表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昔の女  作者: ももここ
12/14

待ち合わせ

# 再会


ヤスコに会う


俺は今は独り身だ


あの頃とは違う 妻はいない


年は取ったが 男でいたい


一人の男として


ヤスコに会う


果たして彼女の今は


どうなっているのか


あの頃好きだった


という気持ちだけが頼りだった


そして


俺は寂しいんだ


素直にこんな遠くまで来た


のは 心底寂しいからだ


この先 何が待っているわけではない


何事も無く毎日を過ごしていたら


その先にあるのは


ただあるのは……


早くヤスコに会わなければ


1秒でも早く


俺は不思議な気持ちに駆られていた


いつもの俺ではなかった


電車は軽快に見知らぬ街を


走っていく


窓の外はすでに暗く


いつしかネオンが重なる


おもちゃのような都会に


俺を連れて行った



# 待ち合わせ


40年前 初めてヤスコに会った時を


思い出す


初めて待ち合わせした時を


喫茶店の入り口近くの席に


彼女はいた


俺は いたか…!と小さく


呟いたと思う


半信半疑だったから


居るのが意外な気もしたんだ


だけどすぐ いるよな と


ヤスコに笑いかけた


誘ったんだからいるよね やっぱり


嬉しかった


今夜はその時よりも


はやる気持ちがある


人生は短い


生きてみないとわからない


わかるはずもない


そして


今俺がこうしている事も


40年前に到底


想像がつくはずもない



# 立つ女


待ち合わせの場所は


店の中でも良かったが


敢えて 店の外にした


二度目に彼女と待ち合わせた時を


思い出したからだ


俺は車で彼女を


街中で拾うことにしたので


街角に立って待っていてもらう事に


した


彼女は上下白っぽい


夏らしいスカート姿で


癖なのだろう


首を少し傾けて


すっきりと立っていた


スカートの裾から


真っ直ぐ長い脚が


伸びていて


印象的だった


俺は車を停め


早く乗るように


合図すると


嬉しそうににっこり笑って


その後慌てたように


急いで乗り込んできた


まだよく知らないヤスコの


そんな素朴な様子が


俺に好感を持たせた


今夜のヤスコの姿は


どうだろう


俺は40年前の


あの長く忘れていた


薄い桃色に透き通った


耀くガラスのような


記憶を


重ねることが出来るだろうか



# 待つ女


ヤスコはいた


40年前と同じように立っていた


車ではないので


人混みの中を


ゆっくりと彼女の方に


歩いていく俺に気づき


駆けよろうか


このまま待っていようか


小首を傾けて


思案しているようだった


自然と笑いながら


近づく俺に


彼女も微笑んでいた


ヤスコの顔は


静かに華やぐ


夜の繁華街の


薄い暗闇の中で


輝いていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