第26話 お母様は、ある意味で縁の下の力持ちですね♪
「「ギルドに登録!?」」
レイチェルさんとランディさんの声がハモる。
「何か商売でも始める気?」
ジュリア姉様…
「そんなワケ無いでしょ…」
私はガックリと肩を落とす。
私が計画していた事。
それはハンターギルドか冒険者ギルドに登録し、依頼をこなして資金を稼ぐ事だ。
どちらのギルドも10歳から登録可能で、ランクを上げていけば結構な収入になる筈。
そして合宿所を建設するのが目下の目標。
そこを拠点とし、徐々に戦力を底上げし…
最終的にはクーデターを起こして新国家を建設する。
まぁ、簡単にはいかないだろうし、夢で終わる可能性は高いけど…
それでも私はベルムート王国を再興すると誓ったんだから、このまま何もせずに一生を終えるなんて絶対にしたくない!
「ま、それでこそジェニファー様だよな♪」
「そうですわね… まぁ、何年も先でしょうけど♪」
ランディさんとレイチェルさんも乗り気だな♪
「あんた達の実力だけが突出しててもダメだと思うけどね…」
ジュリア姉様…
せっかくのやる気を削がないでくれませんかね…?
「確かにジェニファーの実力は突出してるし、それに付いて行ける二人も大したモンだけどね」
「そうそう。だけど、ここに居ない元・貴族の子女達の実力は、まだまだなんじゃないか?」
いつの間にかリビングに現れた兄様達が会話に加わる。
「何を他人事みたいに言ってるんですか… 私が新国家建設の為にクーデターを起こす場合、兄様達も参加するのは決定事項なんですよ?」
「「えぇえ~っ!? 僕達もクーデターに参加ぁあ~っ!?」」
ハモるなよ…
てか、傍観するつもりだったんかい。
「当然でしょう? 勿論、前線に出て戦う必要はありませんけどね。少なくとも旗印には成って貰わないと♪」
それを聞いたジュリア姉様はニヤニヤしながら…
「あらあら… 兄様達、大変ですね♪ ま、頑張って下さいませ♪」
「そうですよ? ジュリア姉様も私の補佐として頑張って貰うんですから、兄様達も頑張って貰わないとですね♪」
瞬間、ジュリア姉様はピキッと固まり、ギギィ~っと青褪めた顔を私に向ける。
「わ… 私がジェニファーの補佐…? なんで…?」
「私を中心として新国家を興す為のクーデターを起こすんだから、兄様達や姉様が参加するのは当然じゃないですか。ベルムート王国の再興に、王族が参加しないなんて考えられますか?」
私の言葉に兄様達や姉様は顔を見合せ…
「そりゃ… まぁ…」
「そう… だけどさ…」
「い… 一体… 何をすれば…?」
と、ここまで置いてきぼりを食らっていたランディさんとレイチェルさんが手を挙げる。
「俺達がクーデターに参加するのは当然として…」
「ジェニファー様がギルドに登録すると言う事は、もしかして…?」
「強制はしませんが、そうして貰えると助かるのは事実ですね♪ お二人の実力で今から実績を積めば、成人を迎える頃には最低でもBランクには成れるでしょうからね♪ それに、私だけのハンターや冒険者としての稼ぎじゃ、合宿所の建設よりクーデターを起こす方が早くなりそうですし…」
再び二人は顔を見合せ頷きあう。
「そう言う事なら、俺も帰ったらハンター登録しておくぜ♪ さっさとランクを上げて、合宿所建設の為に稼いでやるよ♪」
「私も負けてられませんわね♪ ところでランディ? 貴方だけじゃなくて、支配した学園の生徒にもギルド登録させて、少しは稼がせなさいよ?」
「わ… 分かってるよ…」
なんかランディさん、レイチェルさんの尻に敷かれてる様な…
別に良いけど…
「私は他の元・貴族の子女達に手紙を書いてギルド登録を促しますね♪ 勿論、合宿所の話と新国家を興すクーデターの件も♪ そこからが本当の第一歩ですね♪」
意気軒昂な私達三人とは裏腹に、意気消沈している姉様と兄様達。
まさかクーデターに参加させられるとは思ってなかったんだろうけど、そうはイカの何とやら。
表現が古過ぎましたか、そうですか…
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夏期休暇も残り十日を切り、ランディさんとレイチェルさんは名残惜しそうに帰っていった。
二人を見送った私は、渋る姉様と兄様達を無理矢理ハンターギルドへ連れていき、ハンター登録を申請。
三人共、ブツブツ言いながら申請書を書いていた。
そして…
「それでは認定試験を受けて頂きますので、名前を呼ばれた方は此方の部屋へ入って下さい」
受け付けの人が言うと、三人は驚愕の表情を浮かべる。
おいおい…
そんなの、常識だろ…
そして私達は順番に認定試験を受け…
「ギリギリでEランクに受かったよ…」
「やっぱり兄上の方が強かったですね… 僕はFランクでした…」
「あと一歩でDランクだったのに… なんだか悔しいわね…」
三人共、まだまだ精進が足りないな…
「そう言うジェニファーはどうだったのよ…?」
「私ですか? 私は余裕のBランクでした♪ Aランク以上は成人しないと成れないそうなので、それが悔しいと言えば悔しいですね」
「「「……………………」」」
あ… 落ち込んだよ…
「まあまあ… 普段から鍛練に集中できる私と違って、兄様達はお父様の補佐で忙しいですし、姉様はお母様の手伝いで忙しいから仕方無いですよ」
私の慰め(?)も効果は無く、ギルド・カードが発行されるまでの間、三人はず~っと無言だった。
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「ほぅ! ジェニファーはBランクに受かったのか、さすがだな♪ だが、ランクが上と言う事は、危険も多いと言う事だから気を付けろよ?」
「おめでとう、ジェニファー♡ お父様の言う通り、無茶はしない様にね?」
お父様とお母様が褒めてくれ、更に注意も促してくれる。
「はいっ♡ Bランクに受かったとは言え、まだまだ新米ですから♪ 野生動物や魔物、魔獣とは戦った事がありませんからね。これから経験を積まなくてはなりませんね♪」
未だ姉様や兄様達は落ち込んだまま、一言も発していない。
そんなに気にしなくても良いと思うけどな…
言っちゃ悪いが、兄様達の実力はお世辞にも高くないし、姉様は私の動きが辛うじて見える程度なんだから…
「だから余計に落ち込むんだよ…」
「僕達とジェニファーの年齢差を考えてくれよ…」
「そうよ… それで実力が遥かに下なんて、落ち込んで当然でしょ…?」
ゴメン、悪かった。
だから機嫌を直してくれ。
「あらあら… そんな事を気にしてたの? でも、それは仕方の無い事よ? 貴方達、三人共ジェニファーの鍛練に付いて行けないんだから… それでジェニファーとのランク差に落ち込んでも無駄でしょう? 落ち込むより、追い付け追い越せって思わないと… 家の事は私とお父様、執事やメイド達に任せて、貴方達は前を向いて頑張りなさい♪」
お母様の言葉に、三人は顔を上げる。
そして…
「そう… だな! いつまでも落ち込んでても仕方無い!」
「ですよね! ジェニファーに負けない様、鍛練を頑張りましょう!」
「そうよね! ジェニファーの動きが見えるのは、学園でも私だけなんだから!」
お母様…
さすがに親だけあって、扱いが上手いな…
掌で転がしてるとも言うけど…
この日を境に、三人は見違える様に鍛練に励む様になったのだった。




