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没落王女、お好きにバトる!  作者: タイガー大賀


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23/70

第22話 私は大きな精神的ダメージを受けるとグダグダになる事が判明しました…

 朝、私が目を覚ますと、既にレイチェルさんの姿は無かった。

 夏期休暇中だってのに、早起きなんだな…

 私はベッドから()い出し、モソモソと着替えを済ますと食堂へ向かう。

 食堂に着くと、レイチェルさんとランディさんが入り口に背を向ける様に並び、何やら真剣に話していた。


「タコなんて、どうだ?」


「確かにタコみたいですけど、タコって動きは素早くありませんわね… それに、ガードも弱そうですし…」


「それじゃあ、イカってのは…?」


「イカは素早く泳ぎますけど… タコと同様、やはりガードは弱そうですわね…」


「それなら、ナマコは?」


「ナマコは動きが(おそ)()ぎません?」


「ウミウシってのは?」


「ウミウシも動きが(どん)(じゅう)ですから、その(たと)えはイメージから離れますわね…」


 何の話だ?


「ガードが固いから、(から)を持ってるカタツムリってのは?」


「それも動きが鈍重ですわね…」


「なかなか難しいモンだな、ジェニファー様を何かに(たと)えるってのは…」


「体力、速度、柔軟性、攻撃力、防御力、魔力、全てが(ひい)でてますからね…」


 私の事かぁああああああっ!!!!


卓袱台返し(プータル・メィジャー)…」


 私の一言(ひとこと)でテーブルがクルッと半回転し…


 べしゃぁああああああんっ!!!!


 レイチェルさんとランディさんの上に落下し、二人を押し潰す。


「何だ!? 何だぁっ!?」


「何ですの!? 何ですのっ!?」


 突然テーブルの(した)()きになった二人は、何が起こったか理解できずにパニック状態。

 抜け出そうともがいているが、テーブルはビクともしない。

 何しろ私達家族と使用人達、二人を含めても余裕のある大きさなのだ。

 しかも分割機構の無い一枚(いちまい)テーブルだから、結構な重量がある。


「今の音は何ですか!?」


「何があったんですか!?」


 バタバタと音を立て、キッチンからメイドさん達が慌てて駆け付ける。

 メイドさん達はテーブルの下敷きになってジタバタする二人を見付け…


「レイチェル様! ランドルフ様! 大丈夫ですか!?」


 慌ててテーブルを持ち上げ、何とか二人を救出する。


「何故、テーブルの下敷きに…?」


「それより、こんなに重いテーブルが何故…?」


 そんな中、私の方を見る一人の人物。

 シンシアさんの目は、私に『やりましたね?』と言いたげにジト目だった。





 ─────────────────





「ジェニファー様、いくら何でもやり過ぎです…」


「そうですわよ、あんな重いテーブル… 死ぬかと思いましたわ…」


「そりゃ、俺達も言い過ぎてたかも知れないけどさ… いきなりアレは無いだろ…」


「ジェニファーって、加減を知らないのかしら?」


 ()(なん)嗷々(ごうごう)

 いや、あれだけ好き放題言われたんだから、これぐらいの意趣返しは許されて(しか)るべきなんじゃ…


「それにしても、限度を超えてますわよ…」


「普通のテーブルならまだしも、これだからなぁ…」


 ランディさんが顔を(あお)()めさせつつ、テーブルをコツコツと叩く。


「魔法を使ったとは言え、よく持ち上げられたわね…? 私も魔法には自信があるけど、さすがにコレは無理だと思うわ… どうやったの?」


 ジュリア姉様の問い掛けに、私は胸を張り…


「簡単ですよ♪ 持ち上げると言うより、回転させるイメージでひっくり返したんです♪ 私の()()、必殺『(ちゃ)()(だい)(がえ)し』です♪」


「秘技とか必殺って… それに、()()()とか(ちゃ)()(だい)(がえ)しって何なのよ…?」


 あ…………………

 この世界に無い言葉を使ってしまったぁああああああっ!

 どうする!?

 どうするぅうううううううっ!?


(ちゃ)()(だい)

 和室で用いる、足の短い食卓。


(ちゃ)()(だい)(がえ)し】

(腹を立てた者が、食事の途中で)(ちゃ)()(だい)をひっくり返す事。


 …て、解説してる場合かぁっ!

 何て説明すりゃ()いんだっ!?


