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中央湖地域の【鬼導 星二】……異世界転生なんざ、くそったれ!  作者: 楠本恵士
最終章・大いなる力と輝く財宝──レザリムスの危機
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八・異世界転生なんざ、くそったれ!②

 食事をしている星二に、ベレイが訊ねる。

「本当に、おまえたちどうしてこの島に来たんだキュン」

「ルメス姫の体に現れた地図を繋げたら、この島の地図になった」

「なにぃ!?」


 リックが紐で縫い合わせた、沼ドラゴンの皮を隣のテーブルの上に広げる。

 複雑な表情で眺めている、聖騎士団たちに星二が言った。

「大いなる力と、輝く財宝はこの島にある」

「まさか、ルググ聖騎士団の本拠地にあったとはキュン」


  ◇◇◇◇◇◇


 その時──雲ひとつ無い空から凄まじい落雷の音が轟き、星二たちがいる店が地震のように揺れた。

 直後に、首から下を鎧で包んだ一人の大男──先端が曲線の大剣を背負った、エ・ジールが店に飛び込んできて言った。

「大変です師団長、山の東側斜面に落雷があって崩れた土砂の下から、古代遺跡の壁面みたいなモノが! おわっ? 鬼導 星二?」

 先端が曲線になった大剣を、構えたエ・ジールを制するベレイ師団長。

「剣を収めろエ・ジール……島の中では争い事は禁止だキュン、落雷で土砂が崩れたのはこの辺りだなキュン」

 ベレイは、地図のバツ印が付けられた場所を指で示す。


  ◇◇◇◇◇◇


 急に椅子から立ち上がった、ルメス姫の両目の色が変わり。

 何かに憑かれたような口調で言った。

「その場所に、この娘の肉体を連れてくるのだ……さすれば我は復活する……おまえたちの求めるモノが手に入る」


 言い終わったルメス姫の目の色が元にもどり、ルメス姫は不思議そうな顔でキョロキョロする。

「わたくしの体にいったい、何が起こっているのですか? 今、意識が飛びました」

 ベレイが言った。

「とにかく、落雷があった場所に行くしかないなキュン……エ・ジール、おまえが案内して連れていってくれ、我々も鎧を着込んで後を追うキュン」


  ◇◇◇◇◇◇


 落雷があった山の斜面に向かう途中に、(ほこ)が低い石の円台の上に刺さった場所があった。

 星二が、エ・ジールに訊ねる。

「なんだ? これは?」

「島の名所の一つだ、この天から降ってきて。突き刺さった鉾を引き抜けた者は鉾を聖騎士団の店に持っていけば、聖騎士団オリジナルの賞品が出る……今まで、多くの観光客が挑戦した」


  ◇◇◇◇◇◇


 リックが小声で。

「偶然に、円台の場所に刺さるように落ちてきたので?」の質問に、エ・ジールは聞こえないフリをした。

 鉾の柄を握り締めて、引っ張り上げる星二。

「こんな風に引っ張るのか……あっ、抜けた! なんだ、この鉾? 刃に丸い穴が空いている?」

 星二が引き抜いた鉾を、奪い取ったエ・ジールは、無言で鉾先が抜けた穴に鉾を突き刺す。

 抜けた穴の中から、カチッという音が聞こえた。

 呟く、エ・ジール。

「抜くなよ……ロックが浅かったか、抜けないのが観光の売りなんだから」


  ◇◇◇◇◇◇


 一行は歌うと願いが叶う絶景の絶唱岬や、海賊と人魚の伝説が残る洞窟を見学した後──落雷で土砂が崩れた山の斜面に到着した。

 斜面には古代文字が彫られた岩壁と、上部に戦艦の艦首の一部のようなモノが突き出しているのが見えた。

 土が付着した艦首を見上げる星二が言った。

「なんだありゃ? 土の中から、戦艦の先みたいなのが突き出ていやがる? 木みたいのも生えているな」

 エ・ジールが言った。

「突き出た岩に、土砂が堆積しているだけだと思っていたが……もしかして、これが〝大いなる力〟?」


  ◇◇◇◇◇◇


 星二たちが斜面を見上げていると、鎧姿の聖騎士団たちが追いついてやって来た。

 ベレイが同じように見上げて呟く。

「なんだアレは? 船の先端かキュン」

 壁面に近づいたネルが言った。

「ベレイ、ここに人型みたいな凹みがあるよ……あたいの体型じゃムリだね、こんなに腰がくびれて細い女がいたら、見てみたいもんだ」


  ◇◇◇◇◇◇


 目の色が変色したルメス姫が、凹みに向かって進む。

「この娘の肉体をカギとして、我を復活させよ……大いなる力と、輝く財宝は欲する者に与える」

 両手と両足を少し開いたポーズで、何かに憑かれたようなルメス姫は、凹みに背中を密着させて自分の体を、後ろ向きで押し込める。

 

 凹みから粘液のような物質が染み出てきて、ルメス姫の体を包み込む。

 恐怖に悲鳴を発するルメス姫。

「星二さま! 助けてください! うぐっっ」

 粘液に包まれ溶かされ、凹みの穴に吸収されて消えるルメス姫。

 地響きが起こり、壁面が左右に開いていく──中から黄金色に輝く【宇宙戦艦空母】が出現した。


  ◇◇◇◇◇◇


 空中に浮かび推進をはじめた、宇宙戦艦空母から粘液の触手のようなモノが、次々と聖騎士団たちの方に伸びてくる。

 聖騎士団たちの体に絡みつく触手。

「うわっ!?」

「ひっ!」

「なんだこりゃキュン」

 輝く宇宙戦艦空母から聞こえてきた声。

《大いなる力と輝く財宝を欲する者、我と一体となれ》

 聖騎士団たちは、戦艦空母の前部にある、戦闘機発着口から艦内に引きずり込まれた。


  ◇◇◇◇◇◇


「星二さま、ここは危険です一旦逃げましょう」

 リックの言葉に従って、現場からジャジャに乗って後退する星二とリック。

 ガルダン島は、突如出現した、黄金の宇宙戦艦空母にパニックになる。


 東方地域から行商で島を訪れていた、ピンク色の肌に青いトラ模様が浮かぶ男が、空に浮かぶ金色の船を見て呟いた。

「どうして、この世界に『戦艦空母・ナガト』と同型の、宇宙戦艦空母がいるだがや?」


  ◇◇◇◇◇◇


 ゆっくりと中央地域に、向かって空中を進む【宇宙戦艦空母・ナガト・デスティニー】の三連主砲が動き、発射されたビーム砲が無人島を消滅させる。

 橋の入り口に立って眺めていた星二は。

 背負っている神の木刀を引き抜いて言った。

「あんな、化け物……中央地域に行かせちゃいけねぇ」

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