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日常探偵団1 八坂中学校の七不思議  作者: 髙橋朔也
数学科課題プリント
2/62

χとуの関係の解 その弐

「新島。どういうことなんだ?」

「χの左側に10を書く可能性はあるけど、問題文でそれに触れていないのは不服だな。それにχの両側の空白は同じくらいだから、左側に10を記入する可能性は低いだろう」

 新島は問題を眺めていた。二人で話していることに気づいた土方は口をはさんできた。

「どうしたのかしら?」

「はいっす...数学の課題プリントの最後の五問目が少し変になってるんすよ」

「どれどれ...」

 土方は高田から課題プリントを受け取った。

「傾きと切片の概念が間違っているんじゃないのかしら」

「そうっすね...ええと─」

「いや、傾きと切片の理解は正しい。簡単に説明するとу=αχ+Ьの式に当てはめるけど、傾き=αで切片=Ьみたいなもんだから...」

「随分雑な説明ね。まあ、いいわ。そうね...バツ印(×)を書こうとしたんじゃないかしら」

「だとしたらこんなに両極端には反り返らないな。同じ説明で11と乗法(掛け算)の記号も違うことがわかる」

「なら、新島に考えはあるのか? 言っておくが、俺はない」

 新島は腕を組んで悩んだが、口を開いた。

「これといったものはないな。ただ、ひとつ方法を考えた」

「どんなのだ?」

「二年三組の生徒の中にも俺たちみたいに部活をしていて、放課後でも学校にいる奴もいる。そいつらに話しを聞いたらいいんじゃないか?」

 高田は指を鳴らした。

「いいアイディアだ。...部活に入っている三組生徒は五人。そのうちの二人は男子バスケットボール部にいる。体育館だ」

「さっそく、行ってみよう」

 三人は文芸部部室を出て、一階に降り、連絡通路から体育館に向かった。

 男子バスケットボール部の顧問は社会科の国松(くにまつ)で、新島は国松にまず尋ねた。

「三組の三上(みかみ)(せき)はいますか?」

「いるが、どうした?」

「数学科の課題プリントの件で話したいことがあるんです」

「わかった。...三上! 関!」

「「はい」」

 二人は同時に返事をして、国松の所に走ってきた。

「なんですか?」

「新島が三上と関に話したいことがあるそうだよ」

 咳払いをしてから新島は話し始めた。

「今日配られた数学科の課題プリントの最後の五問目は見たか? すでに答えが記入されていた」

「関がなんか言ってたよな?」

「ええ。かっこ内にχがすでに記入されていました」

「そう、それだよ。俺たちは今、そのことで気になってるんだよ。なんか、知らないか?」

「掛け算の記号がひん曲がったんじゃないか?」

「両極端には反り返らないな」

「だとしたらわかんないや」

「ああ、すまない」

 新島は礼をすると、端で待っていた高田と土方に合流した。

「どうだった?」

「駄目だった」

「まあ、他の部活もあるから大丈夫じゃないかしら」

 その後、卓球部、女子テニス部、男子サッカー部、野球部を回ったが収穫はなく、文芸部部室に戻ってきていた。

「はあー。全然わかんねーな」

 椅子に座った高田は脱力して声を上げた。

 一方で、新島は真剣に考えているようだった。椅子に座ると目を閉じて黙った。土方はソファに横になって、またも毛布に包まった。

 三十分後、新島は立ち上がるとすぐに話し始めた。

「おそらく、先生は()を二つ書いたんだ! それがχになったんだよ」

「どういうことだ?」

  (  )(  ) 

     ⬇

    ( χ )


 つまり、こういうことだ」

「なるほど。だが、かっこをなんで二個も書いたんだ?」

「左側のかっこに10を、右側のかっこにχを書いてもらいたかったんじゃないかな?」

「ああー、そういうことか」

「新島。やるじゃない」

「いや、ただの(ひらめ)きだよ」

 次の日、三時間目の数学の授業が始まった。

「昨日配った課題プリントだが、最後の五問目のかっこのところだ。かっこを二つ書いたんだが、近すぎてかっこの右部分とかっこの左部分がくっついてχになってしまっていた。...わかりにくかったと思う。だから、五問目は全員正解にする」

 教室の中が笑い声で包まれた。高田は新島に向けて、右手の親指を立ててナイスサインを出していた。


 同日の放課後のことである。高田は『本陣殺人事件』を持って、新島の席に向かった。新島が気づくと、高田は本を新島の前に差し出していた。

「読み終わったぜ」

「おお、そうか。早いな」

「ちょっと気になって読んでたら夜更(よふ)かししちゃったよ」

「なるほど。──で、どうだった?」

「この本か?」

「ああ」

「まさか、『本陣殺人事件』は密室にして一人二役だったとは思わなかった。『車井戸はなぜ軋る』と『黒猫亭事件』、面白かった」

「だろ? 横溝正史は面白いんだ」

「ちょっとだけ内容はこわかったがな」

「あの時代の推理小説作家はグロい描写を使って印象を強めたがるからな。江戸川乱歩とかいい例だぞ。『陰獣(いんじゅう)』とかだな」

「そ、そうなのか?」

「ああ。一度『陰獣』も読んでみろ」

「わかった」

 新島は高田から『本陣殺人事件』を受け取って、カバンにしまった。高田は本を渡すと、部活に行くを聞いてきた。新島が適当に答えて、高田はうなずいて教室を出ていった。

「部活行くか聞いておいて、先に行くとは」

 新島はやや驚きながら、準備をして文芸部の向かった。

 説明が少し下手過ぎたかもしれません。わからなかった人はごめんなさい。


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