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中央湖地域の【鬼導 星二】……異世界転生なんざ、くそったれ!  作者: 楠本恵士
最終章・大いなる力と輝く財宝──レザリムスの危機
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七・異世界転生なんざ、くそったれ!①

【ルググ聖騎士団・本拠地島・中央湖】〔ガルダン島〕──アジトで聖騎士団たちは会話をしていた。

「〝大いなる力〟と〝輝く財宝〟っては一体なんなんだ?」

「さぁな、中央地域の昆虫騎士『ピクトグ・ラム』が、師団長に探し出すように指示をして──オレたちは指示された通りに動いているだけだから」

「ベレイ師団長は、大いなる力と輝く財宝を見つけたら……素直に昆虫騎士に渡すのか?」

「師団長が考えているコトは、よくわからん」


 ザコ聖騎士たちが、そんな会話をしていると。腰にエプロンを巻いた、副師団長のネルが来て言った。

「あんたたち、なにサボっているんだい……塩が足らないから、食糧倉庫に行って塩を持ってきておくれ」

「姐さんは、いつも塩が足らない、塩が足らないって言っていますな」


 ネルは手にしている、料理用の木製しゃもじを、軽く振って見せる。

「ムダ口叩いていると、これで親にもぶたれたコトがない、その頬をぶつよ! 一方的に殴られる怖さを教えてやろうか……さっさと塩袋持ってきな」

「はいはい、おー怖い。あまりにも怖くて手の震えが止まらなくなる、ブルプルプル」

「さっさと行け!」

「聖騎士団、食糧倉庫に行っきまーす」

 ザコ聖騎士が、少し笑いながら駆けていくと、ネルはタメ息を漏らした。

「まったく、最近の若い聖騎士団の連中ときたら……あれが若さか」


 ◆◆◆◆◆◆


【月の第二城】──鬼導 星二は、中庭で神木の木刀を振っていた。

 額に汗を浮かべながら、実戦さながらの構えと太刀筋で木刀を振っている星二のところに。

 筒水筒に入った、冷やした飲み物を持ったルメス姫がやって来て言った。

「ずいぶんと、ご熱心ですね……少し休憩なさっては」

 ルメス姫から、筒水筒を受け取り、喉を潤しながら星二が言った。


「姫を守らないといけないからな……アチの世界で読んだマンガの必殺技のイメージトレーニングだ……やっと木刀で岩が斬れて、高速の連続突きができるようになった……これで、水とか風とか炎とかの目に見える波動が出せれば最高だけれどな」


「頑張ってください……それにしても、今日は天気がいいですね。汗ばむくらい」

 空を見上げて清々しい表情をしているルメス姫を見て星二が言った。

「後ろを向け、こっちに尻を向けろ」

「えっ?」

「早くしろ」

 ルメス姫が星二に背を向けると、星二は姫の尻を撫で回す。

「ひっ!? ななな、何を?」

「動くな! 思った通り感情の変化で地図が現れる箇所が透けて見える……ドレスの尻に地図が浮かんでいた」

「お尻に出ているんですか? だからって、どうしてお尻の撫で回しを……ひっ! それって、せ、せ、せく」


「薄くてよく見えなかったんだよ……羞恥心を与えたら、はっきり出てきた。よし形は覚えた……もう前を向いてもいいぞ」

 星二の方に向き直ったルメス姫は、後ろ手にお尻を押さえる。

 星二は、なぜかルメス姫の腹部を凝視している。ハッ! としたルメス姫が星二が凝視していた箇所を片方の手で押さえる隠した。

 平然とした口調で言う星二。

「茂みがあって見えにくかったが、形は見て覚えた……リック、描き写すモノを持ってきてくれ」


 星二はリックが持ってきた沼ドラゴンの皮に、覚えた地図を描き写す。

 リックが今まで星二が描き残してきた、地図を並べて形にする。

「これは【ガルダン島】の地図です……バツ印が付いている場所が? ルググ聖騎士団の本拠地がある島です」


 地図を見たルメス姫の両目が変色する、何かに憑かれたような口調でルメス姫はガルダン島の地図を指差して呟いた。

「この娘の体を、我の島に連れてくるのだ……されば、大いなる力と輝く財宝が目覚めるであろう」

 ルメス姫の両目が元にもどり、キョトンとしたルメス姫は全貌が明らかになった地図を眺める。

「なんですか? これ? どうかしましたか? あたしの顔に何か付いていますか?」

 星二が呟く。

「こりゃあ、島に行くしかねぇな」 


 ガルダン島は湖に掛かる橋で、中央湖の湖岸と繋がっていた。

 馬ドラゴンに牽引された馬車で橋を渡ってガルダン島に到着した、ルメス姫とリック。

 星二はジャジャに乗って、空を飛んで島にやって来た。


 ガルダン島の橋から見える山の斜面には『ようこそ!ガルダン島へ!』の歓迎文字があった。

 観光客で賑わう島を見て、星二が言った。

「なんか、想像していたのと違うな」

 リックが爪を磨きながら言った。

「ガルダン島は、漁業と観光産業の島ですからね」

 ルメス姫のお腹が、グゥゥゥゥウッと鳴った。

 少し微笑む星二。

「まずは、腹ごしらえだな」


 星二たちは橋の近くにあった、大衆食堂『彗星のマゾ』に入った。

 食堂に入ると、エプロン姿の若い兄ちゃんが、明るい声で星二たちを出迎える。

「いらっしゃいませ! お好きな席に……げっ!? 鬼導 星二!」

 店内に居た、エプロン姿の男性店員たちが一斉に殺気立つ。


「なんだぁ?」

 星二が驚いていると、厨房から聞き覚えがある声が聞こえ。

 腰にエプロンを巻いた男が出てきて言った。

「騒がしいぞ、おまえらいったい何が……き、鬼導 星二? どうして、ここにキュン?」

 聖騎士団師団長ベレイの意外な姿に、星二が質問する。

「あんたこそ、なにやっているんだ?」


「仕事だ、聖騎士団も働かないと収入は無いからな……聖騎士団の中には、金銭を工面するために服の袖部分の布地を売って〝(そで)無し〟の服を着ている者もいるキュン──この店は聖騎士団が経営している店だ……おっと、この島では争い事はご法度だ、オレたちがこの格好で島にいる時は停戦してくれキュン」

「わかった、オレもむやみに戦いたくはないからな……何か食い物を頼む、姫が腹ペコだ」

「席に座って、待っていろキュン……すぐに調理する」

 数分後に、本日のオススメ料理が次々と運ばれてきて、テーブルの上に並べられた。

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