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曇り空の向こう
# 二人
あの頃は肩を抱いたり
腕を組んだりしない
手も車の外では
繋がない
ヤスコは今それがしたいという
店の外へ出て二人の寄り添う
後ろ姿は夜の帳の中へ消えて行った
# ふたり
俺が好きか?
甘えるように優しい目で
ヤスコを見る
彼女を見下ろし
一郎は静かに
確かめた
女は初めて
泣いた
# レイ
めでたし…めでたし…
レイは冷めた苦いコーヒーを一口飲んだ
めでたしめでたし…
ずっと前から机の隅に置いてある
青い封筒に目をやる
良い色だ
一郎を思わせる色
買った日から封筒はレイの気持ちを
盛り上げるように
違う日には落ち着かせるように
そこにあった
レイは ブルーの封筒に
一郎の名前を丁寧に書いた
夕方の買い物のついでに
駅前のポストの前に立つ
手紙を入れると
コトンと心臓が音を立てた
聞こえるはずもない
青い封筒がポストに落ちる音が
小さく聴こえた
……END




