第71話 アンドレア帝国の終焉。そして…
私達は勢いに乗り、一気にアンドレア帝国の王都アドルを陥落させる事に成功。
そのまま王宮へと攻め込む。
…が、ここでも兵士の抵抗は形だけ。
殆どの兵士は2~3回刃を交えると、あっさりと降伏する。
「マジで戦ってるフリだな… 王宮って言うか国王を守る気、無いんじゃないか?」
呆れた様にランディさんが言うと、ジュリア姉様も呆れた様に言う。
「ランディの言う通りね。警備兵の全員に、やる気が全く見られないわね。もう、アンドレア帝国の誰もが、国王を見限ってるんじゃない?」
まぁ、そうだろうな。
私達が王都に食料が入らない様に画策しても何の対策も講じず、自分達王族は普段と変わらない生活を続けてた。
貴族連中の食事量は多少減ったが、それでも毎日3食摂れていた。
が、平民は勿論だが、貴族ではない警備兵や一般の兵士は満足な食事が摂れていないのは明白。
そんな不満が溜まりに溜まった兵が、元凶と言って良い国王を守る為に命を懸けて戦うだろうか?
答えは否。
だから、彼等は後からグダグダと上役だの貴族連中だの、場合に拠っては国王から文句を言われた時に…
『いや、私達は攻めてきた敵に対して対応し、敗れたとは言え刃を交えました』
とでも言う為だろう。
まぁ、実際に刃を交えてたし、嘘ではないから私達が証人として証言してやるのも問題は無い。
それはともかくとして、やらなければならない事は残っている。
「この状態なら、私達の勝利は間違い無しですね。でも、まだアンドレア帝国国王カールを捕縛出来ていません。国外に逃したりしては、後々面倒です。王宮内は勿論ですが、王都アドル内部だけでなく、元アンドレア帝国の領地の全てを隈無く捜索! 絶対にカールを逃してはなりません! 何としてでもカールを含む王族を捕縛し、王都民の前で断罪しますよ!」
私の鼓舞に、多くの兵達は「「「「おぉぉおおおおおっ!!!!」」」」と気勢を上げていたのだが…
「これって間違い無く… て言うか、少なくとも国王の首を刎ねるのは決定事項なんだろうな…?」
「そりゃまぁ、前アンドレア国王と違って私達みたいな元・貴族は勿論、ジェニファー様やジュリア様を含めた元・王族への優遇措置を廃止… 職業に就く事さえ自力で行う事を強制されましたからね… さすがにその扱いには各国の平民達も、元とは言え自国の王族に対して無礼が過ぎると怒っていたと聞き及んでいますよね… まぁ、国王や貴族が善政を敷いていた国に限ってだとは思いますけど…」
ランディさんが疲れた様に言うと、レイチェルさんが冷めた口調で淡々と言う。
いや、どっちも間違いじゃないんだけどね…?
と、思ってたら、更にジュリア姉様が続ける。
「2人の意見は当然だし、否定する材料は無いわね。それに、ランディの想像は間違ってないと思うわよ? 後顧の憂いを絶つ為にも、カールを断罪… 首を刎ねるのは当然の判断でしょうね。 まぁ、それだけじゃないと思うけど…」
ジュリア姉様の最後の一言に、ランディさんが反応する。
「ジュリア様、それだけじゃないと言うのは、何なんですか? そりゃ、ジュリア様の考えは間違ってないと思いますよ? 後顧の憂いを絶つ為にも、カールの断罪… カールの罪を暴いた上で首を刎ね、我々の正当性を主張する事が重要なのも解ります。でも、それ以上カールに何かする必要、あります?」
聞くランディさんに、ジュリア姉様ではなくレイチェルさんが言う。
「何かする必要があるからこそ、カールを捕縛する為に私達が動いてるのではなくて? 現状、まだカールを捕縛出来てないのは事実ですけど、ハッキリ言って、それも時間の問題ですわよ? グダグダ言ってる間に、カール捕縛の報告が…」
と、レイチェルさんが冷静に言っていると…
「アンドレア帝国国王、カールを捕縛しました!」
と、王都周辺を探索していた部隊の一つが、カールの全身を縄でグルグル巻きにして連行してきた。
連行と言うか、まるで丸太みたいに運ばれてるし、首から下が全部縄で覆われており、まるで縄の塊から首が生えてる様にも見える。
そんなカールに、ジュリア姉様は言葉を掛ける。
「カール… 貴方は私達が王都に食料が入らない様に画策し、更に王宮や街の食料庫を焼いたにも関わらず、自分達王族だけは贅沢な食事を摂り続け、民を苦しめましたね?」
すると、カールは国王として何の自覚の無い言葉を発する。
「はっ? 何を甘っちょろい事を言っておる! 国王である私が満足な食事を摂れなければ、部下達に的確な指示も出せないであろう!? 私が貴族・大臣・平民どもに的確な指示を出す為にも、連中が私の為に食料を差し出すのは当然の事だろう! それに事実! 私の示した政策に大臣達や貴族達は従っていたし、誰も私の決定に異を唱えなかったではないか!」
ドヤって言うカールに対し、私達は勿論…
アンドレア帝国… いや、今となっては元アンドレア帝国と言うべきか…
ともかく、その元アンドレア帝国の貴族達、大臣達は大きく溜め息を吐き…
「私達は何度も陛下… いや、カール殿に進言致しましたな…」
「そうですな… まぁ、一度として聞き入れては貰えませんでしたが…」
「確かに… 我々が『それでは民の反感を招きます』『その様な事、民は納得致しません』と、幾度となく反対しましたが…」
「えぇ… その度に陛下… 元・陛下は『今は平民の事など放って
おけ! 現状を挽回しさえすれば、学の無い平民など簡単に我が策が正しかったと納得しおるわ!』と、言っておられましたな」
「私もですが、宰相閣下も仰っておられましたな… 『民あってこその大臣、民あってこその貴族、民あってこその王族なのです。その民を軽んじてはなりません』と… しかし陛下… いえ、貴方は『逆だ! 大臣あってこその民、貴族あってこその民、王族あってこその民なのだ! 我々が平民どもの生活を支えてやっているのだ! 平民どもが我々に税を納めているのも、我々に生活を保護して貰っている感謝の証し! 我々失くして生活出来ないから、感謝として税を納めているのであろうが!』と…」
カールの身勝手な持論に私達は勿論、元・アンドレア帝国大臣達や貴族達も、呆れを通り越した表情を浮かべるしか無いのであった。
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そして月日は流れ…
カールは数年掛けて全国を引廻された上で公開処刑。
史上最低の『最大級の王国(帝国)を最低最悪の政策を用い、僅か数年で滅ぼした最低最悪の国王』として、その名を永久に残す事になったのだった。
その後アンドレア帝国は、国境を接している国に一部を割譲。
言ってしまえば、アンドレア帝国以外の全ての国なんだけどね…
しかし、元々デカい国だった為か、国土面積は10%程度小さくなっただけに過ぎなかった。
そして新たな国名をどうするか、新たな国王を誰にするかの会議を、各国の王(出席が無理な場合は宰相等、王の代わりが務まる者)が集まって行う事となった。
が、その席で問題が起こる…




