第72話 追い詰め(?)られるジュリア
「やはり、今回の戦… いや、大戦の立役者であるジェニファー殿が新たな国王、女王となるのが妥当ではありますまいか!?」
ある国の国王が声高に言う。
「然り! 勿論、ベルムート王国の国王であったジョージ・ベルムヘルム殿や、ご子息のジャック殿・ジョセフ殿が相応しくないと言っているのではありません。ただ、ジェニファー殿の功績が、お三方に比べて大き過ぎるのです」
と、別の国の宰相がフォロー(?)する。
「ジュリア殿の活躍も聞き及んでおりますし、それはそれで素晴らしいと思います。ですが、やはりジェニファー殿の活躍や発想に比べると…」
「ですな… いや、ジュリア殿の活躍も素晴らしいと、誰もが認めております。しかしながら、どうしてもジェニファー殿の功績が…」
とまぁ、こんな感じで会議は終始、父様、兄様達、姉様を褒めようとするのだが、最後は私の功績が勝っているとの事で、どの国の国王も宰相も、私を国王に推しつつも父様、兄様達、姉様をフォロー(?)する台詞が飛び交う混沌状態…
当事者である私は勿論、側近として参加してくれているランディさんとレイチェルさんも、ゲンナリしていた。
そんな中、業を煮やしたのか父様が…
「皆様方の意見は解りました。ですが、ジェニファーが国王… 女王としての立場を望んでいるかは、本人に確認せねばなりますまい。違いますかな?」
と、周囲を見渡しながら問い掛ける。
すると…
「ま… まぁ… それは確かに…」
「ジェニファー殿が王の地位を引き受けるかは、ジェニファー殿が決める事ではありますな…」
「我々が無理強いするのは違いますな…」
と、100%納得したとは言い難いが、一定の理解は得られた様だった。
父様、ナイス♡
そこで私は立ち上がり、自身の考えを述べる事にした。
「皆様が私を新たな国の国王… 女王に推して下さった事には感謝致します」
そう言うと、私を国王に推薦した面々は歓喜の表情を浮かべる。
しかし…
「ですが、私は王に成る気は微塵もありません。私の夢は〝最高・最強の剣士〟に成る事であり、国王に成る事ではないのです! 私を褒め、国王に推して下さった皆様には申し訳ありませんが… 私自身は、国王には父様… ジョージ・ベルムヘルムに成って頂き、ジャック兄様とジョセフ兄様には補佐に就いて頂きたい… そして父様の治世を学んで欲しい… その上で父様が引退する際、相応しい方を次期国王に任命する… それが、本当に良い判断だと私は考えます」
ザワつく会議室。
更に私は話を続ける。
「私が思うに、各国の皆様は新たに興った我が国… まだ正式な名前は決まってませんが、この国は各国と友好な関係を築けると思っております… まさかとは思いますが、新たに興ったばかりの国だからと、侮ってはいませんよね…? 皆様ご存知とは思いますが、私は敵対する国に対しては一切容赦しません。まぁ、それは〝対アンドレア帝国戦〟での私の戦術・戦略でご承知の事とは思いますが…」
私が殺気を込めた眼で各国の国王や宰相を睨み付けると…
「そ… それは勿論! 私共はジェニファー殿… いや、ジェニファー様の国に喧嘩を売る様な真似はしないと誓いましょう!」
「我が国も誓いましょうぞ! 友好国として、共に発展していける様、お互いに切磋琢磨していければと心より願っております!」
等々…
全ての国の国王や宰相から、本音だか御為倒しだか判らない、適当とも言える言葉を貰って会議は終了したのだった。
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「さて… 各国の国王や宰相達の言葉… お前達は、どう思った?」
夕食の席で、父様が私達全員に聞く。
私は敢えて沈黙。
最初に口を開いたのはジャック兄様。
「完全に信用するのは危険かと… 新たに興した我が国に何かあれば、攻め込んで領土を掠め取ってやろうと思っているのではないかと…」
続いてジョセフ兄様が言う。
「私もジャック兄上の言う通りかと… 真に信用出来る国は、片手で数えられる程度と愚考致します。安心するのは、時期尚早かと…」
次いでジュリア姉様が言う。
「そこまで他国が信用出来ないってんならジェニファーは勿論、ランディ、レイチェルを含む、ジェニファーが信用してる連中を責任者に据えた軍隊を、各国との国境に配備しておけば良いんじゃないかしら? その中でも特にヤバそうな国に対してはジェニファーが担当。レイチェルには2番手、ランディは3番手って感じで配備すれば、そうそう簡単には手出ししようとは思わない筈よ? その次はマニエル、ミハエル、ミーナってトコね。彼等は諜報活動中にも長けているし、不穏な動きがあれば即座に対応するんじゃないかしらね? で、その次はマニエルの友人かな? マニエル、ミハエル、ミーナ程ではないにしろ、そこそこ諜報活動中に長けてるみたいだしね。こんな感じに配置しておけば、最悪の事態にはならないと思うわよ?」
完璧と言っても良いんでないかい?