「まぁ、ジェニファーの事だから、また何かの(ぶん)(けん)で読んだんでしょうけどね…」


 あ… 勝手に納得してくれたよ…

 納得してくれたんなら、それで良しっ!


「ま… まぁ、そう言う事ですね♪ 何の本で読んだかは忘れましたけど!」


「ジェニファー様の知識って、半端じゃありませんからねぇ…」


「だよなぁ… 筋力トレーニングだけでも、いろんな方法を知ってるモンなぁ…」


 それは前世で様々な本から学んだんだけどね…

 言えんけど…

 まぁ、自重トレーニングなら大概の事は自室でも可能なモノが多い。

 腕立て伏せ一つでも、様々なバリエーションが()るのだ。

 腕に高負荷を掛けたければ、逆立ちして(おこな)えば良い。


「逆立ちして腕立て伏せ!? ジェニファー様、そんな事ができるのか!?」


「簡単ですよ♪ 両手を肩幅より少し広げて逆立ちして、そのまま腕立て伏せするだけですから♪」


 言って私は壁に向かって逆立ちをする。


「あ… あのっ…」


 シンシアさんが何か言いたげだが、今は構ってられない。

 そのまま(ひたい)が床に着くまで腕を曲げてから、今度は腕が完全に伸びるまで身体(からだ)を持ち上げる。

 これを何度か繰り返しながら説明を続ける。


「更に高負荷を掛けるなら、椅子を二脚使って(おこな)う方法も()りますよ?」


 言いつつ私は椅子を二脚持って食堂の(すみ)へ移動。

 椅子の一つを食堂の隅に置き、もう一つを少し離して置く。

 離して置いた椅子が動かない様にシンシアさんに抑えて貰い、二つの椅子を使って逆立ちをする。

 やはり何か言いたげなシンシアさん。

 それには構わず、私は椅子の座面より頭が下がる様に深く腕を曲げ、そこから腕の力だけで身体を持ち上げる。


(すげ)ぇな… 腕の力もだけど、その… なぁ…?」


 私から目を()らし、何故か顔を赤くするランディさん。


「えぇ… ジェニファー様って、トレーニングの説明になると(まわ)りが… いえ、自身が見えなくなるんですのね…」


 何故かレイチェルさんは困り顔…

 私は逆立ちのままシンシアさんを見る。


「ジェニファー様… その… お()し物が…」


 言われて私は自身の姿を確認する。


「にゃぁああああああっ!!!!」


 ワンピースのスカートが(まく)れ、私は下着(パンツ)が丸出しの状態だったのだ。

 私は(あわ)てて逆立ちを()め、床にしゃがみ込む。


「み… 見えちゃってました…?」


「「「しっかりと」」」


 シンシアさん、レイチェルさん、ランディさんは声をハモらせ、()め息を()いていた。

 ちなみにジュリア姉様は、ジト目で私を見ながら無言で朝食を食べていた。

 …何か言ってくれ、悲しくなるから…





 ─────────────────





(しゅう)()(しん)が無いのとは違いますわね…」


 と、レイチェルさん。


「あぁ、かなり恥ずかしがってたからな…」


 と、ランディさん。


「一つの事に集中すると、それ以外の事は全く見えなくなるみたいね…」


 と、ジュリア姉様。


「そんな事があったんですのね? ジェニファーの悪い(クセ)ですわね…」


 と、お母様。


「まだ10歳とは言え、そろそろ淑女(レディー)としての自覚を持たんといかんな…」


 と、お父様。


「いい加減、お転婆を卒業しないとな…」


 と、ジャック兄様。


「まぁ、ジェニファーらしいと言えばジェニファーらしいんだけどね… それでも、ちょっとねぇ…」


 と、ジョセフ兄様。

 シンシアさんや執事(アラン)さん、メイドの皆さんは何を言えば()いのか(わか)らず、困った顔のまま無言で朝食を食べている。

 私はと言うと、完全に脱力してテーブルに()()し、恥ずかしさで朝食を食べる事もできずに固まっていた。

 ワンピースのまま逆立ちした私が悪いのだが、誰も()めなかったのも悪いんじゃないか?

 責任(せきにん)(てん)()ですか、そうですか…

 その日、私は一日中落ち込み、レイチェルさんやランディさんとの剣術や体術の鍛練で、初めて二人に負けまくったのだった。

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