第58話 40人目の仲間、永遠の友
「どんな頼みだ、ウィル……?」
「おれたちの組織には、まだ名前がない。おれたちの存在を遠くまで響かせ、誰かの希望になるためには、象徴的な名前が必要だ。それを、お前につけて欲しいんだ」
「責任重大だなぁ……。でも、いいぜ……。いいの、考えてやるよ……」
ルークは儚げに笑い、目をつむって小さく唸った。
「まず、そうだなぁ……。みんなに覚えてもらうんなら、長い名前はダメだな。短いほうが、名乗りやすいし……」
おれはその独り言を、ただじっと聞き続ける。
「隠れて活動するから……シャドウとかダークとか? いや、悪者っぽい名前も違うよなぁ……。もっと爽やかな感じが良い……」
ルークは黙りこくり、やがて、かくりと首が垂れる。
「ルーク!?」
呼びかければ、ハッとルークは目を覚ました。失いかけていた生気が少しだけ戻ってくる。
「……あ、れ? オレ……」
「すまない、ルーク。無理をさせているな……」
「あぁ、いや……平気だ。心配かけて悪い。ははっ、ちょっと魂抜けてたよ。大丈夫、もう少し気合入れて頑張るよ。最後の、大仕事だもんな……」
そうしてルークは、今度は目をつむらず、虚空を見つめながら呟く。
「組織の名前……。オレが、考える……。オレが、残すんだ……」
「…………」
「短くて……爽やかで……」
「…………」
「誰かの希望になるような組織の、名前……」
「…………」
「この世界で、苦しんでいる誰かがいる限り、ずっと在り続けて欲しい組織……」
「…………」
「……『エターナ』」
「『エターナ』?」
「そう、『永遠』だ。お前たちの活動に終わりがないことを祈って。誰かの希望で在り続けることを祈って……」
「いい名前だ。だが『《《お前たちの》》』と言うのは違う。『《《オレたちの》》』と言え」
「ウィル……。そうだな、オレたちの『エターナ』だ」
「その名に乗せて、お前も連れて行く。お前の望んだ、いい未来に」
「……そりゃ、いいな」
「お前の未練も、叶えてみせるよ……」
「うん……頼む、よ。妹を、幸せに……」
「約束する。ルーク、我が友よ。40人目の仲間よ。……永遠にあれ」
「……ああ、永遠にあれ」
ルークはわずかに微笑んで目をつむった。
「…………」
「……………………」
そして、二度と目を開けることはなかった。
異世界で巡り合った親友の魂は、今、ここで永遠となった。