第65話 王宮の食料庫襲撃
ミハエルさん、ミーナさん、マニエルさんに頼み、王都周辺に展開している部隊に連絡。
王都周辺の街から王都に食料が運び込まれるのを阻止して貰う事にした。
だが、王都は王都なだけあって、すぐに食料難になる事はない。
調べてみると、王都周辺の街の備蓄食料は、住人が一年間不自由しないだけの量を確保しているらしい。
だから何?
「…と言うワケで、王都に備蓄されている食料を焼こうと思います♪」
私はニコニコ笑顔で宣言する。
すると、ジュリア姉様、ランディさん、レイチェルさんは、ジト目で私を見ながら言う。
「何を楽しそうに言ってんだか…」
「まぁ、ジェニファー様なら、そっち方面を狙うだろうとは思ってたけどな…」
「そうですわね… ランディが考え付く程度ってのが拍子抜けですけど、確かに効果はあるでしょうね」
レイチェルさんは最初の一言を発した後、ランディさんを冷めた目で見ながら言ったのだった。
同じ事を考えてたって事かな?
てか、この状況なら他に打つ手は無い…
とまでは言わないが、効果が高くてリスクが低い方法ってなれば、これが最善に近いだろう。
「で? 王都に備蓄されている食料を焼くって、誰が? どうやって?」
私の案に、ジュリア姉様が疑問をぶつけてくる。
しかし、私は…
「そんなの、私に決まってるじゃありませんか」
と、あっさり答える。
「はぁっ!? まさかと思うけど、あんた1人でやる気!?」
「当然ですよ♪ 厳戒態勢とも言える王都に潜入、食料貯蔵庫を探し出して食料を焼く。 私以外に、誰がそんな事出来ますか?」
私がニッコリ笑って言うと、3人は腕を組んで考える。
そして…
「確かに… そんな事が出来るのって、あんたしか考えられないわね…」
「だよなぁ… ジェニファー様以外に、そんな事が出来るワケ無えよなぁ…」
「そうですわね… こればっかりはジェニファー様に任せるしかないでしょうね…」
と、完全に私1人に任せる空気になったのだった。
少しは手伝おうって気にならね~のか、テメー等…
────────────────
夜になり、私は1人で王都の街に侵入していた。
マジで私だけにやらせやんの…
別に良いけど…
侵入の方法は単純。
以前、カール襲撃作戦の時の逃亡方法と同じく、街の外壁と近くの木を交互に蹴り上がるだけ。
外壁の上に登り着いた私は、外壁の上を移動しながら警備の薄い箇所を探す。
が、さすがに厳戒態勢なだけあって、なかなか警備の薄い箇所は見付からない。
それでも外壁の上までは気にしないのか、誰も私に気付かない。
まぁ、仮に見上げて私に気付いたとしても、ちょっと大きな黒猫が外壁の上を歩いてるとしか思わないだろう。
なにしろ今の私は黒装束に身を包み、四つん這いで移動しているのだから。
腰に刀を差しているが、ピンと立てた尻尾に見えない事もない。
小柄な身体が幸いしたな。
…あんまり嬉しくない…
それはともかく、私は警備の薄い箇所を探して外壁の上を這いずり回る。
そうして1時間程移動すると、不意に警備の気配が増える。
なんだ…?
私は意識を集中し、周囲を見渡す。
…やはり警備が厚い。
何故だ…?
罠でも張ってるのか…?
いや、ここは…
王宮… だよな…?
