変わらぬ二人
# ヤスコ
どうしてた?
今どうしてるの?
時の流れなんて感じない
昨日別れて今夜また会ったような
穏やかな感覚が俺にはあった
初めてあった時の
あのぴったりくる感じは
変わらない
多分ヤスコも…
相変わらず大きな瞳を
いかにも嬉しそうに
面白そうに
俺に向けて来る
ヤスコはしばらく俺を
目で楽しんでから
小さな口元に
微笑みを浮かべて
スッキリとした顔で言った
8年前に離婚したの
私は 今 一人です
俺の一番聞きたかった言葉を
最初に言った
そうか
俺は心から笑った
# 変わらぬ目
まるで違和感がない
親しみやすさや優しさは
昔と変わらない
忘れていた小さな癖も
そのままだ
昔の男
私が一番好きだった人
昔と同じように
穴が開くくらい
じっと見る
こちらが見ているうちは
見られている事を
感じないから
恥ずかしくない
じっと見る
可愛い人
こんなに年齢が高い人を
可愛いと思えるのだから
年を取るって不思議
私が一人というと
男の可愛い目が
いかにも楽しそうに
面白そうに笑った
#寂しい
別れてからは
男の人が嫌いになったし
生活の事で
それどころじゃなかった
この頃やっと少し落ち着いて
寂しくなったの
ヤスコは淡々と近況を言った
自然の感情だな
俺は素直にヤスコに言った
全く同感だ
ヤスコにも真っ直ぐ伝わったようだ
# 暖かい目
別れた事 その後の事 寂しい事を
言うと
昔と同じ優しい目で
当たり前のことだと
言ってくれた
久しぶりに見る
男の優しい目だった
本当に久しぶりだった
もう随分長い間
8年どころではない
もっともっと長い長い間
見たことのない優しい目
向けられたことのない目だった
# 多分本当のこと
テーブルの料理は冷えていた
食べる暇がない
口を開いていない時は
お互いを確かめ合うように
正面から
見つめ合っている
私…私…笑うかもしれないけど
今まで生きてきて
そして40年も前に別れたのに
多分 あなたが 一番好き
ヤスコは
俺の肩や首筋あたりを見ながら
こう言った
細い肩も 頬の丸みも
昔と変わらない
と俺には見える
テーブルを飛び越えて
この場で
ヤスコを抱きしめたかった
# 変わらぬ二人
うれしいなあ
あの頃と変わらない口調で
同じ言葉を言っている
あの頃
とても好きです
と言った時
運転をしながら
横顔で笑っていた
こちらを素早くちらっと見て
私の右手を取り
しっかりとつないだ
今日のあなたの手は
変わらず暖かいだろうか




