第73話 ランディさんとジュリア姉様の婚姻……
しどろもどろのジュリア姉様に、私は一気に畳み掛ける。
すると…
「あぁ~~~っ! もぅっ、 分かったわよっ!」
と、ジュリア姉様は半ばキレながらも本音を吐露する。
「確かに私はランディの事を気に入ってるわよっ! ジェニファーと一緒に鍛練してた頃から見てるし、彼の成長も見てたし! それに、最初の頃こそ指揮能力に問題はあったけど、私が指導したら凄い勢いで指揮能力を向上させたし! なんと言っても戦闘能力なんて、あっと言う間にジェニファーと肩を並べる… とまでは行かなかったけど、もう私じゃ手に負えないぐらいまで成長しちゃったんだから! …………惚れたって仕方無いじゃない…………」
言って俯くジュリア姉様だったが…
顔はおろか、耳まで真っ赤になっていた為、誤魔化すのは不可能だった。
父様や母様、兄様達は勿論、周りに控えていた侍従、侍女、メイドの全員に、その様子は見られていたのだから…
「ラルフ・カーマン元侯爵… いや、新たに国を興したのであるし、侯爵に返り咲くのは確実だな♪ その令息であるランドルフ・カーマンにとって、ジュリアは姉さん女房と成るのかな? 相手の意向も確認せねばなるまいが、まず纏まると思っても良かろうな♪ 目出度い事でもあるし、祝いの席を用意しようかな?」
父様は満面の笑みで話し、母様も大きく頷く。
兄様達もニコニコ笑顔だし、それは私も同じだ。
もうジュリア姉様に逃げ場は無い感じだし…
って事で、私はジュリア姉様を開き、呆れた眼で3つ言う。
「以前… 私、聞きましたよね? もしかしたらジュリア姉様、ランディさんの事が好きなんじゃないかって… その時、ジュリア姉様は『あんた、もしかして私がランディを気に入ってるとか、好きだとか思ってるんじゃないでしょうね?』とか言ってましたよね? そのワリに、ランディさんの指揮能力の足りないトコを熱心に指導したりと、妙に肩入れ… とは少しずつばかり違うんでしょうけど、熱は入ってましたよねぇ? それに──」
「それ以上言わないでっ! 言わなくて良いのっ! 確かに私はランディの事が気に入ってるわよっ! 好きって言っても良いわよっ! てか好きよっ! それが何!? 悪いっての!? 人が人を好きになるのに、グダグダ言われる筋合いはないでしょっ!? いい加減にしてよねっ!」
言ってジュリア姉様は夕食を半分以上残したまま、怒って席を立ってしまった。
ちょぉ~っとばかり、揶揄い過ぎたかなぁ~?
と思っていると、父様から無慈悲な一言が発せられる。
「ジェニファー… 今のはさすがに言い過ぎだ… 揶揄うと言う範疇を逸脱していると言っても過言はでない。由 って、国王である私の判断に於いて、今日より10日間を独房で過ごす事を命ずる!」
マヂかぁああああああああっ!
てか、何で独房!?
