表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/62

卒業 その壱

 高田は尚も盗み聞きを続けた。

「新島......」

「なんだ?」

「一緒にって、どういう......」

「そのままだ。つ、付き合わないかなぁ......なんて」

「......」

 土方は、眉を寄せながら答えた。

「私、卒業したら横浜に引っ越しするんだ」

「......!」

「親の都合でね。だから、付き合えないんだ」

「え、遠距離でも俺は──」

「冗談はそこまでにしろ。まったく」

 土方が扉に近づいたので、高田は急いで階段まで走った。

 その後、屋上で部活動時間が終わるまで待ち、二人が帰ってから鍵を回収した。


 高田は昨日のことが頭から離れないまま、学校に登校した。そのままボーッと過ごしているといつの間にか放課後になっていた。

「高田、大丈夫か?」

 無神経にも新島は高田に話しかけてきた。

「ああ、大丈夫だよ」

「そうか?」

「それより、部室に行こうか」

「だな」

 二人が教室を出た。

「なあ、新島」

「どうした?」

「お前、好きな人はいるか?」

「急だな......」

「いいから、答えろ」

「好きな人はいない」

「本当か?」

「ああ。少なくとも、告白してフラれた」

「誰に告白したんだ?」

「言うのか?」

「言わなくてもいい」

「そうか」

「ああ」

 部室に入ると、土方はいなかった。

「先輩はいないな」

「そうだな」

 二人はそれぞれ椅子に座って本を読み始めた。と言っても、高田は新島と土方の関係をあれこれ考えていた。


「二人とも、来ていたか」

「あ、部長」

「すまん。ちょっと、卒業のあれこれで遅れてしまった」

 土方はテーブルと椅子を動かしてから、椅子に腰を下ろした。

「これから、私が卒業してからの文芸部活動形式を考える」

「会議するんすか?」

「そうだ。私が卒業しても大丈夫なようにね」

 高田と新島も椅子に着席して、お互いの顔を見合った

「高田はどうする?」

「うーん? 俺は他の部、七不思議研究部とかと協力して解決したほうがいいんだが...」

 新島と高田が話し合っている中、土方は文芸部の過去の活動記録に目を通していた。

「多分、他とは協力しない方がいい」

「何でだ?」

「どこで教職員が聞いているかわからない」

「なるほど」

「で、入学式の時の勧誘だが──」

「無理やり勧誘するか?」

「それは強引だ。部の評判は落としたくない」

「なら、どうする?」

「簡単だ。勧誘はしない」

「はぁ!? だったら、新入部員はこないぞ」

「来ない。だが、いい方法がある」

「いい方法?」

 新島はニヤリと笑みをこぼしながら話した。

「モスキート音は知ってるか?」

「知っている。二十歳後半からはあまり聞こえなくなる音だろ?」

「そう。超高周波の音で、歳を重ねると徐々に聞こえなくなる。八坂中学校の教職員は若い奴は少ない。平均年齢三十代前後だろう。つまり、教職員には聞こえないモスキート音を出して、モスキート音が聞こえる新入生がうるさくて寄ってくるというわけだ。そしたら、文芸部を新入生に広く知ってもらえる」

「ちょっと、それも強引だな。それに、新入生に悪評が広がって文芸部に入ってもらえなくなるぞ」

「だが、いい方法だろ?」

「やり方がクズだ」

「いい方法じゃないか」

「酷い方法だ」

「じゃあ、お前は何か他に案はあるのかよ」

「ないね」

「駄目じゃねーか」

 土方は活動記録から目を離して、口をはさんだ。

「まずは新入生が通るルートに広告を貼るくらいはしよう」

 ということで、三人は新入生が通るルートを確認することにした。

 新入生は体育館で入学式を終えると、校舎に向かう。校舎では待ち構えていた勧誘隊が新入生を無理矢理獲得する。だが、最近ではそれすら禁止され、勧誘方法は広告と二者での話し合い程度だ。二者での話し合いでは部員数が三人の文芸部では不利なため、広告に力を入れるのである。

 だから、三人は新入生が通るであろう校舎のルートを確認するのだ。

「ここは多分通るな」

「そうだな」

「この道は穴場だぞ」

「なら、この壁に貼ろうか」

「海の絵に波浪(はろう)が起きているポスターも貼ろう」

「高田、つまんないぞ」

「ひ、酷い!」

「波浪と貼ろうはよかった。あとはハローとハロウィンがいいな」

「おお! その手があったか。新島は天才だな」

「そうか?」

 という具合で確認作業は進み、次は階段の踊り場の掲示板を確かめるのみだ。

 踊り場の名の由来は、昔ドレスを着たお姫様が王宮の階段で走る際に踊り場で急な方向転換をする。それが踊っているように見えたから、踊り場と命名されたようだ。

 無駄な話しはいいとして、三人は壁を見ながら階段を登っている。すると、段を踏み外す者もいて、それが土方だった。

「あっ!」

 足下から体制が崩れて、真っ逆さまに倒れそうになる。

「先輩!」

 新島はすぐに反応して土方の体を引っ張った。弾みで彼の体制が逆に崩れ、とあるクリニックのコマーシャルのような、手足をまっすぐと伸ばした状態で階段を転げ落ちていった。

「新島!」

 土方はすぐに階段を駆け下りて、新島の元に行った。新島は頭から流血した。血がどんどん流れ出てきて、周囲は血の海と化した。

 面白いと思った方は、執筆の励みになりますので広告欄下の評価やブックマーク登録をお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