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ドリームホープ ~夢への希望~  作者: 南河原 候
3/4

学校

パーカーを着てから学校の制服である黒色のブレザーを着てネクタイの付け方が分からないから母さんに聞きに行った。


「母さん、ネクタイってどう付けるの?」

「ん? それはね~!」


母さんは嬉しそうに手馴れた手付きでネクタイを締めてくれた。


今日から試しで学校に行って見ることにした。

これでも、変わろうっとして色々と頑張って居るんだ。

今では美月と一緒なら外にも出れる様になった。


そして、そんな日々も今日で終わりだ。今日から一人で外に出れる様に学校に行くと決めたんだ。


だから、美月に甘えない様に今日は先に行って貰った。




「で、何で私に引っ付いているの?」


結弦はぷるぷるっと身体を震わせて自分より背が低いノエルに引っ付いていた。


「だって、怖いから」


周りがまた俺の事を何か言って噂をしていると思うと怖くなってくる。

そんな事は無いとここ数日で分かってきたけど、どう思っても身体が震えて呼吸が荒くなってしまう。


「………そんなに引っ付かないで下さい。貴方と勘違いなんてされたくありません!」


ノエルは結弦を引き剥がして先に行ってしまい、結弦は地面に手を着いて行ってしまうノエルに手を伸ばして「まってぇぇ!」っと叫んだがノエルは無視して学校に向かってしまった。


(え? 俺、どうしたら良いの? このままじゃ、学校に行けない!?)


結弦は辺りを見渡すとひそひそっとこっちを見て話しているに気づいて。


(怖い………………。怖い、怖い、怖い!?)


結弦は無我夢中に周りの人達が怖くて前に一直線に走って行った。


知らない。俺は自分がしたい様にピアノを弾きたかったんだ。だから、お前ら何かの期待の言葉なんて俺は知らない!


「!?………。ここは?」


無我夢中に走ってる内に運良く学校に着いたみたいで結弦は校門前に立っていた。


(良かった~。このまま着けないのかと思った)


私立声音高校。いくつもの有名アーティストや演奏家を生み出してきた音楽専専門学校だ。

俺はここの推薦入学で入って二ヶ月は学校に行ってない。

普通なら退学になってもおかしくないが俺のお陰で更に受験生が増えたとかで残してくれたっと母さん達から聞いた。

本当にそれだけかは知らないが、残してくれただけでも嬉しい。


(ん? でも、俺のお陰で増えたって………)


俺を知った人達が多くて俺が来たら何か言われるのか?

ヤバい、そう考えるとまた息が苦しくなってくる。


期待してたのに。がっかりだ。終わったんだよ、お前は。


そんな言葉が俺に来るのか、嫌だ。お前らが勝手に期待していたんだろ。がっかりするならしろ、俺は知らない。終わった? 何が終わったんだ。俺はお前らに喜んで欲しくてやったんじゃない。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


意味も分からなく結弦は叫びだした。


俺は知らない。お前らが勝手に期待したんだろ。だから、俺は何も終わってない………………。


結弦はそのままそこで気絶した。


           ☆


「ん。ここは」


白い布団で薬品の匂いもして辺りを見渡すと白衣を着た女性が居たので直ぐに保健室だと分かった。


「おや、起きたかい。七臥結弦君」

「どうして、俺の名前を?」

「そんなの決まってるだろ。学生手帳を見ただけだよ」


そう言って多分保健の先生は俺の学生手帳を投げてきて布団の上に乗った。


茶髪の髪をポニーテールしていて見た目からは二十代前半の人に見えるぐらい綺麗な人だ。


「先生が俺を運んだんですか?」

「まぁ、運んだって言ったら私だが、お前が倒れてるのを見つけた女子生徒にも感謝しろよ」


「女子生徒?………………」


誰だか知らんがそれは本当にありがとうって伝えたいな。

と言うか、普通に人と話せてるし、これなら大丈夫だな。


「まぁ、ありがとうございました。最後にその生徒のこと聞いても良いですか?」

「うーん。個人情報は喋らん。それにお前がそいつを知って何をするか分からんしな!」


先生は疑う眼差しで見てきて本当に俺が何かしでかすとでも思っているのか。


「違います。お礼が言いたいだけです」

「う~ん。そう言っても嘘かもしれんしな~!」


クスクス笑いながら言う先生にイラッとして「もう良い!」っと怒鳴ってから部屋を出て行こうとした。


「待てよ。桂木 月(かつらぎ るな)だ。忘れるなよ?」

「はいはい」


結局教えるじゃんか、この先生………。


俺はフードを深く被り自分の教室に向かった。




教室に着いてドアの前で立ち止まっていた。


ドアは引き戸。だから引けば直ぐに教室に入れるんだ。

ガヤガヤっと教室で騒ぐ声がする。もしかしたらそこで俺の噂をしてるかもしれない奴が居るかもしれない。

そう思うと、また息が苦しくなってくる。


(この意気地無しが。俺は変わるって思ってここまで来たんだろ。だったら変わらないでどうする)


