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没落王女、お好きにバトる!  作者: タイガー大賀


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第33話 これって策謀ですか? 違いますか、そうですか…

「なかなか難しいと言うか、ややこしいと言うか、()(みょう)な感じですねぇ…」


 私はミハエルさんとミーナさんから届いた報告書を読みながら、兄様達と姉様に話し掛ける。


「…どうかと聞かれれば、ややこしい感じかな?」


「…いや、()(みょう)でしょう」


「…難しいんじゃないかしら…?」


 3人の反応もバラバラだな…


「比較的、長男のカルロスと次男のカールが似た様な考えを持ってるって事だけはハッキリしてますけど… 娘のカレンの考えだけが判明してないんですよねぇ…」


 私は報告書をテーブルに置き、腕を組んで考える。


「この報告書の日付は2週間ぐらい前よね? だったら、今頃はカレンの考えも(わか)ってる頃だと思うけど… 次の報告書って、いつ届くの?」


 報告書を手に取り、サッと目を通しながらジェニファー姉様が聞く。


「何か(わか)った時点で報告書を()()す様にって言っておきましたから、そろそろ作成してる頃じゃないですかね? ですから、何か(わか)った事があれば、数日の(うち)に届くと思いますけど…」


「何も(わか)ってなければ、当分は届かないって事ね…?」


 まぁ、そうなんだけどね…


(あわ)てるなよ、ジュリア。まだまだ先は長いんだからな♪」


「兄上の言う通りだぞ。僕達… と言うよりジェニファーかな? やろうとしてる事は、(いっ)(ちょう)(いっ)(せき)には()()ない事なんだからさ♪」


 兄様達に言われて、ジュリア姉様はムスッとした表情になる。


「そんな事、(わか)ってますよ… でも、やっぱりヤキモキするじゃないですか…」


 …まぁ、気持ちは(わか)るな。


「誰を倒して国を(おこ)すかで、気分も変わってくるでしょう?」


 そっちでヤキモキしてるんかい…

 まぁ、娘の考えが(わか)らないから、気持ちは理解出来るけどな。

 とにかく私達にできる事は、ミハエルさんとミーナさんからの報告を待つ事だけだな…

 もどかしいが、こればっかりは仕方が無い。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「娘のカレンは息子2人に比べてマトモだな… 1人だけ若いってのも関係してるのかな…?」


「そうねぇ… 息子達は40歳を超えてるけど、カレンは20歳前? 随分と差があるわねぇ…」


 王宮の屋根裏で相談するミハエルとミーナ。


「カレンの母親は、息子達とは違うんですよ。息子達の母親は、カレンが生まれる3年程前に病死しています。カレンの母親は()(さい)ですね。60歳近くなってから生まれたカレンを、国王は(でき)(あい)していましたので… だからでしょうか… カレンは国王の考えに、かなり近い考えを持っている様ですね」


 一緒に潜入したマニエルが、2人の疑問に答える。

 調査途中ではあるが、カレンの『侵略した国家への対応』は国王の『(ゆう)()政策』に近い考えとの結論だった。

 女だからか、男である国王よりも更に(にゅう)()と言っても良かった。

 侵略した国家の王族や貴族は、現段階では全てが平民に落とされている。

 が、カレンは『(へん)(きょう)貴族』の地位なら与えても良いのではないかとの考えだった。

 それは、現状よりも(もと)王族や(もと)貴族の立場が良くなる事になる。


「カレンが次期国王になる事だけは、絶対に阻止しないといけませんね。そんな事になったら、ジェニファー様の計画しているクーデターが起こせませんよ…」


「そうよねぇ… でも、今のままだと国王自身が次期国王にカレンを()しそうよねぇ… いくら息子達でも、国王である父親の決定には(さか)らえそうにないかも…」


 ミハエルとミーナの意見に、マニエルは考えながら答える。


「仮にカレンが次期国王になった場合… 少なくとも後を()いだカレンが(ほう)(ぎょ)するまでの(あいだ)、クーデターを起こせなくなる可能性が高いですね… カレンの政策にも()りますが、現時点でのカレンの考えを思うと… 侵略した国家の王族や貴族に対する(たい)(おう)は、現状より良くなりますよね… そうなると、クーデターを起こす(たい)()(めい)(ぶん)が無くなってしまう可能性は否定出来ません…」


 ミハエルとミーナは(あお)()める。


「じゃ、カレンが次期国王になったら数十年はクーデターが起こせないって事!?」


「いや… 数十年どころか、俺達が生きている(あいだ)は起こせないかも… カレンが20歳だとしても、ミーナやジェニファー様とは5歳しか変わらない… 5歳なんて年齢差、()()()()寿()()()()()()()()()なんて(わか)らないじゃないか…」


