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幻獣-DEVIL−  作者: もる
第二章 王立植物園ルプラカミー編
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第二十一話 決戦

今回は長めに書きました。

自分の中ではかなり前に書いたような感じのする、十六話のことをやっと持ってくることができました。

ここから戦闘とか増やしてルプラカミーをぶっ潰そうかなと思います。

 上から見るならば、ルプラカミーはその半分以上が植物園だろう。

 住宅街はあり、それなりに発展している。

 それは、あまりにも大きすぎる植物園があるためだ。

 

 植物園に入るには、別に特別な許可はいらない。

 ルプラカミーに入り、まず見えるのは商店街。

 大きな街道を抜けると、噴水の見える広場に出る。

 広場に出たら宿を見つけて、馬車は宿の近くに停める。

 

 そこからさらに奥に向かって歩いていくと、だんだん家や店がなくなって、道が開けてくる。

 そこに、王立植物園ルプラカミーがある。


 俺たちは今、その道を歩いている。

 隣には、いつもより厚めの服を着たアウラ。

 後ろには、説得して集めた五十人の騎士達。

 皆喋らず、夜の闇に紛れるように沈黙を貫いている。


 もう夜中であるため、植物園は観光施設としてはもう機能していない。

 消灯された広い施設は、人の気配が感じられなかった。

 誰もいない植物園、攻め入るには十分だ。


「静かに……ここまで来てくれてありがとう。みんな、準備はいいか?」


 大勢が、暗闇の中でも大きく頷いたように感じた。

 隣のアウラも、俺の方を見て、準備は万全だと目で訴えてきた。


「時間が勝負だ。いいか、入り口から入ったら、まっすぐ走れ。俺とアウラ、それからA班は植物園の一番出口から大庭園に行く。B班、C班、D班、E班は2番、3番、4番、5番出口から入ってくれ」


「おい、それでいいのかよ」


 1人の騎士から、疑問の声が上がった。

 俺はその騎士の方に向き直り、話の先を促した。


「俺はE班だが……突入にはもっと時間がかかる。見つかる可能性が一番高い。なんなら、俺たちが時間稼ぎをすることができる。そうすれば……」


「だめだ」


 俺は話を遮り、1人の棋士の提案を却下した。

 騎士は驚いた風に唾を飲み、「だが……」と話を続けようとした。

 確かに、その理屈はわかる。

 一番見つかる可能性の高いE班に囮になって貰えば、他の班の大庭園侵入の計画は成功しやすいだろう。


 だが、一班十人で構成されているのだ。

 数にして五十人。

 正直、俺たちが集められるのはこの程度の数だけだった。

 