……いやまぁ、やり過ぎたんだろうなぁ……
私は反省し、おとなしく独房へと向かったのだった。
────────────────
「ヒマぁ~~~~~~………………」
独房に入って一夜明けた。
とにかく私はヒマを持て余している。
そんな私が暇潰しにする事。
それは筋トレと柔軟、それと素振り。
まぁ、趣味みたいなモンだしな。
私は朝食を済ませると、30分程度食休みしてからトレーニングを開始する。
まずはスクワットを1000回。
これには1時間ぐらいを要する。
30分毎に巡回に来る監視兵は、最初の巡回時には『何をやってるんだ…?』と訝し気な眼で見ていたのだが…
2回目の巡回時には『まだ続けてるのか…?』と、驚愕していた。
スクワットが終わると、次は倒立プッシュアップ。
両腕を肩幅より少し広げ、逆立ちしたまま額を床に付くまで曲げてから伸ばす。
これを連続100回。
勿論、その間にも監視兵は巡回に来る。
やはり驚いた表情で私を見ていた。
次は、ちょっと高い位置に在る〝鉄格子〟の嵌まった窓の枠に手を掛けての懸垂。
これも連続100回。
さすがに監視兵も、私の行動が理解の範疇を超えたのか声を掛けてくる。
「あの… ジェニファー殿下…? 先程から何をなさっておられるので…?」
「ん~…? 暇潰しの筋トレ。これが終わったら昼食の時間だろうから、食べ終わったら少し食休みして… 次は柔軟かな? ……あっ、素振りもしたいから、重さ10㎏ぐらいの鉄の棒を持ってきて貰える? 長さは普通の剣ぐらいで、太さは私が握れるぐらいのヤツで頼むわね♪」
「は… はぁ… 承知しました…」
困惑しながらも監視兵の兄ちゃんは、昼食と共に私がリクエストした鉄の棒を持ってきてくれた。
うんうん、長さも重さも問題無し♪
まぁ、重さを調整する為か、握り以外の部分が太くなってるけど、重さが希望通りなら大丈夫だな♪
私が鉄の棒を受け取り、軽々とブンブン振り回す様子を見た監視兵の兄ちゃんは、首を傾げながら去って入った。
まぁ、元ベルムート王国の王宮で過ごしていた時代は、主に自室で行っていた鍛練だからなぁ……
監視兵の兄ちゃんは勿論、王宮の警備兵ですら知らない事。
知ってるのはジュリア姉様とレイチェルさんぐらいだろうからなぁ……
そもそも王族…
それも王女が筋トレだの柔軟だの、ましてや10㎏もの鉄の棒を使って素振りするなんて、夢にも思わないだろうからなぁ……
ま、そんな事はどうでも良い。
私は最強・最高の剣士を目指す為、この独房生活と言う〝自由を謳歌出来る時間〟を如何に有意義に使うかが重要なのだだだ~っ!
────────────────
期日の10日が過ぎ、私は晴れて独房から出所?
いや、開放?
まぁ、どっちでも良いんだけど、一部の監視兵や巡回兵が『お勤め、ご苦労様でした!』とか言って見送るのは止めろ!
私はム所から出てきた〝○っちゃん〟ぢゃないぞ!
とか思っていたのだが…
私を出迎えてくれたのは、父様、母様、兄様達に姉様。
そしてランディさん、レイチェルさん、ミハエルさん、ミーナさん。
ついで(?)にマニエルさんと、その友人達。
更に彼等の配下達。
総勢3000名近く。
何なんだよ、この数はっ!
私は893の親分ぢゃないってのっ!
「はぁああああああ…… これだけの出迎えは、ある意味で嬉しいですけど… 各国との国境線での防備は大丈夫なんでしょうね? もし、万が一にでも問題が起こっている様なら私…… ブチ切れますよ…?」
私が殺気を込めて全員を見渡すと…
「そ… それは問題ありませんっ! 現状、どの国との国境線でも、小さな諍いすら起こっておりません!」
「その通りです! むしろ、今ではジュリア殿下とランドルフ・カーマン侯爵子息との婚姻を祝う話で盛り上がっている状態でして…!」
なんだ…
それなら問題は……
って…
今、何つった…?
ジュリア姉様とランドルフ…
つまり、ジュリア姉様とランディさんとの婚姻……?
私が独房に入ってた10日間で、そこまで話が進んでたんかい!
いやまぁ、目出度い事ではあるんだけど……
早過ぎない!?
て言うか、婚姻の儀って言うか、その前に婚約発表ってどうすんの?
あ、既に婚約自体は発表済みですか、そうですか。
「各国に向け、ジュリアとランドルフが婚約した事は伝えてある。まぁ、さすがに全ての国が把握するまでには、もう数日は必要だろうがな。ちなみにだ、ジュリアとランドルフの婚姻には1ヶ月の猶予を設けておる。何の問題も無く、ジュリアとランドルフの婚儀は恙無く執り行われる事だろう」
そして1ヶ月後、ジュリア姉様とランディさんは目出度く結婚。
ランディさんの目が泳いでいたのはともかく、大勢の人から祝福されてジュリア姉様とランディさんは、目出度く夫婦となったのだった。
ランディさん、これからジュリア姉様の尻に敷かれるんだろうなぁ……
気を強く持てよ…?




