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稲穂祭と予言者 その弐

 なぜ、こんな予言の手紙が来たのか。犯人は何をしたいのか。三人は絶句した。

 ちょっとして、新島は口を開いた。

「待て。俺たちの目的は予言者じゃなくて七不思議の一番目だぞ」

「いや。私達文芸部がその予言者の謎を解けば、より宣伝になるわけだ。だったら、二つとも解決しよう。それに、事故が起こるかわからないだろ?」

 その時だった。外が騒がしくなったので、三人は窓から(のぞ)いた。すると、八坂中学校の前の大通りで車が二台正面衝突していた。

「!」

 高田は体が硬直した。そして、ポケットから紙が落ちた。土方は紙を拾い上げて読み上げた。

「『稲穂祭初日に車の事故が起こる』! 事故のことも予言してるじゃないか!」

「高田! どういうことだ!」

「その紙切れはこっちの手紙と一緒に送られてきたんだ」

「どういうことなんだ」

 土方は少し考えてから、本棚に近づいた。

「私の知っている者で予言者はいるにはいる」

「部長! それは誰っすか?」

「八坂中学校最古の部活、占い研究部だ」

「占い研究部?」

「そう。八坂中学校は変な部活多いだろ? その一つだ。なんか、占い師養成機関みたいな部活らしい」

 新島は少し考えたが、土方に提案した。

「部室は少し閉じて、その占い師研究部に行こう」

「私もそう思う」

 三人は文集を売るのを諦めて、占い師研究部部室に向かった。

「占い師研究部の部長は私の友達なんだ」

「そうなんすか!」

「ああ」

「ってことは、怖いのか」

「新島、何か言ったか?」

 土方は拳を握った。

「何でも、ありません...」

 新島は静かになった。


「三鷹ちゃん?」

「あっ、ナミちゃん! 久しぶり」

 彼女が土方の言う占い師研究部部長の三鷹夜空(みたかよぞら)だ。

「それで、ナミちゃんどうしたの?」

「予言者のことについて...」

 土方は三鷹に予言者の手紙のことを話した。

「そんなことがあったんだー。まあ、部室に入って」

「なら、入らせてもらおう」

 三人は部室に入った。中にはタロットカードやガラスの玉、薄いカーテンなど占い師が使う道具が多く置かれていた。

「あれ、三鷹ちゃん。部員は?」

「へへー。皆部活やめちゃったんだ」

 三鷹は暗いことを明るく話していた。彼女は別にいじめにあっているようには見えない。単純に、占いという行為に飽きた部員が辞めていっただけだろう。だが、以前いた数少ない部員の名残だろうか。椅子が四つ、窓際に並んでいた。土方がその後に聞いた話しでは、三鷹いわく、その四つの椅子に思い出が座っているらしい。

「それで、予言者に心当たりはある?」

「ん~? 無いかな? だけど、その予言者に興味あるから手伝うよ」

「本当か?」

「うん。それに、暇だしね」

「では、手伝ってくれ」

「いいけど、どこに次は行くの?」

「それが、まだ決まっていないんだ」

「大変だね」

「そうなんだよ」

「なら、まずはこっちから予言者を占うね」

 三鷹はガラス玉を手紙の前に持ってきて、手をかざした。

「おっ、出てきた。予言者が誰かわからないけど、占いは出てきたよ。


 ──稲穂祭を楽しめ──


 だってさぁ」

「稲穂祭を楽しめだってぇ!」


 三鷹を加えた四人はまず、ゲーム部が運営する射的に向かった。コルク五個三百円。コルクを銃口に詰めた新島は、銃をかまえた。そして、銃口を目当てのものに向けた。引き金を引く。発射されたコルクは目当てのものに当たりはしたが、倒れることはなかった。続けて四発発射したが、無理だった。

「ちくしょう!」

「ドンマイ」

「高田...」

「次は俺の本気を見せてやる」

 高田は新島から銃を受け取った。というより少し強引に奪い取った、の方が正しいだろう。コルク五個を購入すると、一つをつかんで銃口に詰め込んだ。台に乗って、机に体をつけた。そして、両手で引き金を引いてコルクを発射した。すると、コルクは目当てのものの少し横を通過した。

「あ、くそっ!」

「ドンマイ、高田!」

「まだ四発残ってるよ」

 高田は新島にブーイングして、また銃をかまえた。

 その後、四発とも外した。

「外すことに天才的な高田君、どうした?」

「当たっても倒れないことに天才的な新島君、どうした?」

「何だと?」

「あぁん?」

 高田と新島は(にら)み合った。

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