し子たちが率いた大軍勢でしたので....」
悠記「多勢に無勢だったってわけか...」
アリュゼルン「当時イムロヴィンと同時に隣国である“慈善の国チャーリトィー”も攻め込まれたそうで、チャーリトィーの戦士の方々も一緒になって戦ってくれたのですが、おそらくチャーリトィーも敵勢力の手に落ちたと思われます。」
悠記「その慈善の国もイムロヴィンの中心都市も具体的にどうなってるかはわからないってこと?」
アリュゼルン「はい、私はイムロヴィンが侵攻されてからすぐに避難しましたので、中枢や周辺諸国の状況についてはほとんど知りません。
この村も私の避難先の一つだったんです。」
悠記「えっ........」
アリュゼルン「私も考えたくはないですが、イムロヴィンの末端の村がこんな状況だったら、もう中枢は何もかも無事なんてこと...あり得ないじゃないですか...!」
悠記「アリュゼルン...」
俺だってここに来るまで何度も危険な目にあってきた。
今自分が生きているのは紛れもない奇跡だってこともわかってたつもりだ。
でもやっぱり俺は心のどこかでこの世界をナメていたのかもしれない。
御歌ちゃんのTOの座を狙えるレベルのこのスペシャルな聖地巡礼に、ずっと心が踊りっぱなしだったのは事実だ。
ここに来れて本当によかったとも思っている。
しかし、アリュゼルンの涙を見て俺は己の選択の重さを痛感した。
彼女の涙には部外者の俺が推し量るには烏滸がましいであろう様々な想いと凄絶な記憶が入り混じっているのだろう。
彼女は突如巻き起こった理不尽な戦争で故郷を失い、独りぼっちになった。
正直、俺がこの惑星を救う鍵になるというのは未だ信じ難い話ではある。
だがそれ以前に、
俺には覚悟があるのだろうか
この惑星の運命に首を突っ込む覚悟が。
悠記「アリュゼルン...」
アリュゼルン「すみません...こんなはずでは...」
悠記「正直、まだ頭の中が整理しきれてなくてさ...まだまだこの世界について聞きたいこともいっぱいある中、これ以上耳慣れない言葉を聞くと、たぶん頭がパンクしちゃうから無理やり納得してる状態だ。
自分が思ってた以上にヤバいところに来てるってこともアリュゼルンの話を聞いて理解した。
そして、アリュゼルンが悲惨な境遇の末に俺と出会ってくれたことも。
会ったことないけど俺はきっとセーラ様みたいに強くない。
殴り合いの喧嘩だって人生で一度もしたことないのに、急に異星で勃発中の戦争を止めるなんてさすがに無理があるし、絶対戦力にならないと思う。
でも一緒にいてもいいかな...?」
アリュゼルン「......!」
悠記「アリュゼルンも数ヶ月前までは幸せに暮らしてたんだよね?
じゃあアリュゼルンがもう一度幸せになれるまで、君のそばにいさせてほしい。」
アリュゼルン「悠記さん....
ありがとうございます....!」
勢いで言ってしまったが、よくよく考えたらこれはかなり恥ずかしいな。
地球で普通に生きてたら絶対に言うことのないセリフだもんな。
内心“気持ち悪い”とか思われてたらどうしよう。あー恥ずかし恥ずかし。
悠記「あ、俺アイドルヲタクだからさ!可愛い女の子が頑張ってる姿に弱いんだよねっ!
じ、じゃあさっそく冒険神様でも探しにいく??」
アリュゼルン「ぐすん...そうですね...!
悠記さんにヴァリオスが誇る偉大な神様の御姿を早く見てもらいたいですし...!」
よかった、アリュゼルンに笑顔が戻った。
アリュゼルンは暗闇の中をずっと彷徨っていたのだろう。
何が起きているかも、どこを目指せばいいのかもわからないまま、ずっと光を探していたのだと思う。
で、どういうわけかその光が俺みたいなのだが、俺はアリュゼルンの期待に応えられるだろうか。
ヴァリオスの現状も俺がここに来た意味も詳しいことはわからないままだ。
そして、これから俺がヴァリオスとどう関わっていけばいいのかというのも、今のままでは答えが出ない。
でも、俺がいることでアリュゼルンの心に蔓延る絶望を少しでも切り開けるなら、少しでもアリュゼルンの光になれるなら、アリュゼルンには前を向いていてほしいと思う。
俺にとってアポノと御歌ちゃんがそうだったように。
俺もアリュゼルンの希望になりたいと、今は心の底からそう思う。
あ、話に夢中で気づかなかったけど、そういえば御歌ちゃんの話にもいろんな国が出てきてたな。
海の中にある国の話とかよくしてた記憶がある。
あとは何だ。火の国とか風の国とかも言ってたな。あ、じゃあアリュゼルンの話を基に考えると火の神とか風の神とかもいるってことになるな。
今の話に出てきたの冒険の神とか愛の神とか慈善の神とか渋そうなやつばっかりだったけど、ちゃんとそういうファンタジーっぽい神もいるんだな。
いや、待てよ。そんなことより御歌ちゃんの話に“愛の力を使う人”って出てきてたような....
