第24話 ガールズトーク(?)でレイチェルさんが大ダメージです♪
「そこまで警戒しなくても良いんじゃないですか? 女の子同士のちょっとした戯れじゃないですか」
明けて翌朝。
私はシンシアさんと三人で食堂に向かいながら、レイチェルさんに話し掛ける。
「でも、シンシアさんにはしてませんわよね?」
レイチェルさんは腕を組んで胸を隠し、ジト目で私を見ながら言う。
「だって、シンシアさんは私より5歳上なんですから。大きくて当然じゃないですか」
「執拗に揉むからですよ。レイチェル様から話を伺いましたが、まるで官能小説に出てくるスケベ親父… げふん、げふん!」
官能小説、読んでるんかい…
「と… とにかく! いくら同性とは言え、ジェニファー様は遠慮が無さ過ぎだと思います! 逆の立場だったら、ジェニファー様もレイチェル様の様に警戒なさると思います!」
シンシアさんの、至極真っ当な意見…
やたら慌ててるのが気になるけど…
「う~ん… それは確かに… てか、シンシアさん… 官能小説、読んでたんですね…?」
顔を真っ赤にして逸らすシンシアさん。
読んでるんだな…?
私はニィッと笑い…
「ちなみにですけど、お薦めの小説は?」
「それは当然、何と言っても『快楽の楽園』ですね♪ 情景描写が繊細かつ緻密で、まるで自分が主人公になった様な気分になれるんです♪ それが素晴らしくて、何度も読み返してます♪ 勿論、読んでいると悶々としてきますので、ついつい自分を慰め…」
そこまで言って、ハッとするシンシアさん。
「いや… その… 今の話は聞かなかった事に…」
その後の朝食では私達三人のビミョーな雰囲気に、全員から訝しげな視線を向けられたのだった。
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「なぁ、何かあったのか? シンシアさん、何か様子が変だったし… ジェニファー様とレイチェルも、何となく変だったぜ?」
「まぁ、色々あるんですよ… シンシアさん、私達より大人ですからねぇ…」
「そ… そうですわね… シンシアさん、大人ですものね…」
ランディさんの問いに、私とレイチェルさんは言葉を濁す。
私は前世で18歳だったから、当然シンシアさんが何をしていたのかは理解している。
が、今のレイチェルさんのセリフから察するに、レイチェルさんも理解してるみたいだな…
「もしかして、レイチェルさんもシンシアさんと同じ事を…?」
ランディさんには聞はこえない様に聞いてみる。
「……………!」
顔を真っ赤にするレイチェルさん。
歳のワリにませてるんだな…
「ふぅ~ん…♡」
思わずニヤける私。
「わ…! 私は… そのっ…! たまたま知る機会があったと言うか…」
大慌てのレイチェルさん。
「そ… そう仰るジェニファー様も、今の話し振りだと理解してらっしゃるのではありませんか!?」
「そりゃまぁ、理解はしてますよ? した事はありませんけどね。もっとも、レイチェルさんは経験豊富みたいですけどねぇ?」
ニヤける私。
脱力してへたり込むレイチェルさん。
話が聞こえていないランディさんは、何が何だか理解できずに困惑していた。
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「なぁ… 今朝の話、何だったんだ?」
朝の鍛練を終え、昼食を食べながらランディさんが聞いてくる。
まだ理解していない様だが、理解して欲しくもない。
そろそろ思春期に入る年頃だし、いずれ理解するだろうけど…
「まぁ、その内ランディさんも理解しますよ♪ ですから、今は忘れて下さいね♪」
「そ… そうですわね… ですので、今は理解しなくて良くってよ?」
「あ… あぁ、解った… 忘れるよ…」
私達の殺意を込めた笑顔に、ランディさんは青褪めて聞くのを止めた。
そして、鍛練を再開する時は呼んでくれと言い残し、そそくさと部屋に戻っていったのだった。
異様な雰囲気を察したのか、男性陣も食事を終えると各々の部屋へと足早に去っていった。
「…で? レイチェルさん、いつ頃からなんですか? それと、何が切っ掛けで?」
ニヤニヤしながら聞く私。
冷静さを装っていたレイチェルさんの顔が、一気に赤くなる。
「ここに残っているのは女性ばかりですし、多分ですけど私以外の全員が経験済みでしょうから、恥ずかしがる事はありませんよ? ねぇ、ジュリア姉様?」
ニヤニヤしながら聞く私の言葉に、姉様の顔もボンッと赤くなる。
「ま… まさかと思うけど…」
「だって、隣の部屋ですからねぇ♪ 王宮と違って壁が薄いですから、少し耳を澄ますか壁に耳を付ければ声が聞こえますよ♪ 勿論、魔法で聴力を上げるって方法もありますけどね♪ 殆ど毎晩、楽しんでいらっしゃる様ですけど♡」
ジュリア姉様はテーブルに突っ伏し…
「き… 聞かれてたのね…」
半分、死んでるよ…
「あ… あの~、ジェニファー様…? 私も隣の部屋なんですけど、もしかして…?」
泣き笑いの様な表情で聞いてくるシンシアさんに、私は最高の笑みを見せて頷く。
シンシアさんは完全に脱力し、殆ど椅子からズリ落ちかけていた。
他のメイドさん達も恥ずかしそうに私を見詰める。
それに私は笑顔で応える。
ジュリア姉様の様にテーブルに突っ伏す者、シンシアさんの様に椅子からズリ落ちそうになる者。
それぞれが羞恥心で脱力しまくっていた。
「あらあら… 皆さん若いだけに、お盛んですのね♪ でも、そこまで恥ずかしがる事はありませんよ? むしろ健康的だと思いますわ♪」
お母様…
それ、慰めになってませんけどね…
「ま… まぁ、お母様もこう仰ってる事ですし、恥ずかしがらなくても良いと思いますよ? 思春期なら興味を持って当然ですからね。私と同室で楽しめないんなら、言って下されば行為の間だけでも部屋から出て行きますけど?」
「あ… あからさまに言わないで下さいまし! そりゃ確かに、ここに滞在している間は自由に出来なくて悶々としてましたけど… って、何を言わせるんですかっ!」
自分で勝手に言ったんだろ…
「じゃあ、私が慰めてあげましょうか? これでも指先の器用さには自信があるんですよ?」
言いつつ私はニヤニヤ笑いながらウニウニと指を動かす。
勿論、本気で言ってるワケじゃないけどね。
それを見て顔を赤らめたレイチェルさんは、ゴクリと唾を呑み込み…
「え… 遠慮しますわ…」
頭をブンブン振って断った。
「フ~ン… それじゃ、話を戻しましょうか。で、いつ頃から何が切っ掛けで… なんですか?」
レイチェルさんは俯き、指をモジモジさせながら話し出す。
「半年ぐらい前から… その… 何かの拍子に枕の角が当たって… それが… その… 何とも言えない感覚で……… こ… これ以上は勘弁して下さいまし…!」
両手で顔を覆うレイチェルさん。
指の間から見える顔は、真っ赤だった。
話を聞いた他の皆──お母様以外──も、同じ様に真っ赤になっている。
勿論、ジュリア姉様も♪
その後、鍛練を再開した私達だったが、レイチェルさんは精神的なダメージが残っており、マトモな鍛練にならなかったのだった。




