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七不思議の四番目、漏水の怪 その参

 新島と高田の二人は、テニスコートをスポンジで綺麗にした。その後、部室に戻った。部室では三島と新田が雑談をしていた。

 新田は、新島が戻ってくるなり口を開いた。

「部長!」

「どうした?」

「高田先輩と一緒に、プールから水をどうやって漏水させたか実験したんですよね?」

「ああ。だが、今回は高田の案だ」

「どんなトリックだったんですか?」

「プールの栓を外して、水を抜くんだ」

「でも、それではテニスコートに水は漏れませんよ?」

「テニスコートの近くにある水道の蛇口から、テニスコートに向けて水を流したんだ」

「......なるほど。そういう考えもありますね」

「だろ?」

 新島は椅子に座った。

 高田も椅子に座り、「これで解決だ」と言った。

「多分」三島は椅子から立ち上がり、組んでいた腕をほどいた。「夜は、学校の水道が止められているはずです。動機も、不十分だと思います」

 三島の言葉に、新島と高田が驚いたように声を上げた。

「本当か?」

「おそらく、そうだったと思います」

「よし。それが事実かどうか調べに行くぞ!」

「新島、やけに張り切ってるな」

「ああ、当たり前だ。だって、高田が俺より先に解けるはずがない!」

「偏見が酷いな」

「当然の反応だろ。さあ、行くぞ」

 四人は部室を出て、ひとまず生徒会に向かった。生徒会なら、ある程度の学校のことは把握しているからだ。


 生徒会室の扉を、新島がノックした。

「何ですか?」

「文芸部部長の新島真です。生徒会会長の鴨野剛健(かものごうけん)さんを出してください」

「僕が鴨野剛健生徒会会長だよ。何か用かな?」

「水道のことを聞きたいです。水道は、夜は止められているんですか?」

「ああ、止められているよ」

「何ですか?」

「夜の学校に何者かが忍び込んで、水道の水でイタズラをされていることがありました。だから、夜だけは水道の水を止めることにしたんです」

「学校側が勝手に水を流すように細工をすることは可能でしょうか?」

「何でそんなことを聞くのですか?」

「えっと......な、七不思議の四番目の検証をしていまして」

「あ、なるほど。君たちは日常探偵団だったね」

「はい......」

「水道の水の管理は水道会社が行っているんだ。特例がなければ夜に水道の水が流れることはないよ」

「ありがとうございます」

 新島は生徒会会長に頭を下げた。鴨野は、困ったらいつでも呼んでいいよ、と言って扉を閉めた。

「新島!」

「どうした?」

「俺の仮説は外れたな」

「高田に負けるのは悔しかったが、かなりいいトリックを考えたとは思ったんだがな」

「フォローはいいよ」

「フォローじゃない。単純に褒めているんだ」

「新島が褒めるとは......。気持ち悪いぞ。凄く気分が悪くなる

な」

「褒めてやったのに酷いこと言うな」

「まあ、話すのはここまでだ。部室に戻って、どんなトリックか考えないといけない」

「そうだな」

 部室に戻り、それぞれが椅子に座った。

 新島は足と腕を組む。「高田の予想は外れた。だが、大筋の考えは変わらないんじゃないか? 高田はプールの水を抜き、水道の水をテニスコートに流すと言った。だが、水道からじゃなく水をテニスコートに流す方法があるかもしれない」

「そんなことが出来るのか?」

「わからない。──三島は八坂中学校の地図を持ってなかったか?」

「持ってます。校舎の地図と校内全体の地図の二つがありますが、どちらを渡しますか?」

「両方くれ」

「どうぞ」

「ありがとう」

 新島は三島から筒を二つ受け取った。中央に付いている輪ゴムを外して、地図をテーブルに広げた。

「どうだ、新島?」

「テニスコートの周囲に水源はないな......」

「そういえば、この学校は貯水タンクを三つは持ってただろ? ほら、体育館の連絡通路の途中で白色で四角いタンクがあったじゃん!」

「あれか。地図じゃ貯水タンクのくわしいことはわからないな」

「だけど、もしその貯水タンクにホースをつなげたらテニスコートに水が届くぞ」

「ホースってそんなに長いのあったっけ?」

「探せばあるんじゃないか? 知らんが」

「よし。貯水タンクを確認しに行くぞ」

「ああ、行こう」

「待て。いつも全員が動くと時間がかかる。俺一人で行く」

「はぁ? 俺も行きたい」

「あのっ」新田は立ち上がった。「わ、私も行きたいです!」

「同じく、私も」

「マジかよ......。仕方ないから着いてこい」

 新島は頭を抱えた。高田、三島、新田はそんなことにお構いなしに部室から廊下に出た。

 中学校は高校より校舎は大きくはない。七階にある文芸部部室から体育館連絡通路までは往復で五分から十分程度だ。貯水タンクを調べたり確認するのには高田が来てしまったから一五分は滞在するだろう。部室に帰った頃には部活動終了時間の午後六時。

 新島は時計を見ながら、そんなことを考えていた。貯水タンクを調べたあとで、他にも調べたいことがあったらしいのだがこれでは今日は無理そうだと諦めた。

「貯水タンクのことについて話し合うのは烏合の衆の時にでもいいか......」新島はため息をついた。

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