当時は意味わからなくて深く考えなかったけど、これってたぶん“申し子”のことじゃないか。
じゃあ、御歌ちゃんはセーラ様と会ったことがあるのか....?
アリュゼルン「悠記さん?どうかしましたか?」
悠記「あ、いや、今のアリュゼルンの話、思い返してみたら御歌ちゃんの話と一致する部分がいっぱいあったからさ。」
アリュゼルン「そうなんですね。これで神様のことも信じてもらえそうですか?」
悠記「まぁね。
じゃなくて!そんなことより御歌ちゃん、たぶんセーラ様と会ってるよ。」
アリュゼルン「え!本当ですか!?
それなら私も おんかさん とすれ違うくらいしているかもしれませんね!
あ、でもセーラ様は他国との交流も積極的にされていましたから、そこでのご縁という可能性もありますね。」
悠記「今は無理かもしれないけど、いつか必ずイムロヴィンの中枢に行こう!
御歌ちゃんも会ったなら俺も尚更セーラ様に会ってみたくなったよ!」
アリュゼルン「はい!なんとか方法を探しましょう!」
悠記「でさ、これからなんだけど....どうする?」
アリュゼルン「そこが問題ですね....
先ほどの話で中枢を目指すのが危険だということは理解してもらえたと思います。」
悠記「確かにそうだな....
なぁ、アリュゼルン。生き残ってるイムロヴィンの民を探すってのはどうかな?
中枢は無理でももうちょっと中になら入れる気がする。
イムロヴィンの端っこにあるこの村からは少なくとも敵は撤収してるみたいだしさ。
この近くにまだ生存者が潜伏してる可能性もあるし。
今必要なのは情報だと思う。
中枢や近隣の国の状況なんかもわかるかもしれない。
だからどうかな?」
アリュゼルン「....そうですね。確かにこのままでは埒があかないのも事実です。
行きましょう。さらに中へ。」
悠記「よし!そうと決まれば出発だ!」
アリュゼルン「お待ちください悠記さん。」
そう言うとアリュゼルンは俺の前に立ってそっと目を閉じ、胸の前で両手の掌底を合わせ指を曲げる謎のポーズをとった。
アリュゼルン「私はアリュゼルン。愛の信徒アリュゼルン・ロヴェリシア。
愛の神の名の下にこれからも歩んでいくことを誓います。
されば私たちの行先を偉大なる愛で照らしてください。
闇でもがくか弱き私たちに、どうか愛の加護を。」
お祈りか何かだろうか。それにしても綺麗だ。
思わず口を半開きにしたまま見入ってしまった。
アリュゼルン「さあ、共に行きましょう。悠記さん。」
俺たちはイムロヴィンの中へと進んでいくのだった。
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時を同じくして、技術の国テックテックキルスの端にある建物にて...
「どうだオイスト、何か変わったことはないか?」
オイスト「大丈夫ですよパーシモン。この辺りは至って平和です。
それよりどうしたんですか?」
パーシモン「そうか。ならいいんだが、ちょっと確認したいことがあってな。
キミシカータ付近の森で見慣れない袋のようなものを拾ったんだ。これなんだが。」
オイスト「........!
ほぉ〜これは不思議な見た目ですね。」
パーシモン「そうだろう?少なくともうちのものではないのは確かだ。
そしてこの中にいくつか道具のようなものが入っていてな。
私が気になったのはこれだ。中にさらに小さな入れ物のようなものが入っていたんだが、この中にこういうカードのようなものが入っていたんだ。
見たことない文字と何者かの顔が描かれている。」
オイスト「(悠記さん......!)」
パーシモン「カードに書かれたこの謎の言語を調べてみたんだが、どうやら“セルア”という惑星の一部地域で使われているものだということがわかった。」
オイスト「なるほど、異星からですか。
これは厄介ですね。」
パーシモン「まったくだ。まだ現在の居場所も目的もわかっていない。
くれぐれも気をつけてくれ。」
オイスト「わかりました。報告感謝します。」
パーシモン「それともう一つ。先日領内で別の侵入者も確認された。こちらに関しては既に排除済みだから安心してくれ。」
オイスト「そうですか。それはよかったです。」
パーシモン「ただ紋章を見るに“空間の国ノスドノムディ”の者たちであることがわかった。」
オイスト「ノスドノムディですか....
それは物騒ですね....」
パーシモン「あぁ、最初に話した件と合わせて十分注意してくれ。」
最後まで読んでくれてありがとうございました!
オイスト視点で出てくる「キミシカータ」というのは町の名前です。覚えなくていいです。
パーシモンもそんなに出てこないと思います。
あと筆者は技術の国に数秒でテックテックキルスと名付けたのを後悔しています。
今更ですけど書くたびに「あ、ださ」ってなってます。




