第十三話 才能
俺たちの消化活動は終わり、残るは火事の後片付けのみとなった。一晩で消化は済んだものの、被害はそれなりに大きかった。少なくとも、街の半分は焼け落ちてしまい、復旧の目処が立っていない状況だ。
もともとこの街、リグレットは資源に乏しく、その多くを他の町からの輸入に頼っている。そのため、街の力のみでここから立ち上がるのは不可能に近いのだ。でも、そんなことで嘆いてはいられない。
「おおー、すごいなドラン! そんな大きい木片を運べるなんて!」
「ああ、コツは掴んだからな。ただ単純に、浮かせるだけだ」
俺は自分より、一回りも二回りも大きい木片を浮かせ、空いた両手でさらに食料や飲料水を運んでいる。魔法の使い方、それは強い思い。だが今の俺は、木片を運びたいと、に強く念じていない。
一晩通してわかった。魔法を使おうと思う上で一番大変なのは、最初の心意気だったのだ。魔法を使ったことのないものが、魔法に目覚めるきっかけ。それが、強い思いだ。
慣れてしまえば本当に簡単なもので、なぜ昨日までできなかったんだろう、と思うぐらいだ。
ところで俺は、またもう一つ不思議なことがあった。物を運べば疲れる、これは当たり前だ。それならば、魔法を使うと疲れるのだろうか。俺は少なくとも、一晩中魔法を使い続けていた。だが、今の所は限界を迎えるどころか、息切れすらしていない。
魔法とは、体内の魔力から生み出される、無尽蔵のエネルギーなのかもしれない。
そんな事を考えながら荷物を運んでいると、前を歩いているアウラが振り返り、俺に言った。
「ドラン、あんま魔法を使いすぎるとよくないぞ。たまには休めよ」
「……え? 魔法って疲れるものなのか?」
「当たり前だろ。魔力を消費してんだから。体力と同じようなもんだ」
振り返ったアウラは、魔法を使っていない。俺と一緒で、魔法を使って一晩も消化活動にあたったのだ。そのアウラが今、疲れるから休めと言った。
俺は魔法を使うのは初めてだし、おそらく俺よりも経験豊富であろうアウラに従った方が良いだろう。俺はその言葉に従って、木片を街の隅まで運んだら、ひとまずは別の仕事をすることにした。
「なあ、もしかしてドランは疲れてねぇのか?」
「ん? ああ、まあ今のところはな」
「まじか……! だとしたらお前、相当魔法を使うのが上手いかもしれないぞ」
「え?」
アウラは荷物を運びながら、悔しそうにそう言った。俺は別に、適当に魔法を使ってるだけだか、と言ったが、アウラはそれをさらに否定した。
どうやら、魔法というものは上手い下手があるらしい。魔法の効果はともかく、いかに効率よく魔力を魔法へと変換させるかによって、魔力の消費が大きく減るらしい。
どう意識しているのかと聞かれたが、俺は感覚でやっているとしか言えなかった。最初にアウラが魔法を教えようとした時と同じだ。魔法というものは、使う人間の感覚や才能に依存する。俺とアウラの魔法を使う感覚が違うため、俺が無意識にやっていることは伝えることができなかった。
「疲れたぁ〜……」
俺たちがいた宿を境に、家事は広がっていたので、ギリギリ被害を免れて、宿は健在である。使い慣れたベッドの感触も、広間も、そこにあった。なんだかすごく懐かしい感じがして、俺はベッドに横になった。横になったら、すぐに溜まっていた疲れがどっと押し寄せて、急激な眠気に襲われた。
半分閉じかけた目をアウラに向けると、彼はすでに眠っていた。日中、俺と一緒に仕事をしていたアウラも、当然ながら疲れているのだ。
思えば、俺たちは一日中、街の復旧に力を尽くした。だから今は、寝てしまっても仕方がない。俺は次第に頭が回らなくなっていって、深い眠りへと落ちていった。




