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19、業魔の森

誤字脱字の報告、ありがとうございました。


拙い小説ですが、思いを込めて書いてますので、誤字脱字の報告は本当にありがたいです。


これからも、よろしくお願いします。


ありがとうございました。

 業魔の森、名前からしてジャングルのような光も差さない、鬱蒼とした場所を想像するだろうが、実際はある程度の光が差す空間もあって、足元が見えないほどではない。それでも、(あら)ゆる種類の木々が生い茂っているので、魔物の早期発見を困難にさせている。


 広大な森の中心には瘴気の沼が存在して、その瘴気により生物を魔物へと変化させ、独特な環境を構築している。瘴気を帯びた木々は倒しても、燃やしても、なぜか数週間で復活を果たし、瘴気を帯びた動物は、時として数十メートルと巨大な魔物化した例も存在する。


「サリーは、魔物が怖くないですか?」

「この場所は、何度も来ていますので。それに、騎士団の方達を信頼していますから」


 当然だが、この森は馬車での走行は不可能なので、馬車は一旦帰って三日後の朝に迎えに来ることになっている。野営を撤収した一番隊は、各々がリュックを担ぎながら森の中を歩いていた。


 騎士団の討伐作戦は森の中に拠点を作り、その拠点を中心に周囲の魔物を倒していく。そして、魔物が少なくなったら移動する。簡単な作戦だが、荷物を担いだままでの魔物との戦いは、思うように動けないので現実的な作戦と言えよう。


「そうだよね、私達は戦ったりしないもんね」

「えぇ。ただ、今回は警戒したほうが宜しいかと思います」

「警戒?」

「えぇ。説明できないけど、いつもと違う気がします」

「止まれ!」


 団長の合図で誰もが動きを止めると、すぐさま護衛の五人がサリーとカレンを取り囲み、誰もがその場に荷物を下ろす。


 静寂の中で、木々の葉が擦れる音だけが、何者かの気配を伝えてくる。やがて騎士団の緊張も次第に高まっていき、誰もが一点から目が話せなくなっていく。


「オーガだ! 戦闘態勢を取れぇぇええ!」

「「「「おぉー!」」」」


 騎士団の動きは素早く、槍を持った団員が先頭に立つと、すぐさま後衛が風魔法で周囲の木々を切り開きながら、三体のオーガも同時に切り裂いていく。


 オーガとは、体長2.5mの鬼のような化け物だ! その化け物が三体同時に襲ってくるが、騎士団の風魔法により、一瞬だが確実に動きを止める。


「槍隊、行けぇぇええー!」

「「「「おぉー!」」」」


 一瞬でも止まった隙を騎士団長は見逃さない。すぐに大声で叫ぶと槍を持った五人の団員が一斉に突っ込んで行く。風魔法で怯んだオーガが抵抗を試みるが時すでに遅し、五人の槍がオーガを何度も突き刺す。


「いいかぁ! 完全に動けなくなるまで、何度でも突き刺せ!」

「「「「はい!」」」」


 騎士団の大声と、オーガの絶叫が森の中を狂気に染めていく。槍隊の面々は何度も何度も槍をオーガに突き刺し、その度にオーガの痛みや苦しみの悲鳴が何度も聞こえてくる。


 オーガの悲鳴が聞こえなくなると、暫くして騎士団の一人がオーガの魔石を抜き取ると、オーガの身体の至る所に切れ込みを入れ、その切れ込みに毒を挿し込んでいく。


「団長、魔石の抜き取りと、毒の挿入作業終わりました」

「よくやった! 悪いが他の魔物が来る前に、場所を移動するぞ」


 討伐した魔物には、他の魔物が寄ってくる可能性があるため、騎士団は早めに移動を開始する。オーガの死骸は放って置いても、それを食べた魔物は毒に侵され死亡するから問題はない。


 不思議なことに魔物は、生肉に毒を入れても食べないが、魔物の死骸に毒を入れると何故だか食べる。その特性を活かして、魔物の死骸には必ず毒を挿入して罠を仕掛けるわけだ。