俺はそう自分に言い聞かせて。深呼吸をしてから教室に入った。


一度は入ってきた俺の方に目を向けたクラスの人達だが直ぐに目線は話していた相手や読んでいた本に移った。


(大丈夫。大丈夫だ)


俺はそう言い聞かせて学校に来る前日に聞いた俺の席の場所まで向かい座った。

座った後も何も言われることも無かったので多分ここが俺の席で合ってるんだと思う。


そして、何故か隣には今朝俺に酷い事をしてきたホームステイのノエルが居た。


(いや、何でこいつ居んの? 見た目から十四ぐらいに見えてたんだけど)


友達と話していてとても仲が良さそうに見えた。


周りも殆ど人と話していて引き籠りだった俺にはとてもうるさく感じた。

それはホームルームが始まるまで続いて余り静かには居られなかった。


そして、ホームルームは終わり授業へと入った。


授業は午前が普通の授業で午後から音楽の授業があるみたいだ。


午前の授業はなんなりって出来た。部屋にこもってすることも無かったから多少なりと勉強をしていたお陰だ。


最初の難関は越えられて次の難関がやってきた。


「ねぇ、七臥君で合ってるよね?」


休みの時間にいきなりクラスの女子に話し掛けられた。


ここまでちゃんと話し方も美月に学んで来たんだ。俺ならやれる。

そう意気込みを入れて話し掛けて来た女子に返事を返した。


「えっと、何?」


あぁぁぁ! 失敗した! こんなぎこちない返事は絶対に変に思われた。


「?………。えっと、七臥君呼んでる人が居るんだけど」


そう言って女子は教室のドアの方を指差した。

そっちには黒髪でミディアムショートにして可愛らしいまたしても女子が居た。


俺は勇気を振り絞り恐る恐る近寄って行った。


「あの、何か用?」


まただ。ぎこちない言葉になってしまった。


「あ、ごめんね。大丈夫だったか気になって見に来ちゃった」

「へ?………………あ、もしかして桂木月さん?」

「うん。そうだよ」


間近で見ると更に可愛く見える。大きくパチリとした瞳に肌も白くて綺麗だ。

思わず見とれてしまう程に綺麗な人だ。


「まぁ、良かったよ。校門で倒れてたからびっくりしたよ~!」


あ、ヤバい。喋り方がめっちゃ和む。


「は、はい。本当にその節はありがとうございました」


ちゃんとお礼も言えたし、これ以上この人と居ると顔がニヤけそうだから早く席に戻りたい。


「うん。また後でね!」

「え。あ、はい」


また後ってなんだろう? だけどニヤけそうだったから帰ってくれるならありがたい。


桂木も帰ったので俺も席に戻ると。


「ねぇ、校門で倒れたの?」

「ん。まぁな。後、俺に話し掛けない方が良いだろ」


入ってきた印象も暗いし教室に居てもフード被ってるからかなり印象が悪い俺なんかに話し掛けたら変に思われるから俺からの気遣いだ。

それが分かったのかノエルはそれ以上話し掛けて来なかった。




「はい、皆さん。今日は、あ、そうだ」


先生が何かに気づいた顔をしてニコッと笑い俺にはそれが不気味に思えた。


「確か、七臥結弦君が今日は来てるですよね! なら、少しだけピアノを弾いて貰いましょうか」


はい? 何て言ったこの先生………………。


クラスの人達はざわざわっと騒ぎだして。そんな奴居たっけとか見たら気づくのに~っとか言ってる人達の声が聞こえる。


「あら? 今日はもしかして来てないのかしら?」


はい。そうですから諦めて下さい。


こんな大勢の前でやる何てもう無理だ。絶対に過呼吸を起こして終わりだ。

そんな俺に悪魔の様な事をやってくる奴が一名居た。


「結弦はあんたでしょ。さっさと行きなさいよ」


後ろからノエルの声が聞こえてその目線の先には俺が居た。

クラスの人達も一斉に俺を見て。


「は? いやいや、あいつなの?」

「あー、でも、名前そうだった様な?」


辞めろ。俺を見てひそひそっと話すな。俺はお前らの期待何て知らない。俺はもう辞めたんだ。だから、辞めてくれ。


また疑心暗鬼になってしまい呼吸も荒くなって行く。


分かってる誰も俺の事はもう話してないって。でも、もし、また変な期待をさせてがっかりしたって言われたくない。


「………はぁ」


俺は立ち上がりピアノの方に歩いて行った。


美月が俺の為に今まで色んな事をしてくれたんだから、変わらないと美月がしてくれた努力が無駄になる。


無心だ。無心で行けば怖くなんて無い。


そのまま周りに耳を傾けず無心でピアノの椅子に座り。


「ふぅ」


久しぶりだ。こう言う椅子も鍵盤やこの蓋を開ける時の重みも。全部が懐かしく感じる。


あぁ、このまま出来そうだ。

その瞬間結弦はピアノを弾いた。


流れる様に心に響く音。本当にピアノの音かと疑わしくなってくる綺麗な音色に皆は圧倒された。



(これが、天才ピアニスト七臥結弦………………)

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