第55話 対アンドレア帝国、開戦!
「まったく… 一番肝心な事を伝え忘れるなんて…」
「そんなに怒るな、ジェニファー。長期の旅… それも、彼奴等だけの旅は初めてで、少々浮かれておったのだろう」
怒る私を宥めようとするお父様だが…
「それ、私達もですけど…?」
「そ… それはまぁ… そうなのだが…」
私が反論(?)すると、ランディさんとレイチェルさんは苦笑しながら頷き、お父様は困った様な表情で何も言えなくなる。
ちなみに、何故ランディさんとレイチェルさんが我が家に居るかと言うと…
私の率いる分隊、ランディさんの率いる分隊、レイチェルさんの率いる分隊との連携訓練の為だ。
開戦までの半年間で、ジェニファー軍混成部隊(苦笑)として敵を圧倒しなければならないからだ。
まぁ、圧倒する必要があるのかと言えば、無理してまで圧倒する必要は無いのだが…
やっぱり圧倒出来るなら圧倒したいからなぁ…
そんなワケ(?)で、私達は兄様達と姉様が戻るまでの間、徹底的に連携を強化する訓練を行ったのだった。
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「「「ただいま~…」」」
3人がヘロヘロになってバルバッツァに戻ってきたのは、それから5ヶ月後の事だった。
「随分長かったですね… 開戦に間に合ったから良いですけど…」
私が3人をジト目で見ながら言うと…
「そう言うなよ… これでも急いで各国を回ったんだから…」
「そうだよ… 伝言を伝え忘れた事を謝罪して、改めて開戦のタイミングを説明してたんだから…」
「ギリギリだったわよ… 最後の国なんて、伝言を伝えた翌日にジェニファーからの手紙が届いたんだから…」
疲れが極限に達しているのか、半ば虚ろな感じでブー垂れ(?)る3人。
だが…
「自業自得ですけどね…」
私は一言で言い訳(?)を粉砕する。
「ジェニファー様… 言いたい事は解りますけど、辛辣過ぎますわよ…」
「あぁ、もう少し労いの言葉を掛けても良いんじゃねぇか…?」
「ジェニファー、レイチェル君とランディ君のの言う通りだぞ? 確かに自業自得かも知れんが、少しは3人を労ってやりなさい」
「そうよ、ジェニファー? 間に合わなかったのなら責めるのも解るけど、間に合ったのだから良いんじゃなくて?」
ランディさんやレイチェルさんだけでなく、お父様やお母様まで私を非難する。
何故だ…?
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アンドレア帝国との開戦の日、来る!
正に今日、先に参戦する国は帝国に対して宣戦布告。
2~3日遅れて参戦する国も、既に帝国に対する参戦準備は調っている筈だ。
「ようやく待ちに待った日が来ましたね♪ 私達も国境に向けて進軍しますよ!」
「「「「「おぉおおおおおおおっ!!!!」」」」」
私達はバルバッツァから一番近い、ストレイツ王国との国境に向かう。
ストレイツ王国と戦う帝国軍を、背後から襲う為だ。
「何でストレイツ王国には分隊を駐留させないのか不思議に思ってたんだけど、挟撃するからだったからか…」
「まぁ、ジェニファー様の事ですから、何らかの考えがあっての事だと思ってましたけど… さすがに挟撃するとは思いませんでしたわ…」
ランディさんが言うと、レイチェルさんも感心した様に応える。
いやまぁ…
単に帝国側のバルバッツァから一番近い国だし…
分隊を駐留させて正面から戦うより、挟み撃ちにした方が簡単に勝てると思ったからなんだけどね…
「そんな理由かよ…」
「感心して損した気分ですわ…」
2人が言うと、各分隊の隊員達もウンウンと頷く。
「別に良いでしょ~がっ! ラクして勝つのと、生きるか死ぬかの戦いの末に勝つのと、どっちが良いと思ってんですかっ!」
「そりゃまぁ… どっちかって言われたら…」
「ラクして勝つ方を選びますけど…」
私が半ギレで叫びながら聞くと、2人は迷いながら答える。
各分隊の隊員達も、各々顔を見合せ頷き合う。
「そもそも緒戦から苦戦する必要なんか無いでしょう!? 他の国の戦闘がどうなるかは判りませんけど、少なくとも私達は帝国を圧倒する必要があるんです! 帝国を倒し、新たな私達の国を興すんですから!」
私の『新たな国を興す』の一言に、ランディさんとレイチェルさんは勿論、分隊員の全員に闘志が漲る。
「そ… そうだったよな! おっしゃあぁあああああっ! お前等、気合いを入れ直せぇえええええっ! 俺達の新たな国を造る為、死力を尽くすぞぉおおおおおっ!!!!」
「ランディの分隊に負けてはいられませんわよ! ジェニファー軍レイチェル分隊も、死力を尽くして戦いますわよっ!!!!」
…やっぱり慣れないな、このジェニファー軍って呼称は…
なんて考えてる場合じゃないか…
「ジェニファー軍ジェニファー分隊! ランディ分隊、レイチェル分隊に負けてはいられませんよっ! 一気呵成に攻め込んで、緒戦を飾るんです!!!!」
そして私達は、ストレイツ王国と戦う帝国軍を背後から襲撃。
後方──帝国側──から攻められる事など予想もしていなかった帝国軍は、まさかの事態に何の対処も出来ないまま敗北。
私達はストレイツ王国軍を国境の周辺維持に残し、アンドレア帝国の王都に向けて進軍を開始したのだった。