 五十人で、王立植物園ルプラカミーを落とす。

 植物園の機能が停止するとなれば、それはルプラカミーが都市としての機能を失うことになる。

 つまるところ、五十人で一つの都市を落とすのだ。


 それは、現実的にみてかなり厳しいことだ。

 成功しても失敗しても、どちらでも俺たちに利がある。

 だが、極力成功したい。


 成功するには、人数がそもそも少ないため、囮作戦は取れないのだ。

 一班を犠牲にしなくとも、1人だけを囮にするという考えもあるかもしれない。

 だが、1人もかけることなく、大庭園に侵入するのが、俺たちの勝利の大前提なのだ。


「ごめんな。これは総力戦なんだ。悪いが、死に物狂いでついてきてくれ」


「……わかった。言ったからには、成功させるんだぞ」


「それは、個々の技量に左右されるけどな」


 俺は微笑んで、そして背を向けた。

 背中越しに、騎士たちに、静かに、低く、それでいて全員に聞こえるように言い放つ。


「これより、王立植物園ルプラカミー陥落作戦を開始する。全員、目標を達成するために、全力を尽くせ」


 騎士たちからの歓声はない。

 それでいい。

 夜の闇に紛れ、俺たちは大庭園に侵入する。

 確実にバレる侵入方法、ガラスを叩き割っての侵入だ。

 一瞬でかたをつける。


 どれだけ長くなるかはわからない。

 帰ってこられない場合もあるかもしれない。

 だが、ここで怖気付くわけにはいかない。


 きっと、ここに集まった騎士たちだって、それはわかっている。

 皆心の中で、決意を叫んだに違いない。

 彼らと出会い、俺はわかったことがある。

 彼らは欲に忠実だ。実力も見合っている。

 想像以上の結果を持ち帰れる技量がある。


 俺は仲間を信じ、故に合図は、心からの叫びになった。


「行くぞーーーー!!」


「おおーーーー!!」


 瞬間、数十人が一斉に飛びかかり、扉をぶち破り、見慣れた植物園を蹂躙する。

 薄暗い植物園、植物の標本が展示される博物館のようなブースを潜り抜け、皆それぞれの道を行く。


 俺とアウラ、そしてA班は先頭を行き、後ろに続く四班とは別れた。

 大勢が走るドタバタとうるさい足音が響き渡り、園内には危険信号が鳴り響く。

 俺たちは一切気にせず、右へ左へ通路を抜け、目的の一番出口に辿り着く。


「俺がぶった斬る! 続け!」


 いうや否や、俺は闇に同化する漆黒のマントの裏側から、俺の身長ほどもある長い剣を引く抜くと、走る勢いをそのまま乗せて、重たい鉄の扉を斜めに両断した。

 もちろん、魔力で過剰に強化してある。

 ぶっつけ本番の攻撃だったが、案外どうにかなった。


 俺は安堵しつつ、扉の残骸を飛び越えて大庭園の地面を踏みしめる。

 後ろに続く騎士たちは唖然として鉄扉を見ていたが、すぐに切り替えると勇ましく後に続いた。


「意外と良さそうだな、ドラン。剣術が上達してるじゃないか」


「……まあ一応な。俺がピンチになるまで、アウラは温存しといてくれ」


「ああ。まずは目下、問題が起こらないかが心配だな」


 隣に並んで走りながら、アウラは呟く。

 侵入までは一緒にいたA班とも、ここからは別行動だ。

 一応、全ての班と通信はできるようになっているから心配はないが。


 このまま走って、立入禁止区域の森までは入り込まないとまずい。

 警備員が入ってくる可能性があるため、急いで身を隠す必要がある。

 俺はフードをかぶって顔を隠し、いつでも剣が抜けるように腰の構え、走った。

 アウラも周囲を警戒し、走り続けた。


「ーーー早いな、もう見え始めたぞ」


 アウラの視線の先、まばらに立ち並ぶ植物庭園から一風変わった風景が視界に入る。

 様々な植物が雑多に入り混じり、その風景は一言に異様だ。

 自然にはありえない生態系の共存に、俺は身震いした。

 昼間に見たのとは違う、恐怖を感じた。


「入るぞ。心構えは?」


「ばっちりだ」


 アウラの問いかけに、俺は意気込んで答え、森へと侵入。

 しようとしたのだが。


「痛ってぇぇぇ!! なんだこれくらいと見えねぇじゃねえかこの壁!」


 俺は怒り任せに、立ちはだかった見えない壁ーーー、否、森と植物庭園を隔てる黒い物理的障害をぶった斬り、それを蹴飛ばして中に入る。

 これにはアウラも苦笑い。

 俺は赤くなった鼻を押さえ、中に入り、さらなる異変を感じた。


「明るいじゃねぇか……」


 そう、おかしなことだが、中は明るいのだ。

 なんというか、人工的な明かりじゃない。

 これは太陽とか月とか、そう言った類の自然な光だと思う。

 光に照らされ、俺は目を細める。

 だが、驚いたのも束の間だ。


「血の匂い……いきなり不穏な空気だな、おい」


「静かに! ドラン、あれを見ろ」


「……?」


 アウラの生死に俺は口を押さえ、彼の指差す方向に目を向けた。

 その先には、まだ光に慣れていない目でもはっきりとわかる、怒りの形相をこちらに向けた、かなり大きめの野生動物の姿がある。

 そちらも大問題だが、問題はその動物の視線の先にある者。

 それが、傷ついた人間であることだ。


「ドラン、俺の武器じゃ音が大きすぎて周囲の他の獣にバレるかもしれん。あそこに入り人間を助けつつ、静かに追っ払ってくれねえか?」


「難しいな……でも、やるしかねぇか」


 俺は腹を括り、マントの下の剣を手繰り寄せる。

 鉄の扉を叩き切った時よりも、かなり多めの魔力を乗せて、剣戟を放った。


 技は剣を超え、空気に乗り、風となって木々を薙ぎ倒した。

 それでもなお衰えない力は、その後ろに潜んだ生物さえ、肉塊へと変えた。


「おい! 派手にやってどうすんだよ!」


「仕方ないだろ! 倒れてる人がいるし! 見た感じ女の人だし! 早く助けないといけないと思って!」


 俺はアウラと少し言い合った後、すぐに女性の元へ駆け寄る。

 警戒、それをあらわにした目。

 それを向けられ、俺たちは一瞬たじろぐ。

 たじろぐが、それが助けない理由にはならない。

 俺の隣のアウラは、すでにいなくなったA班に助けを求めている。


「大変だ、女の子が死にそうになってる! A班、こっちへこい!」


「……は?」


「実験施設から来たのか? 大丈夫、俺とドラン、こう見えて強いんだよね。誰が来ても守れる自信がある。な!」


 セリフまで先に言われてしまった、と俺は若干気分を悪くしたが、顔色は変えずにこくこくと頷いた。

 女の人、、というより、見た目は少女か。

 白いボサボサの髪に、白い肌。

 あちこちに血が付着していて、足も片方は膝から下がないようだ。

 俺は無意識に、カルガリアにいる時の、通り魔に刺された時の自分とかさせ合わせるように、その子を見ていた。


 とはいえ、これはもうほぼ確定だろう。

 大庭園に入ってすぐに、かなり悪い状態の人間を発見した。

 状況から見て、この少女は逃げてきたようだ。

 きっと、人体実験施設から。


 王立植物園ルプラカミー、その闇が一瞬で明かされる。

 俺たちの仮説はほぼ当たったと言っていい。

 俺たちがここを落とした時、英雄になることは確定した。


 ここにいる少女をまず早急に手当てし、そのあとで攻め込む。

 ひとまずはここにとどまることになるかもしれないが、大きな手柄があるのだから急ぐ必要はない。


 俺は誰にもバレないように、薄くほほんだ。

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