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没落王女、お好きにバトる!  作者: タイガー大賀


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19/70

第18話 新しい国を興す第一歩は、お転婆王女の噂に隠れました

 ランディさんとレイチェルさんがそれぞれの街へ帰って半月()ったある日。

 私の通う学園は突然、数万人は居るであろう少年少女達に包囲された。


「何がどうなってるんだ!?」


「自警団は何をしているんだ!?」


「この集団は何なんだ!?」


 生徒達は勿論、教師達も(せん)(せん)(きょう)(きょう)として()(おう)()(おう)している。

 そんな中、私は一人(ひとり)のんびりと弁当(ランチ)を食べている。


「騒がしいですねぇ… 昼食ぐらい、静かに食べたいのに…」


 そんな私を見て、クラスメート達は私に詰め寄る。


「ジェニファー! 何を落ち着いてるのよ!」


「そうだよ! 落ち着いてる場合じゃないだろ!」


 この事件(?)は多分、レイチェルさんやランディさんが(かん)()してる(はず)

 だから学園を取り囲む集団の何処(どこ)かにランディさんとレイチェルさんも居る(はず)だし、私と面識があるのを知ってる連中も居る筈だが…

 さすがに気付く人は居ない様だ。

 まぁ、数万人の中からたった二人の人物を見付けるのは不可能だろう。

 それに、学園内で二人に接触したのは(わず)かな時間。

 ほんの少し会話しただけで二人は私の家に向かったのだし、半月も()てば顔を覚えてる者も居ないだろう。

 そんなワケで、教師も生徒も全員が(あお)()める中、一人(ひとり)だけ平然と昼食を食べている私の姿は()()に見えるんだろう。


「やれやれですね… 仕方無いから私が行きますか… (みな)さんは教室(ここ)で待ってて下さい」


 私は食べ終えた弁当箱(ランチボックス)を片付けると、食後の散歩にでも行くかの様に教室を出る。


「お… おい! まさか、あの集団に向かうんじゃないだろうな!?」


「いくらジェニファーでも、一人(ひとり)で行くのは()(ぼう)だろ!」


「そうよ! 確かにジェニファーは強いけど、いくら何でも相手が多過ぎるわよ!」


 ふむ…

 それなりに私を心配してくれてるみたいだな。

 でも、これがランディさんとレイチェルさんの(さく)なら何の問題も無い。

 仮に二人(ふたり)(かん)()しておらず、単に他の学園の生徒が(けっ)(たく)して攻めて来たのだとしても負ける気はしないんだが…


 (ほど)()くして私は学園のグラウンドに歩み出る。

 私はグラウンドの中央まで来ると、その場に()(おう)()ちになる。

 私の学園の教師や生徒は(かた)()()んで見守っている。

 しばらくすると、十数名の代表と思わしき集団が歩み寄って来る。

 その集団は私の前まで来ると、(いっ)せいに片膝を突いてひれ伏した。


(われ)()、ジェニファー様の(はい)()()るべく()(さん)じました! 我等は全てジェニファー様の(しもべ)()()(よう)にも、お使い下さい!」


 代表として話したのはレイチェルさん。

 大声では無いが声量は充分であり、トーンが高い事から教師や生徒にも聞こえている様だ。

 ()(とう)人選(じんせん)だな。

 ランディさんだと演技力に問題があるだろうから、(しば)()(くさ)くて(うたが)われるかも知れないもんな。


諸君(しょくん)()()に感謝します! 私の(ほっ)するは()(しゅ)(どく)(りつ)! アンドレア帝国に(しいた)げられし(もの)(たち)()て! 私達は()(だい)に向けて、新しい()(きず)くのです!」


 うぉおおおおおおおおおっ!!!!


 私も声量やトーン意識し、しっかり校舎に届く様に話す。


(ジェニファー様… セリフ、(あらかじ)め考えておられたんですか?)