 ()()でもカルロス(長男)カール(次男)(あと)()ぐ様に()(ろん)を操作する必要があると、3人は心に(ちか)ったのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 先の報告書が届いてから2週間が過ぎ、待望の最新情報が私の元に届けられた。

 私が報告書を開くと、ジュリア姉様が私を()退()ける様に読み始める。

 おいおい…


「…マズいんじゃない? 報告書(これ)を読む限り、(げん)国王の考えに近いカレンが次期国王に()る可能性が高いわよ…?」


 ジュリア姉様が冷や汗を流しながら言う。


「う~ん… 確かにジュリアの言う通りかもな… クーデターを考えてる僕達はともかく、他の(もと)王族や(もと)貴族はカレンの政策を()()するんじゃないか?」


「ですよねぇ… ジェニファー、お前はどう思うんだ? 下手すると、クーデターなんて()()()()()だぞ?」


 豊臣秀吉の()(せい)の句かよ…


 (つゆ)と落ち (つゆ)と消えにし 我が身かな (なに)()のことも ()()()()()


 知る人ぞ知る、有名な辞世の句だな。

 まぁ、()()()()()()ってのは、知ってる人は知ってるけど、知らん人は知らんって事だけど…

 そう言う私も、たまたま知ってるだけに過ぎない。

 意味は知らん。

 なんとなく(わか)る気はするけど、無理に知りたいとも思わないし、知ったから何なんだって気もする。

 この世界(異世界)で豊臣秀吉の辞世の句を知ってても、何の意味も無いし…

 そもそも俳句や和歌なんて無い世界だからな…

 って、そんな事はどうでも()いんだよ。

 問題なのは、カレンが次期国王になるのを()()にして()()し、新国家を(おこ)す為のクーデターを起こせる様にするかって事なんだからな。


「確かに、今のままだとカレンが次期国王にって流れになりそうですけど… 仮に(げん)国王がカレンを()したとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()国王には()れませんよね?」


「「「あ………」」」


 私の一言(ひとこと)に、3人は顔を見合わせる。


「アンドレア帝国の貴族達は、長男のカルロス派と次男のカール派に分かれているんですよね? カレン派は居ないか、居ても少数なんじゃありませんか? 世論が誰を次期国王に望んでいるかは(わか)りません。けど、現段階では女王を望む声は()がっていない様にも思えますね。かといって、(らっ)(かん)()するのは危険ですけど…」


 更に私が続けていると、(れん)()(じょう)(たん)(れん)を終えたレイチェルさんとランディさんがリビングに入ってくる。


「なんか、ややこしそうなトコに来ちまったかな…?」


「そうみたいですわね… 私は先にシャワーを浴びてきますわ…」


「ちょっと待ったぁああああっ!」


 去ろうとする2人を私は制止する。


「レイチェルさんとランディさんの街は、誰が次期国王に()る事を望む声が多いですか?」


「へっ? 次期国王!?」


「それって… 何の話ですの?」


 なるほど…

 レイチェルさんの街もランディさんの街も、ここと同じく(へん)(きょう)だから情報が伝わってないんだな…


「実は…」


 私は2人に知り得た情報を伝え、現在の状況を説明する。


「そうだったんですのね… (げん)国王の(よう)(だい)が…」


「それで、長男と次男のどちらかを… できれば次男を次期国王にして、クーデターを起こし(やす)くしようってのか…」


「現状、カレンを()す声は()がってませんし、アンドレア帝国(この国)の貴族達はカルロス(長男)派とカール(次男)派に()(ぶん)されてる状態なんで… 普通に考えるとカレンが次期国王に()る可能性は低いですけどね」


 私の説明に、2人は考え込む。

 簡単に答えが出る問題でもないと思うけどな…


「確かに難しい問題ですわね… それにしても次期国王… できれば次男に()いで貰った方が都合が()い事だけは確かですわね…」


カルロス(長男)派の連中に金でもバラ()いてカール(次男)派に(くら)()えして貰うか? …ってのは冗談として、ミハエルとミーナ… それにマニエルと協力者達だっけ? 連中に王都の民衆を(せん)(どう)して(もら)って、カルロス(長男)派の連中から民衆の気持ちが離れていく様にできねぇかな? (たみ)の人気取りに必死なセコい貴族連中なら、あっさり(くら)()えするかもな♪」


「ランディ… 貴方(あなた)ねぇ…」


 ランディさんの(なに)()()い冗談めかした意見に(あき)れるレイチェルさん。

 だが…


「それ、採用!」


 私はランディさんの適当とも思える意見を採用。

 すぐにミハエルさんとミーナさん(あて)に手紙を書き、速達で届ける事にしたのだった。

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