 一連の作業が終わり再び移動を開始するが、オーガを倒した場所から近くも遠くもない、適当な場所を見つけ拠点とする。オーガが出たということは、周辺に魔物が多く生息してる可能性が高いからだ。


 騎士団は先程倒したオーガを餌にして、効率よく何度でもこの周辺で魔物を狩るつもりだ。


「拠点の周囲に魔除香(まじょこう)の設置を急げ、魔物が出現してからでは遅いからな」

「「「「はい」」」」


 魔除光とは、野営の時にも使った聖なる光を放つ結界魔導具で、周囲に等間隔で設置すると、魔物が近づいても拠点に入って来れなくなる。


 聖なる光と言ってはいるが、実際は魔物の核に何らかの影響を与え、近寄れなくする外壁のような役割を担っていて、業魔の森での魔物討伐には、何よりも大事な必需品といえる。


「カレン、テントの準備をしようか」

「そうね、さっさと設置しましょ」


 サリー達はテントの設置を急ぎ、騎士団員は魔除光の設置を終えると、武器の手入れを始めていた。少し休憩をしたら、再び魔物討伐を開始するからだ。


「そろそろ討伐に行きますけど、宜しいでしょうか」

「「はい」」


 休憩を終えると、再び魔物討伐に出かける。前回倒したオーガの方に向かって騎士団は歩き出し、その後ろを五人の護衛に守られたサリー達が歩く。出発したときと同じ隊列だ。


「止まってください、どうやら団長達はオークの集団を見つけたようです」

「集団とは、どれくらいの数ですか?」

「七体です。少し多いが団長達なら大丈夫ですので、安心してください」

「分かりました」


 カレンが団員と話をしてる間、サリーは周囲の警戒を怠らない。前回と違い、明らかに魔物の数が多すぎるからだ。


「戦闘が始まりました、少しずつ近寄りましょう」

「「はい」」


 戦闘が始まるとサリー達は、五人の護衛に囲まれながら戦闘中の騎士団に近づいていく。離れていたら怪我して動けない団員を、すぐに治療できないからだ。


「止まってください。こちらで待機します」

「「はい」」


 サリー達は大木を背にして身を守りつつ、目の前にいる護衛の指示に従いながら、騎士団とオークの戦いを眺めている。


 オークの数が多いため、槍だけでは上手くいかず、団員達は剣を抜いて戦っていた。団員達の必死の戦いに、オークは少しずつ数を減らしていくが、一瞬の隙をついたオークの棍棒が団員を吹き飛ばす。


 吹き飛ばされた団員の悲鳴と、口から飛び出た血飛沫(ちしぶき)が周囲に飛び散り、慌てて別の団員が、飛ばされた男性に駆け寄って行く。団員は怪我した男性をすぐに担ぎ上げ、こちらに向かって走り出す。


「すまない、カレン様、治療をお願いします」

「分かりました」


 団員がカレンを指名し、カレンもすぐに対応する。彼女の素早い聖魔法のお陰で、団員は復活を果たすと休む暇なく飛び出していく。


「お疲れ様でした」

「緊張しましたけど、上手くいきました」


 カレンが、少し疲れた様子で笑顔を見せた。


 暫く戦闘が続いたが、やがて静かになりオーク討伐が成功する。後は、魔石を抜き取り毒を挿入すれば討伐完了だ。


 再び拠点に戻った騎士団とサリー達は、食事を取り一休みすると三度めの討伐に出かける。


 こうして日が暮れるまで同じ事を、何度も繰り返すことが騎士団による魔物討伐だが、聖魔法を使うのは毎回カレンだけで、サリーは呼ばれない。


 理由は分からないが、騎士団長はなぜか毎回サリーを使わない。そして、その事が原因で、彼女は騎士団長を好きになれないでいた。


 今日最後の討伐を終え、拠点に戻った団員達は魔物の返り血を拭き取ると、適当な場所で眠りにつく。サリー達もテントに入ると、すぐに眠りについた。


 あとは朝を待つだけだが、その日は普段の魔物討伐とは違い、数百の魔物が拠点を襲った。





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