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日常探偵団1 八坂中学校の七不思議  作者: 髙橋朔也
密室のストーカー
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密室への侵入 その弐

 少しして、新島は立ち上がった。

「包丁を取り除いた後で掃除とかしたのか?」

「ええ」

 新島の質問に、中島が答えた。

「なぜか部室が綺麗だったかは......」

 新島は次に天井を見てから、高田に話しかけた。

「高田! ちょっとこい」

「何だよ?」

「お前に頼みがある」

「......言ってみな」

「今回はお前が探偵役だ。俺の指示をちゃんと聞いて、探偵として動いて欲しい」

「今回の事件、何かあるんだね?」

「非常にまずい動機だ」

「聞こう」

「動機はトリックを話したらわかると思う。だが、お前には嫌な役目をさせなくてはならない」

「嫌な役目?」

「間違った推理を披露してもらう」

「ほお?」


 十分後、高田は新島から正しい推理と間違った推理を話し終えた。

「わかったな? それと、実験用にいろいろ買っておきたい」

「なら、部長も誘ってこれからショッピングモールに行こう」

「わかった」

 三人は五時を過ぎて、学校を出て、ショッピングモールに向かった。

「まず、包丁を買いに行こうっす!」

「高田。明日は探偵役を頼むよ」

「わかってるよ」

「私もあれは驚いた」

 校門を出て右に曲がり、坂道を登っていくと林に出る。そこをまた進むと、一方通行の道路が現れ、左を行くと駅前のショッピングモールに到着する。三人は現在、林の中だった。

「おいっ! 雨降ってきたぞ!」

 新島の声に反応して、二人は空を見上げた。

「本当に降ってきたっすよ」

「ショッピングモールに急ぐぞ」

 三人は走ってショッピングモールに駆け込んだ。

「ふう」

 三人は濡れた服を(ぬぐ)うためにタオルを三枚出した。

「ありがと」

「すまんね」

 高田と土方は新島からタオルを受け取って、服を(ぬぐ)った。

「じゃあ、二階に行こう」

 三人はエレベーターに向かう途中で、食品コーナーに目を向けた。すると、困っている店員を見つけた。

「あ、あれ?」

 店員は自分のズボンや上着、エプロンのポケットを探っていた。どうやら、何かを無くしたようだ。見かねた新島はその店員に尋ねた。

「どうしたんですか?」

「は、はい! あっ、ごめんなさい......。いえ、お客様に迷惑をかけることは出来ません」

「大丈夫ですよ。俺たちは別に急いでるわけではないですし、そういうのを解決するのは得意ですから」

「えっと......」

「ほら、言ってみてください」

「さ、財布を無くしちゃって......」

「なるほど。いつぐらいからなくなっていたんですか?」

「バックヤードにいたぐらいからです」

「何時から店員は詰めているんですか?」

「この時間帯にいる店員は五時から詰めていますね」

「なるほど」

「な、何かわかりましたか?」

「......約束しましょう。三十分後にここに犯人と財布を持って来ます」

「そ、そんなことが出来るんですか?」

「ええ、可能です」

 新島は二人に合流した。

「どうするんだよ」

「簡単だ。さっき、犯人は見つけているんだ」

 新島は急いで元来た道を引き返して、さっき見つけたという犯人を捜していた。

「おっ! あいつだ。高田! 行くぞ」

「あいつだな?」

「ああ、その通りだぞ」

 新島の後から高田が続き、犯人の後ろから話しかけた。

「あなた、財布を盗みましたよね?」

「なっ!」

 高田は新島の指示で犯人を後ろから押さえた。新島は手首をつかんでねじり、相手の身動きを封じた。そして、犯人のポケットをいじくり、財布を出した。

「財布が二つありますね。なぜですか?」

「俺の勝手だ」

「まあ、いい。さっきの店員さんの前に連れて行こう」

 高田と新島が協力して、犯人を運んだ。土方はきょとん、として見ていた。

「店員さん! どちらがあなたの財布ですか?」

「こ、こっちです」

「こいつが犯人です」

「くそっ!」犯人は目を鋭くして悔しがっていた。

「この犯人、どうします?」

「か、解放して良いですよ。財布が帰ってくれば......」

「本当にいいんですか?」

「は、はい」

「わかりました」

 新島は犯人を解放した。しかし、店員は腑に落ちない感じだった。

「どうして、あの人が犯人だと分かったんですか?」

「靴の泥です。あの人は靴に泥が付いていました。雨で地面が濡れないと泥は付きません。最近は日照りですし。そして、入り口に泥があるのはこのショッピングモールではバックヤードだけ。雨が降ったのは五時半。

 これらをまとめるとこうなります。五時から詰めていたショッピングモールの店員は雨が降る前にバックヤードにいたから泥は靴に付きません。雨が降ってからバックヤードに入った人は店員ではないですから犯人の可能性があります。そして、さっき靴に泥を付けた人を見ていたので、そいつが犯人だと思ったんです」

「な、なるほど。すごい洞察力ですね」

「いえ、それほどでも......」

「僕はこのショッピングモールを運営する『株式会社 ()(どもえ)ホールディングス』社長の息子の()巴和人(どもえかずと)です。欲しいものがあるなら、無料で差し上げます」

「それは、悪いです」

「大丈夫ですよ」

「......なら、風船と包丁を探しに来たんですが、お願い出来ますか?」

「分かりました」

 三ツ巴は電話をして、十分後には風船と包丁が届いた。

「ありがとうございます」

「いえ」

 新島は風船と包丁を受け取って、二人と合流した。

「なんか、味気ないっすね」

「まあ、そうね」

「なら、これからファミレス行こう!」

「いいね」

 三人が賛成し、近くのファミレスに向かった。新島は風船と包丁をカバンに入れた。

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