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幻獣-DEVIL−  作者: もる
第一章 カルガリア・リグレット編
4/21

第四話 悪魔

二話三話と夢中になりすぎてギチギチに書いてしまいました…。


※追記です。

半年以上全く進めていなかったこの小説、今後は不定期にリメイクしていき、終わり次第進めていこうと思います。

 目を開けたら、見慣れない天井があって、全開になった窓から気持ちのいい風が吹き込んでいた。

 カーテンが風に呼応してはためいて、その隙間から雲ひとつなく晴れた綺麗な空が見えた。

 俺はかなり大きめなベッドに寝かされており、服も一新、灰色っぽい寝巻きになっていた。


「え…あれ?」


 俺は状態を起こし、前髪を掻き分けて考えた。

 俺は体のいろんなところを刺されたはずだ。

 なのに、俺は生きてる。

 瞼の上から目に触ってみた。潰れていない。

 両手を見てみる。傷ついていない。

 服をめくってみた。なんの傷跡もない。

 俺は理解が及ばなくて、頭が真っ白になった。


「おはよう、ドラン」


「……ミーシャ」


 ベッドの近くのドアが開いて、ミーシャが入って来た。

 二人で繕ったドレスではなくて、貴族の女みたいな服を着ている。

 ミーシャは俺の近くまで寄って来て、ベッドの端に座った。

 俺はそれをただじっと見てるだけで、言葉が出てこなかった。


「ドラン、不思議に思ってるよね」


「……あ、おう」


「あのね、あれから1日経ったんだ。君の傷は全部治ってるから。だからこれからも健康に生きていけるんだ。君はこれから…」


「ちょっとまて」


 俺は右手を前に突き出して、ミーシャの話を遮った。

 ミーシャの話から、俺が怪我をしたことは事実だ。

 だけど、それがあとかたもなく治っている。

 それは確かに喜ばしいことだが、それよりも確認しないといけないことがある。


「もしかして、俺が言ったこと全部覚えてるのか? 覚えてたら、その、俺は…」


「……覚えてるよ」


 ミーシャは俺から顔を背けず、ただまっすぐに見据えて微笑んだ。

 その笑顔を直視できなくて、俺は途端に恥ずかしくなって下を向いた。

 下を向いたまま頭を抱えて、俺はその場にうずくまった。

 心臓が高鳴り、俺の体にうるさく響いた。


「ああああぁぁ……」


「ああ! 別に気にしてないよ、全然! ほら、これからも一緒に上手くやってこうよ!」


 ミーシャは俺の肩を優しく叩いて、困ったように笑った。

 恥ずかしすぎて顔を上げられない。

 あの時は、自分は死ぬと思ったから覚悟を決めて言ったのに、生き残ってしまったから全然意味がなくない。

 こんなの、生き恥を晒すようなものじゃないか。


 だがもう仕方がない。考えてもどうにもならない。

 起こってしまったことは受け止めていくしかない。俺はもう割り切ることにした。


 一回頭を整理すると、今度は疑問が湧いてくる。

 当然と言えば当然の、俺が助かったことに対する疑問だ。


「なあ……俺はどうやって助かったんだ?」


「えーとね、それは、ちょっと信じてもらえないかもしれないけど……」


「言ってくれ。ほら、俺がお前に対して思ってたこと言ったんだから。言わないと平等じゃないぞ」


「それはドランが勝手に言ったんじゃないか……」


 ミーシャは呆れたように肩を落とした。

 俺はそれでも諦めずにミーシャをじっと見つめた。

 彼女は若干躊躇った後、話を切り出した。


「……私、実は悪魔なんだ」


 ミーシャは、真面目な顔でいきなりおかしなことを言い出した。

 俺は一瞬ミーシャがふざけてるのかと思って、呆れてため息をついた。


「いや、はぐらかすなよ。いいからそう言うの。嘘つくな」


「嘘じゃない! ほんとなんだ!」


 俺の言葉に被せるようにして、ミーシャは声を荒げた。

 ミーシャの突然の反応に俺は驚き、俺は咄嗟に言葉が出なかった。

 こんなミーシャの様子を見るのは初めてだ

 ミーシャはそんな俺の反応に気づいて、すぐ悲しそうな顔をした。


「ごめん、いきなり大きい声出しちゃって」


「いや、俺が悪かった。まあ、いろんなことがあるもんな。別に、もう疑わない。それで、お前が悪魔なのと、俺が助かったのと、何が関係してるんだ?」


「えっと、私たち悪魔の体にはね、血液の他に魔力が流れているんだ」


「魔力…聞いたことないな」


「でしょ? 魔力は悪魔しか持ってないからね」


「なるほど?」


 俺は今、今まで生きて来た中で一番面白い話を聞いているかもしれない。

 悪魔、それに魔力。この世界には、俺の知らないことがまだまだたくさんあるようだ。


「それでね、魔力には肉体を強化する力があるんだ。もともと人間の体には魔力がないから、傷の治りが遅いんだけど、その、私がドランと唇を、あの……」


「ちゅーした時か」


「……うん。その時ね、君の体に私の魔力が入ったんだ。そのまま君の体の回復力が強化されて、傷が治ったってこと」


「……へぇー」


 原理はよくわからない。

 でも、その不思議な力で俺は助かったんだ。

 あの時終わったと思っていた俺の人生、それがまだまだ続くんだ。


「ありがとう、ミーシャ」


 俺はミーシャをまっすぐ見つめて、礼を言った。

 ミーシャは照れくさそうに笑った。

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