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昔の女  作者: ももここ
2/14

# 過去からの手紙


遥か彼方から届いた手紙だ


背後に悪意は感じないが


彼女は迷子になる事を覚悟で


小さな子供をお使いに出したのか


それとも亡くなる直前に


俺の名前を口にして


残された旦那が仕組んだ企みか


暇な俺はいろんな事を考えた


もし俺が死んでいて


奥さんが微かな秘密の匂いを


感じ取ったら


どうなるんだろう


名前と電話番号は恥ずかしそうに


しかししっかりとそこにある


途方に暮れているように


しかしはっきりとそこに書かれている


俺は俺専用の机の引き出しに


目立たないように仕舞った


日焼けのした便箋に書かれた


ラブレターのようだった


いや あぶり出しのラブレターか


俺の空想は


陽気な方に膨らんでいった


# 時


40年経つ


随分変わった


ヤスコも変わっただろう


残念な事に女盛りの彼女を


知らない


外見は変わっても


中はさほど変わらないと思う


俺がそうだ


相変わらずいい加減で 好き勝手に


楽しくやっている



歳月が流れどんどん変わるのは


形で自分はさほど変わらないんじゃないか


ヤスコに会いたくなった


# 妻


引き出しの中の手紙が


薄桃色に発光していた


あれからもずっと


俺の奥さんは平和に幸せに


暮らしている


子供達が育ってからは


趣味で人形作りをしてたな


フランス料理も


習っていたりしてたかなぁ


女友達と旅行も良く行ってた


最近は近場が多いみたいだけど


俺かい 俺は何にもしてないね


たまにスポーツジムに行くくらいかな


「ねぇ 俺も旅行に行ってもいい?」


「え…珍しいわね」


「うん 身体が動くうちに行っておこうと


思って…」


「行きたくなったんだ」


「いいんじゃない 行ってらっしゃい」


# 旅


「一人で?」


「うん 一人でのんびり色々観て廻ろうと


思って」


一緒に行くと言われる前に


俺は先回りして言った


「たまに俺のいない家でのんびりしたらいいよ


今度 一緒に行こうな…」


「何処に?」


「そうだなぁ ちょっと北の方にでも


行ってみるかな


連絡は取れるところに行って来るよ


気ままに廻ってみる


心配するな」


のんびりというより


妻は寛大なのかもしれない


# 飛行機


俺は鏡を見た


心なしか目に強い光りが


宿っている


数日後


上着の内ポケットには手紙を


小さくまとめた荷物を持った俺は


地方の小都市行きの


飛行機に乗った

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