第51話 意外な協力者、現る
ガリア王国に残す二隊が決まり、私が次の国へ向けて出発準備をしていると…
「ジェニファー嬢、貴殿の兄と姉を名乗る者が来て陛下に謁見しておるのだが… その様な予定は聞いておらぬが?」
と、ガリア国王の侍従長が私に割り当てられた部屋を訪ねてきた。
「私の兄と姉が、ですか…? それは私も聞いてませんが…」
私は首を傾げて考える。
兄様達や姉様が私に付いて来るとは聞いていない。
私を害しようとする偽者か?
いや、私がガリア王国でのアンドレア帝国との小競り合いに介入する事は、誰にも伝えていない。
そもそも何処の国を訪問するかさえ思い付きで決めているのだ。
となると、私の思考を読めるジュリア姉様がジャック兄様とジョセフ兄様を連れて来たと考えるべきだろう。
それも無理矢理…
「間違いなく、私の兄と姉でしょうね。私の手伝いに来てくれたのかも知れません。だとすれば、全ての国を巻き込んでの一斉蜂起、予定よりかなり早くなるかも知れません♪」
言って私は侍従長と共に謁見の間へと赴いたのだった。
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「…で? なんで御供も付けずに3人だけで? ジュリア姉様はともかく、ジャック兄様とジョセフ兄様の実力は… 言っちゃ悪いですけど…」
私が言うと、ジャック兄様とジョセフ兄様はジュリア姉様を指差し…
「3人だけの方が何かと行動が早くなるからって、ジュリアが…」
「僕も兄上も護衛は必要だって言ったんだけどね…」
と、2人は困り顔でジュリア姉様を見ながら言う。
しかし…
「そんな事言ってグズグズしてたら、ジェニファーに追い付けなくなるかも知れないじゃないですか! ジェニファー1人で部隊を引き連れて各国を巡るより、私達が協力してバラけた方が早いって言ったのは兄様達ですよ!?」
「「いや… それはそうだけど…」」
ジュリア姉様に言い返され、ハモってたじろぐ兄様達だった。
「3人が色々考えて来てくれた事には感謝します。ならば、早速部隊を分けて周辺国を巡りましょう。あ、レイチェルさんとランディさんの部隊は私と一緒に行動しますので、残りを均等になる様に相談しましょう。勿論、各国に残す部隊は二隊ずつですので、率いる部隊は偶数になる様に考えて下さいね♪」
私は余計な事を考えさせない様、一気に捲し立てる。
そして、私が渡した各部隊の詳細を記した資料を見ながら相談を始める。
「どの部隊も実力的には拮抗しているのか…?」
「多少の差はありますけど、微々たる差ですね…」
「冒険者にせよハンターにせよ、なんで最低ランクがCなのよ…?」
「Bランクも多いし、最低でも一部隊に1人はAランクが居るな…」
「どんな鍛え方をしたんでしょうね…? ジェニファーが規範になってるのは解るんですけど…」
「ジェニファー自身がバケモノだから、それを目標にする方もそうなるんじゃないかしらね…?」
「「だなぁ…」」
ジュリア姉様の意見にハモって納得する兄様達。
…って、おいっ!
今のは聞き捨てならんぞ!
「誰がバケモノですかっ! そりゃ、他の皆さんより能力が突出してるとは思いますけど、さすがにバケモノは言い過ぎでしょっ!」
私が文句を言うと、3人はジト目で私を振り返り…
「「自覚が足りないんじゃないか?」」
「自覚が足りないわね…」
と、呆れた様に言うのだった。
何故だ…?
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「よし、大体こんなモンだな」
3人が話し合って決めた部隊の割り当ては、何の面白みも無い平均的な割り振りだった。
いや、そもそも部隊の割り当てに面白みは不要だけど…
ともかく各国を巡る準備は整ったので、すぐにでも出発しようとしたのだが…
「ちょっと待ってくれ、ジェニファー! 僕達は大急ぎで駆け付けたから疲れが…!」
「そうだよ! せめて今日は休ませてくれ!」
「皆が皆、ジェニファーみたいに底抜けの体力じゃないのよ! 少しは普通の人間の事も考えなさいよ!」
「何なんですかっ、その〝普通の人間〟ってのはっ! まるで私が普通の人間じゃないみたいじゃないですかっ!」
兄様や姉様の言い方に、私は半ギレ状態で文句を言う。
が…
「ジェニファー、お前…」
「まさかと思うけど…」
「自分が普通の人間だと思ってたの? あんたが普通の人間なら、私達なんてサル同然よ!?」
と、言いたい事を言ってくれる兄様や姉様だが…
「猿ですか…? 猿の身体能力って、人間より高いんですけどねぇ… それを考えると、兄様や姉様も普通の人間より身体能力が優れてるって事ですよね? なら、やっぱり今すぐ出発しましょう♪ 人より身体能力が優れた猿なんだから、何も問題ありませんよね♪」
「「ジュリアぁああああああっ! 何を余計な事を言ってくれてんだぁああああああっ!」」
「ジェニファーぁああああああっ! 変な解釈しないでよぉおおおおおおっ!」
叫ぶ兄様や姉様を尻目に、私は黙々と出発準備を進めるのだった。
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「なぁ、ジェニファー様… ジャック様達と何かあったのか? さっきから凄っげえ睨まれてるぜ?」
「そうですわよ? お陰でジャック様達が率いる部隊、なんだか萎縮しているみたいですわよ?」
「さぁ、何故でしょうね? それより早く出発しましょう♪ 兄様や姉様とは、各国を巡り終えたら私の街で合流。一斉蜂起する日を決めて、各国に手紙で知らせる予定です。その日までランディさんとレイチェルさんは私と行動を共にして貰いますから、宜しくお願いしますね♪」
私は2人の質問をサラッと流し、今後の予定を話す。
2人は黙って頷いた。
そして私は自分が率いる軍に向き直り、腕を挙げて叫ぶ。
「ジェニファー軍、ジェニファー分隊! ラーマス王国に向けて進軍開始!」
………うん………
自分で言ってて何だが、この〝軍の名前〟はかなり恥ずかしい…
私は顔が真っ赤になるのを感じながら馬に跨がり、ラーマス王国へと向かったのだった。




