You lied to me その弐
外国人、ローレンス・ボープレ。図書館で彼は新島達にサービスカウンターのある階を尋ねた。新島は一階にあると答えたが、その後ボープレは「You lied to me! (あなたは私に嘘をつきましたね!)」と言ってきたのだ。
新島はすかさず返事をした。
「What happened? (どうしたんですか?)」
「You said there was a service counter on the first floor,but there was no service counter on the first floor! (貴様、一階にサービスカウンターがあると言ったが、一階にはサービスカウンターはなかったぞ!)」
「It's noisy here,so le'ts go out and talk.(ここではうるさいので、外に出て話しましょう)」
新島はローレンス・ボープレとともに図書館を出て行った。
「部長、今の英語理解できたっすか?」
「すこしはな。ボープレとかいう奴が嘘をついたと怒った。一階にサービスカウンターはなかったぞ! と言っていた。そして、新島が外で話そう、と言って出て行った。
さっきボープレが新島に場所を聞いたとき、新島は一階だと答えた。実際、一階にサービスカウンターはある。それも、探せばすぐにわかる場所にだ。なぜ、ボープレは一階と言われたのにサービスカウンターを探し出せなかったのか。新島なしでは謎は解けそうにないな」
「でも、俺は新島が帰ってくる前に謎を解きたいっす」
「まあ...良い暇つぶしくらいにはなるな」
「ああ...。んじゃ、状況整理っすが、ボープレは一階と聞いた。だけど、一階にはなかったとボープレは言い張った。.........部長、一階は英語でなんて言うんすか?」
「first floorだ」
「ファーストフロアを、他の階のと間違える可能性はあるんすか?」
「いや、ないだろ。二階はsecond floor、三階はthird floorだから...間違えんな」
「なるほど。まずはボープレが一階でどこからどこを調べたかを知ろう。部長はお菓子、食べ終わったっすよね?」
「もちろん」
「じゃあ、一階に降りていろいろな人に聞こうっす」
土方と高田はお菓子の袋を捨てて一階に降り、まずはサービスカウンターにいる人に話しを聞いた。
「あの、すんません。ボープレと名乗る外国人がここに来ませんでしたか? それとも、この前を通ったとか」
「いえ、そのようなことはございませんでした」
「...ありがとうございます」
高田はサービスカウンターから離れた。
「部長、ボープレはここには来なかったらしいっすね。次は誰に聞くっすか?」
「そうだな...。本を読んでいる人にでも聞けばいいんじゃないかしら?」
「わかったっす」
高田は読書をしている人に聞いて回ったが、本に熱中していて周囲は見ていない人がほとんどだった。
「部長、駄目だったっす」
「じゃあ、他の階でのボープレの目撃情報くらいは調べておきましょう」
土方は階段を上がっていった。高田は急いで追いかけた。
二階、三階でのボープレの目撃情報は多々あった。その情報を元にすると、ボープレは四階五階でサービスカウンターを探して、三階に降りたときに新島に尋ねたが、一階での目撃情報は皆無で、二階に降りて探していたらしかった。
二人は一度、三階の飲食スペースに戻って考えをまとめていた。
「目撃情報を信じると、ボープレは新島に尋ねた後で二階を調べた。つまり、ボープレは一階と二階を聞き間違えたことになるっすが、そんなことは本当にないんすか?」
「他人は知らんが、私はそんな聞き間違いはしないよ。いくら英語が出来なくてもファーストフロアとセカンドフロアはわかる」
「となると、もうお手上げか」
高田はため息をついて椅子にもたれかかった。その時、新島が階段から上がってきたのが見えた。周囲にはボープレはいない。
「待たせた。この一件は解決した」
高田は最後の力を振り絞って口を開いた。
「新島! なぜボープレが怒ったかこちらでも調べて見たが、一階と二階を聞き間違えたことくらいしかわからなかった。答えを教えてくれ」
新島は椅子に座った。
「高田。そこまでわかったら、もう答えは出ているようなものじゃないか」
「茶化すな」
「茶化してはないんだがな...。ボープレはファーストフロアを二階と認識していたんだ」
「茶化すな」
「茶化してはないんだがな...。ボープレはアメリカ人ではなく、イギリス人だったんだ。つまり、ボープレが使う言語はクイーンズイングリッシュ。
英語と米語では数え方が異なる。アメリカの場合は一階がfirst floorで二階がsecond floor。三階はthird floorだが、イギリスの場合だと一階がground floorで二階がfirst floor、三階がsecond floorになっている。な? 単純なことだろ?
ボープレは俺が一階といったのを二階と勘違いした」
「つまり、アメリカンイングリッシュとクイーンズイングリッシュの違いが今回の事件を生んだ、ということか?」
「そういうことだ」
土方と高田は納得して腕を組んだ。
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