父様の表情を見ても、納得と言った感じで何度も頷いている。
ここで私は初めて口を開く。
「私もジュリア姉様の案に賛成です。その方が、新たに興した国の安定にも繋がると思いますし、私が国王… 女王に成るより遥かに建設的な意見だと思います」
ホクホク笑顔でジュリア姉様の案を推す私だったが…
ジュリア姉様が気になる言葉を発する。
「ただ… その場合、気になるのはランディに任せる地域ですわね…」
その言葉に父様が反応する。
「ん…? ランディ…? 確か、ラルフ・カーマン元侯爵の子息、ランドルフ・カーマンであったな? 彼は今回の戦で数々の功績を挙げ、指揮官としても優秀であったと聞いているが?」
父様の意見に対してジュリア姉様は腕を組み、不満気な表情で言葉を発する。
「えぇ… 確かにランディは良い功績を挙げましたわ? けど、それらは自分で言うのも何ですけど、私が色々と指導してあげたからと言っても過言ではありません。これは、ランディに聞いて頂いても構いません。なので、ランディが赴任する場所に、私をランディの指導役として派遣して下さいまし!」
なんだよ…
なんだかんだ言ってるけど、実はジュリア姉様、ランディさんの事が気になってる…
って言うか、本当は好きなんじゃねぇの?
私が好奇の眼をジュリア姉様に向けると、それに気付いた姉様が私を睨み付ける。
「なによジェニファー… その眼は…? あんたまさか、私がランディの事を好きだとか、まだ思ってるワケ…?」
「だぁってぇ~♪ ジュリア姉様、何かとランディさんの事を気に掛けてるじゃないですかぁ~? ランディさんの指揮官としての弱点とか欠点、誰よりも正確に見抜いてたでしょ? その上で戦況や状況を見て勉強させたり、的確な指導もしてましたしね♪ その後、ランディさんが指揮してる時も、しょっちゅう彼の側に居て質問に答えたり心構えを説いたりしてたじゃないですかぁ~♪ その上で、さっきの『ランディが赴任する場所に、私をランディの指導役として派遣して下さいまし!』って台詞ですからねぇ~♪ 今更ランディさんの事を『何とも思ってない』なんて、ちょっと苦しいんじゃないですかぁ~?」
前に聞いた時は否定されたが、私はその態度を照れ隠し、あるいは誤魔化しと見ていた。
なので、戦場でのランディさんに対する態度に加え、さっきの姉様の台詞を繰り返して強調し、逃げ場を無くしてやった。
父様、母様、兄様達もジュリア姉様に注目する。
平民に堕ちていた時の習慣で、給仕をする役割以外の侍従、侍女、メイドも食事を共にしている上、給仕担当の者は私達の回りに勢揃い。
この場に居ないのは、警備の兵と料理人達ぐらい。
ちなみにだが、夕食は始まったばかりで誰もが殆ど…
精々3~5口程度しか口にしておらず、満腹になったからと誤魔化して席を立つのは難しい状態。
周囲の視線を一身に浴びるジュリア姉様は…
「あぅ… それ、は… その… ラン… ディは… 自身で戦うのは… その… 上手いけど… 分隊の指揮は… 上手くないから… 今回の場合も…」
「それ、ジュリア姉様が直接指導したり、戦術とか戦況に関して質問したりして勉強させてましたよね? まぁ、それは問題ありません。実際、ジュリア姉様がランディさんを指導した後、ランディさんの指揮官としての能力が劇的に高まったのは事実ですし、その後の戦闘でも指揮官として充分過ぎる能力を発揮してくれましたから。にも関わらず、何故『ランディが赴任する場所に、私をランディの指導役として派遣して下さいまし!』なんて言ったんですか? 今のランディさんの指揮官としての実力なら、わざわざジュリア姉様が指導役・補佐として出向く必要は無いと思いますけど?」
しどろもどろのジュリア姉様に、私は一気に畳み掛ける。
すると…
「あぁ~~~っ! もぅっ、 分かったわよっ!」