なるほど… だから他の外壁に比べて警備が多いんだな…
しかし、だからと言って王宮に潜入しないワケにはいかない。
王都の備蓄食料を焼き討ちする以上、王宮の食料庫を放置する事は出来ないからな。
私は意を決し、比較的警備が薄いと思われる王宮の裏手へと進む。
十数分後、私は王宮の裏手に到着した。
思った通り、多少ではあるが警備が薄い。
本当に多少だけどな…
だが、私にとっては充分だ。
私は外壁から王宮の窓に飛び付き、ソッと開ける。
カギも掛けていないとは無用心だな。
まぁ、前世でもマンションなんかの3階より上の階では窓にカギを掛けない家庭が多いと聞いていたし、この世界でも同じ様なモンなんだろう。
知らんけど…
とにかく私は侵入した部屋から廊下の気配を探る。
すると、人の気配は感じるが、強者の気配はまるで感じない。
どうやら内部に侵入する者の事までは考えていない…
いや、侵入されるとは考えていないのだろう。
王宮内部を警備する者は、それほど手練れてはいない様だ。
まぁ、手練れの者も居るんだろうが、そんな者がゴロゴロ居るワケでもないからな。
で、今の王都の状況を考えると、王宮で手練れの者が集まってるのは食料庫と思われる。
そう考えた私は、意識を集中して強者の気配を探る。
侵入したのは4階だが、この階には強者の気配は全く感じない。
まぁ、こんな上階に食料庫なんか無いだろうから、当然っちゃ~当然かな?
私は3階、2階へと降りながら気配を探るが、やはり強者の気配は感じない。
いや、感じる事は感じた。
しかし、それは国王のカールや妻、子供達の警護の兵士の気配であって、食料庫を守る警備の兵士の気配ではなかった。
なんで分かるかって?
その気配は少ない上、全く動かないんだよ。
食料庫は大きいから警備の人数も多く配置されてる筈だし、そうなると周囲を見回す必要からも一ヶ所に留まるヤツと、警戒の為に動き回るヤツが居る筈だからな。
そうして私が目を付けたのは地下。
私は通気孔に入り込み、地下へと降りる。
しばらく通気孔内を徘徊し、食料庫と思しき部屋の前に着く。
ビンゴかな…?
換気口から覗き見た感じでは、明らかに警備の兵士が多いし、雰囲気からも手練れ揃いの様だ。
出入口の扉の前に4人。
廊下には目付きの鋭い兵士が何人も歩いている。
これだけ厳重に警備しているのだから、まず間違いなく食料庫だと見て良いだろう。
私は更に通気孔内を這いずり、食料庫内部へと侵入。
一ヶ所だけ在った換気口から倉庫内へと降りる。
「ふう… やっぱりここが食料庫でしたか… それにしても、この量… 国王と妻子だけの量にしては多過ぎるでしょう… ここに在るだけで、何年食べられるんだか…」
1日3食に加え、おやつに夜食を食ったとしても、数年は困らない量じゃないか?
平民は満腹になるまで食おうと思ったら、1日1食にしなきゃいけないってのに…
なんかムカつく…
私は背中に背負ったリュックから油を取り出すと、まずは倉庫の中央に撒き散らす。
そして次に、倉庫の外壁に沿って満遍なく油を撒いていく。
最後は中央の油と外壁に沿って撒いた油を繋ぐ様に、放射線状に油を撒く。
これで準備は調った。
私は換気口から通気孔へと入り込み、火を点けた木片を食料庫内へと投げ入れる。
ぼうっ!
火は油に引火し、瞬く間に燃え広がる。
通気孔内に火や煙、熱が入ってきては堪らない。
特に煙。
煙を吸って一酸化炭素中毒にでもなったら…
一酸化炭素の濃度次第では、一瞬の内に失神→炎を撒かれて焼死。
下手すりゃ炎に撒かれる前に、重度の一酸化炭素中毒で死亡だ。
私は換気口の上にリュックを置き、少しでも逃げる時間を稼ぐ。
逃げる為に通気孔内を移動する音なんか気にしない。
音で侵入がバレようが、倉庫内の火事に気付いた警備兵は、私に構ってる場合じゃなくなるだろうからな。
案の定、通気孔内を移動する音で私の侵入に気付いた警備兵は、通気孔内部を移動する私に対して剣を突き刺そうとするが、ゴキブリの如くシャカシャカ這いずり回る私を正確に捉える事は出来ない。
また、食料庫の火事にも気を取られ、私だけに集中する事も出来ない様子。
そんな状況で、私を仕留める事など不可能。
結果的に私は逃げ切る事に成功し、私を追い掛け回していた分だけ消火が遅れた事もあり、王宮に備蓄されていた食料は全て燃えてしまったのだった。