 コソッと近付いたレイチェルさんが小声で問い掛ける。


(そんなワケありませんよ。アドリブに決まってます♪)


 私はニッコリ笑い、同じく小声で答える。


(あのセリフをアドリブで… さすがと言うか、何と言うか… 私には()()できませんわ…)


 そんなに難しいセリフでも無かったと思うけど…

 アンドレア帝国は、中心部こそ古くから従属してた国を併合しているが、(がい)(しゅう)()()(かく)(てき)近年に侵略された国だ。

 外周部に住む人々は中心部から虐げられ続け、不満や(うっ)(ぷん)()まっている。

 その様な国… と言うか地域の(いく)つかに私達は送り込まれた。

 煽動(せんどう)するのは()(やす)いと言える。

 勿論、騒ぎが大きくなれば煽動罪で捕まる可能性も考えられる。

 しかし、数が多いとは言え『(しょ)(せん)は子供の(たわむ)れ』と思われ、話の内容が広まらない限りは警戒される事は無いだろう。


「これで学生は取り込めたと思うし、下の世代も取り込めるだろ♪ 問題は上の世代だけどな」


「それが問題ですわね… そう(やす)(やす)とは取り込めないでしょうね…」


「そう簡単には行かないのは(わか)ってます。まだ最初の一歩を踏み出しただけなんですから。取り込んだと言っても、アンドレア帝国の極々一部に過ぎません。ベルムート王国… いえ、私達の新たな国を(おこ)すには、何年も… 十年以上で考えないとダメですからね」


 もしかしたら、国を(おこ)すなんて夢物語なのかも知れない。

 仮に(おこ)せたとしても、すぐにアンドレア帝国に(つぶ)されるかも知れない。

 それでも、やらなければならない。

 私自身が宣言したからには、立ち止まる事は許されない。

 (いま)だ見えない未来に私は(おも)いを()せるのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ジェニファーが多くの学園の生徒を支配下に置いた十数日後、事の(てん)(まつ)(しる)した手紙が(ゆう)(へい)されている父親達の元に届いた。

 もっとも幽閉されているとは言え、それなりの()(しき)(あた)えられ、家事(ぜん)(ぱん)(おこな)う使用人付きという(こう)(たい)(ぐう)である。

 元とは言え、ベルムート国王と王子をぞんざいに(あつか)っては、かつてのベルムート国民の反感を買う事になるので、それを回避する為だが…


「父上、ジェニファーからの手紙が届いたそうですね?」


「何か、やらかしましたか?」


 元・ベルムート国王、ジョージ・ベルムヘルムが苦笑しながら手紙を読んでいると、息子のジャックとジョセフが部屋に駆け込んできた。


「なんだ、お前達。ノックを忘れる(ほど)、ジェニファーからの手紙が待ち遠しかったのか?」


「あ… これは失礼を…」


「申し訳ありません…」


 自分達の失態を()じる二人。


「ははっ、まあ良い。我々は()(はや)、王族でも貴族でも無い。ある程度の自由が保証されてるとは言え、幽閉の身なのだからな。で、ジェニファーからの手紙だが… 私が説明するより、読んだ方が早いだろう」


 言いつつジョージは二人に手紙を渡す。


 ………………………………………………


「何をやってるんだ、ジェニファーは…?」


「何十もの学園の生徒を支配下に置いたって… 何の為に…?」


 手紙を読み終えた二人は困惑(こんわく)していた。

 ジェニファーの(おこな)いに対してもだが、同時にこんな内容の手紙が届いた事にもだ。

 幽閉中の身である為、手紙のやり取りには必ず(けん)(えつ)が入る。

 にも(かか)わらず、手紙が届いた事を不思議に思っていた。


「恐らく、子供の遊びとでも思われたんだろう。少々スケールが大きいがな」


「いや、父上… 少々なんて規模ではないと思いますが…」


「兄上の(おっしゃ)る通りです。下手すれば帝国に目を()けられる行動です」


 ジョージの言葉に二人は異議(いぎ)(とな)える。


「そこはジェニファーの年齢と(うわさ)のお陰だろう」


「「(うわさ)…?」」


 二人は(そろ)って首を(かし)げる。


(わず)か10歳という(おさな)さと、王女に()()かわしくない()()()と言う(うわさ)だ…」


「「()(ほど)…」」


 今度は二人(そろ)って納得した。

 この場にジェニファー(当の本人)が居れば、間違いなく『ど~ゆ~意味ですかっ!?』と、突っ込みを入れただろうと思いつつ。

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