待ち合わせ
# 再会
ヤスコに会う
俺は今は独り身だ
あの頃とは違う 妻はいない
年は取ったが 男でいたい
一人の男として
ヤスコに会う
果たして彼女の今は
どうなっているのか
あの頃好きだった
という気持ちだけが頼りだった
そして
俺は寂しいんだ
素直にこんな遠くまで来た
のは 心底寂しいからだ
この先 何が待っているわけではない
何事も無く毎日を過ごしていたら
その先にあるのは
ただあるのは……
早くヤスコに会わなければ
1秒でも早く
俺は不思議な気持ちに駆られていた
いつもの俺ではなかった
電車は軽快に見知らぬ街を
走っていく
窓の外はすでに暗く
いつしかネオンが重なる
おもちゃのような都会に
俺を連れて行った
# 待ち合わせ
40年前 初めてヤスコに会った時を
思い出す
初めて待ち合わせした時を
喫茶店の入り口近くの席に
彼女はいた
俺は いたか…!と小さく
呟いたと思う
半信半疑だったから
居るのが意外な気もしたんだ
だけどすぐ いるよな と
ヤスコに笑いかけた
誘ったんだからいるよね やっぱり
嬉しかった
今夜はその時よりも
はやる気持ちがある
人生は短い
生きてみないとわからない
わかるはずもない
そして
今俺がこうしている事も
40年前に到底
想像がつくはずもない
# 立つ女
待ち合わせの場所は
店の中でも良かったが
敢えて 店の外にした
二度目に彼女と待ち合わせた時を
思い出したからだ
俺は車で彼女を
街中で拾うことにしたので
街角に立って待っていてもらう事に
した
彼女は上下白っぽい
夏らしいスカート姿で
癖なのだろう
首を少し傾けて
すっきりと立っていた
スカートの裾から
真っ直ぐ長い脚が
伸びていて
印象的だった
俺は車を停め
早く乗るように
合図すると
嬉しそうににっこり笑って
その後慌てたように
急いで乗り込んできた
まだよく知らないヤスコの
そんな素朴な様子が
俺に好感を持たせた
今夜のヤスコの姿は
どうだろう
俺は40年前の
あの長く忘れていた
薄い桃色に透き通った
耀くガラスのような
記憶を
重ねることが出来るだろうか
# 待つ女
ヤスコはいた
40年前と同じように立っていた
車ではないので
人混みの中を
ゆっくりと彼女の方に
歩いていく俺に気づき
駆けよろうか
このまま待っていようか
小首を傾けて
思案しているようだった
自然と笑いながら
近づく俺に
彼女も微笑んでいた
ヤスコの顔は
静かに華やぐ
夜の繁華街の
薄い暗闇の中で
輝いていた




