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第38話 戦力強化会議

「やっぱり無理だよぉ! Sランクがそんなに凄い上にBランクやCランクも一杯いるんじゃ勝ち目なんてないよぉっ!」


 改めて、ダミアンたちの戦力をアメリアに説明したところ、涙目で弱音を吐かれてしまった。


「大丈夫だ、アメリア。ダミアンの巨獣は、ルークがゴーレムで抑える。残りはSランクであろうと生身の人間だ。どうにかできる」


「どうにかって……?」


「お前の眼の良さや戦闘センスを活かすんだ。問題は身体能力だが、それはこれから補う。それさえできれば、お前はSランクとだって渡り合える」


「どうやって補うつもり?」


「複数の候補がある。改造人間(サイボーグ)化か、戦闘強化服(コンバットスーツ)を作るか、あるいは身体強化魔法の開発か……」


「さいぼーぐ? こんばっとすーつ?」


「ああ、改造人間(サイボーグ)というのは、体を改造――そこにいるママウルフみたいに、弱い部分を他の部品に置き換えて強くした者の総称だ」


 アメリアは息を呑んで、ママウルフをまじまじと覗き込む。


「さっきから気になってたけど、その足が、改造の結果なんだ……」


「足だけではない。ワタシの命を救うため、喉も変えてくれた」


「!?!?? 喋――った!?!?」


 ママウルフが補足すると、アメリアは目を丸くして固まってしまった。


「――とまあ、改造手術はこういう物だ。ママウルフのは救命手術の意味合いが強く、戦闘力の向上はほとんどないが……この基地にある資材を使い、高出力の魔石を動力として埋め込めば、かなり強力な改造人間(サイボーグ)にできるだろう」


「え、えーっと、その改造人間(サイボーグ)には、私がなるんだよ、ね?」


「他の者がなっても、ダミアンには勝てないからな」


 アメリアはママウルフをもう一度見て、微妙な顔をした。


「……それはちょっと……。他の方法があるなら、遠慮したいなぁ」


「これが一番手っ取り早いんだが、まあそれもそうだな」


 思えば、週1で改造人間(サイボーグ)人造人間(アンドロイド)を製造し、次から次へと使い捨てにしていた前世とは状況が違うのだ。


 使い捨てにしていい人間などいない。そんなことをしては、Fランク民を使い捨ての労奴(ろうど)とする連中と変わらない。


 緊急で救命が必要なときや、本人が強く希望したとき以外は、改造手術をおこなうべきではないだろう。


「次の候補――戦闘強化服(コンバットスーツ)というのは、着用することで身体能力や防御力を飛躍的に増大させる鎧のようなものだ」


「そんなのが作れるの?」


「作れるが、少々問題がある」


「なんで? 人を改造するより簡単そう」


「逆だ。人を改造しないから難しいんだ。改造人間(サイボーグ)化なら本人の肉体自体が強化されるから問題ないが、戦闘強化服(コンバットスーツ)は着用した生身の人間を外から強化する。強化率を誤れば着用者が耐えられん。不具合でもあれば即死もあり得る」


「そ、そうなんだ……」


「充分にテストができるなら不具合も潰せるが、どうやってテストするかという問題がある。テストのたびに誰かに着せていては、死傷者が何人出るか分からん」


 前世では先に改造人間(サイボーグ)人造人間(アンドロイド)を作って、テストさせていたのだが、今は同じ手段は使えない。


「じ、じゃあ、身体強化魔法の開発は? スキルでならありそうだけど、そんな効果の魔法なんて聞いたこともないけど」


「だからこそ開発できれば、他にはないおれたちの強みになる。開発に当たっては、頼りになる仲間がいるしな」


 ちらりとクラリスを見やると、うん、と頷きを返してくれる。しかし表情は芳しくない。


「でも、すぐにはできないし……その、こんばっとすーつ? みたいな強化率の問題はあるから、どうテストするか考えないと。あと、たぶん効果は魔力の質次第になるから、わたしたちじゃ使ってもあんまり意味がないかも」


「それはAランクのルークさんに使ってもらったり、例の魔石を使えばいいんじゃないか?」


 ゲンが口を挟む。しかしクラリスは小さく首を横に振る。


「効果時間の問題もあるの。戦ってる最中に効果が切れちゃったら……あのダミアン相手にかけ直せる暇があるかな……?」


 ふぅむ、とルークが唸る。


「オレが近くで援護できるなら、それくらいの時間は稼げそうだが……たぶんオレは違う場所で巨獣相手に手一杯になってるだろうからなぁ……」


「つまり、全部ダメなんじゃないか」


 ミラがため息混じりに遠慮なく口にする。


 一応、改造人間(サイボーグ)化は可能なのだが……いや、使わないと決めた以上、ダメなのは同じか。


「……そうだな。どれもなにかしら問題がある。みんな、なにかいい案はあるか?」


 さっそくルークが手を上げた。


「オレは戦闘強化服(コンバットスーツ)を推すね。強化魔法より問題が少なそうだし、その問題もオレなら解決できるかもしれないぜ」


 なるほど、とおれは感心した。


「そうか。Aランクの優れた肉体なら、多少の事故にも耐えられるかもしれんな。即死さえしなければ、自分で治療魔法もかけられる。よし採用だ」


「いや待て待て待て」


 するとルークは慌てて手を振った。


「勘弁してくれ。さすがに即死もあり得るテストには挑戦したくないって」


「チッ、冗談だ。どうやって解決する?」


「悪い冗談はやめてくれよ……。オレのスキル『献魂の守護者ティシア・ピュグマリオン』を使うんだ。等身大サイズのゴーレムなら、戦闘強化服(コンバットスーツ)のテストにも使えるんじゃないか?」

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