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第40話 完成、戦闘強化服

 それから1週間。


 目まぐるしい忙しさだった。


 おれのスキル『超兵創造(プロメテウス)』で戦闘強化服(コンバットスーツ)を試作しては、テストを繰り返し改良していった。このスキルが無ければ何十倍も時間がかかっていただろう。


 開発の過程で必要な資材があれば、ルークに調達を頼んだ。


 同時進行で、ママウルフの再改造手術もおこなった。


 また、保安班員の使う魔法銃(スペルシューター)のさらなる改良もおこなった。


 素材を木から金属に変更。強度を高めて戦闘中に破損する恐れを軽減。さらに持ち手部にスイッチを増設した。


 このスイッチを押している間、防御魔法が展開される。魔石の消耗は激しくなるが、防御しながら射撃も可能だ。擬似的な『二重魔法(デュアルキャスト)』と言えるだろう。


 そうしていくうちに、いよいよ戦闘強化服(コンバットスーツ)が形になった。ゴーレムでのテスト期間を終え、実際に人が着てのテストとなる。


 仲間たちを呼び出し、お披露目といく。


「うぅ……これ、恥ずかしい……」


 アメリアがまず着てきたのは胸元に魔石が付いた黒いアンダースーツだ。ルークに調達してもらった、魔力が伝導しやすく伸縮性のある生地で作ってある。見た目は黒い全身タイツだ。それゆえ女性らしい体のラインがハッキリ出てしまった。


 何人かが見惚れてしまっている。そんな男性陣を、エレンが引っ叩いて回っている。


 おれも少々目のやり場に困る。


「そのアンダーは、魔石の魔力でお前の体の動きを増幅してくれる。その機能を活かすには肌に密着させる必要があるんだ。だから……その、悪い。早く、アーマーを着てくれ」


「う、うん……」


 アメリアは周囲の視線を気にしつつ、おれが用意したアーマーを装着していく。


 これも魔力が伝導しやすい金属で作った。見た目は鋭角の少ないプレートアーマーといったところ。動きやすさ重視で、関節部には装甲が少ない。


「そのアーマーは普通の鎧としての機能の他に、増幅された力の反動を受け止める働きもする。増幅した力でなにかを殴れば自分の骨を折るほどの威力になるが、そのアーマーを着ていれば問題ないというわけだ」


 最後にアメリアはヘルムをかぶる。オープンタイプのヘルムだ。装着者の意志を読み取り、スーツ全体に伝える機能がある。


 本当ならフルフェイスにして数々のセンサーや視覚補助装置を仕込みたかったのだが、今の技術では無理だった。せめてアメリアの眼の良さを活かすために、視界の開けたオープンヘルムを選択したのである。


「おー、かっこいいー」


 興味津々にエレンや他の服飾担当者がアメリアの周囲をぐるぐると見て回る。


 アメリアは照れてうつむく。悪い気はしないようだ。


 が、少しして困った顔をこちらに向けてきた。


「あの……これ結構重いんだけど……。私、そんなに身体能力ないから、重い鎧なんて着てたらまともに動けないよ……」


「まだ起動していないからな。ガントレットにボタンがあるだろう? 両腕にだ。同時に押し込めば強化効果が――」


「こう?」


「あっ、待て危ない! まだエレンたちが後ろに――!」


 慌てて制止するが、すでにアメリアは起動ボタンを押してしまっていた。


「へっ?」


 急に名を呼ばれたエレンは、アメリアの背後で首を傾げる。


 戦闘強化服(コンバットスーツ)から甲高い起動音が響き出す。


「くっ!」


 おれは全力で踏み込み、エレンと服飾担当者を勢いよく押し倒した。


 ――ドォオン!


 次の瞬間、爆音が弾けた。


「ひぇ……!」


 おれが助けなければ、エレンたちは爆風に巻き込まれていた。大怪我では済まなかっただろう。


「な、なに? なにが起こったの? エレン、大丈夫……?」


 アメリアは振り返って、オドオドしてしまう。


「ウィルが助けてくれたから、大丈夫だけど……」


 エレンたちに怪我がなくて、おれはほっと息をつく。


「説明は最後まで聞いてから使ってくれ……」


 おれは立ち上がり、アメリアに向き直る。


「装着してる魔石は例の高出力のやつだ。ボタンを押すと、その魔力が全体に行き渡って強化機能を起動させるんだが、起動に必要な出力と、機能の維持に必要な出力には差があってな。起動に使った魔力は以降は余剰になるんだ。余剰分を残しておくと強化率が高まりすぎて着用者にダメージが行く。そこで余剰魔力を物理エネルギーに変換して背後から排出するようにしたんだ」


 一息に説明してやるが、アメリアは首を傾げた。エレンも、見学していたゲンも、他の仲間たちも。


 理解しているのはクラリスだけのようだった。


「えっと、つまり?」


「…………」


 純真な瞳で問いかけるアメリアに、おれは片手で頭を抱えた。


「……つまり、起動すると背後で爆発する。危ないから後方確認しておくこと。みんなも、装着者の背後には立たないこと」


「おー、わかりやすい! よくわかった!」


 おれは密かに、今後の教育の強化を決意した。


「じゃあさっそくテストしてみよう。ルーク……は、今いないから、ゲン! 模擬戦の相手をしてやってくれ」


「わかった」


 ゲンがアメリアの前に進み出てくる。


 アメリアは自信なさげな表情を浮かべる。


 そういえばこの1週間、アメリアはゲンとよく一緒に訓練していたようだが……。


「ちなみに、これまでのふたりの模擬戦の結果は?」


「……全敗」


 そっと呟くアメリアである。


「ああ、いつも善戦するんだが、やっぱり俺とは体力の差がな」


「なら、変化が分かりやすいだろう。さ、やってみろ」


 おれが促すと、ゲンとアメリアの模擬戦が始まった。

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