変わりたい自分への希望
※根倉な思考が多いです。
カチカチ、カチカチっとマウスやキーボードを使ってPCゲームやってたり動画を見ていたりをする七臥 結弦。
彼はこの春から高校一年にして引きこもりだ。理由は人が怖いからだ。
結弦は中学生まで天才ピアニストと言われるまでに至っていた。
だけど、彼は一度だけファンからのプレッシャーに負けて舞台から姿を消した。
それからだ、結弦は部屋に引きこもる様になったのは。
毎日、毎日、パソコンやスマホの画面とだけ顔を合わせて家族とすら顔を合わせない様にしていた。
怖い。それだけで結弦は人と目を合わせるのさえ恐怖して直ぐに過呼吸になってしまう。
だから、家族も結弦をそっとして時々にメールとかで連絡を取って元気で居るか確認を取るだけの生活を送っている。
ご飯は部屋まで運べば勝手に食べて、食べ終わったら誰も居ない時に自分で洗っている。
風呂も誰も起きてない時間に入っては居るが、たまに誰か起きてきても誰も結弦に顔は見せない様にしている。
「………」
またマウスを使って動画を変えたり見たりしている。
家族や知り合いに顔を見せなくなってどれぐらい経っただろうが、もう覚えてないぐらい皆に会ってない気がする。
たまに会ってみようかなって思ってドアを開けて行くけど、皆の声が聞こえると直ぐに部屋に戻ってベットの上でうずくまってしまう。
自分でも思う。こんなこと早く直さないといけないって。
だけど、だけど………………怖いんだ。
人を見るだけで毎回思い出してしまう。皆からの期待の言葉を………。
「!?………ハァハァ」
頭の中で想像してしまい冷や汗を大量にかいていて呼吸も荒くなってしまった。
直ぐに息を整え様とするがそれより先に呼吸が荒くなって行き僕は椅子から倒れ落ちてしまった。
(駄目だ。このままだと………………)
直ぐに薬を飲もうと立ち上がるが身体に力が入らなくその場に倒れる。
「あ、あぁ………………」
声もまともに出せず家族すら呼べない。
そのまま僕は気を失った。
☆
「ん。あ、今何時だ?」
「えっと、十八時だよ。兄さん」
僕が時間を確認する前に後ろの方で先に時間を教えてくれたのは妹の美月だ。
それに一瞬驚いたが、近くにあったスマホを見ると何通もメールが来ていて美月は心配なって見に来てくれたんだと思う。
「………ありがとう。ごめん。もう出てって貰って良いかな?」
心配して来てくれたのに直ぐ出て行かせるのもどうかと思うが、仕方ないんだ。顔を合わせるだけでまた苦しくなるから。
「うん。兄さん、気を付けてね」
美月はそれを分かっていてくれるからこそ僕は心が痛くなる。
美月は部屋を出て行き俺は直ぐに鍵を閉めてベットに寝転がった。
俺がこうなっても家族は普通に接してくれる。と言うか前より優しくなった気がする。
だから、少しでも家族を心配させない様に部屋に引きこもったんだ。
外に出ると直ぐに過呼吸を起こして倒れて、家族に心配を掛けるから部屋に居ることにしたけど、もしかしたら今のこの状況も家族に迷惑をかけているのかもしれない。
そう思うと、自分が情けなくなってきて泣けてくる。
「何で、こうなったんだろう」
理由は明白。俺が期待のプレッシャーに負けて人が怖くなった。
君になら出来る? 結弦君なら世界最高のピアニストになれる?
ふざけんな。その言葉しか僕は出てこない。
流石にそうは言ってはいないけどそれらしい事は言っていたと思う。
僕は自分が弾きたい様にピアノを弾くだけ。それが唯一の楽しみで他には何もいらなかった。
たまにネットで俺に対する掲示板を見る時がある。
天才は期待に答えてなんぼだとかがっかりしたとかのコメントが多かった。
勝手に期待したのはそっちだろ。
僕は自分が思う様に弾きたかったんだ。いちいち誰かの期待を受けてやりたかった訳じゃない。
でも、色んな人に褒められてそれがたまらないぐらい嬉しくてそれで皆の期待に答えて頑張ろうっとした自分も居たから言い返せない。
今の俺は何も役に立たなくて居るだけで邪魔な屍同然の人間だ。
「………………だよな、そろそろ変わらないといけないよな」
家族の為にも自分の為にも俺は変わらないと駄目だ。
っと、決まればさっそく家族に顔を合わせに行こうとドアノブに手をかけるがそれ以上が動かなかった。
やはり、怖い。今さら出て行って父さんや母さん、美月はどう思うんだろうか。
もしかしたら、もう、俺なんてどうでも良いと思われているかもしれない。
俺は深呼吸をして心を落ち着かせてから美月に電話を掛けた。
今の僕にはこれが精一杯。美月に掛けた理由はさっき心配をして見に来てくれたからだ。
「兄さん? どうかした?」
「あ、いや、その、えっと」
電話に出た美月の声はさっき聞いた声と同じでなんだがホッとした。
いや、ホッとしてる場合じゃない。早く美月に用件を伝えないと。
「美月、会いたいから部屋まで来てくれないか?」
「へぇ!? 兄さんが!?」
うっ、やっぱり俺が会いたいとか言うのは気持ち悪いのかな。
そんな心配をしつつ美月に来てくれないかと声を掛けると「分かった! 少し待ってて!」っと元気で少しうるさい声で返事をして電話を切った。
「えっと、これは別になんとも思われてない?」
美月の反応がいまいち理解出来なく暫く待っていると、ドタドタっと走って来る音がしてその直後、鍵が開いて美月が入ってきた。
「はぁはぁ、ごめん。兄さん待った?」
「う、ううん」
駄目だ。人が来たって分かると下向いてしまう。
美月が今どんな表情でどんな服を着てるとか俺には分からない。
でも、そんなの今日で最後にしたい。どうにか美月の顔ぐらい見ないと兄としては駄目な気がする。
俺は息を整えてから顔を………………上げれなかった。
何で、妹の顔すら見てあげられないんだ。美月は俺を心配してくれてる人なんだ。ちゃんと話もしたいし家族皆でご飯も食べたい。
「兄さん? 私に会いたい理由ってなに?」
「………………ごめん。本当は顔が見たいんだけど、どうしても顔が上がらなくて………本当にごめん」
呼んだのに、わざわざ来て貰って成したかったことすら出来ないなんてもう飽きられて当然じゃないか。
「え?」
そう思っていた僕の手を美月は優しく女の子らしい小さくて柔らかい手で僕の手を握ってくれた。
「大丈夫。兄さん、怖くないから見てよ。今の私を」
「う、うん」
ほんっと駄目なお兄ちゃんだな。妹に後押しして貰うなんて。
俺はもう一度息を整えて心を決めて顔を上げた。
その時、久しぶりに妹の顔をちゃんと見た気がした。
俺と同じ黒髪で先ぽ少しカールが掛かった癖っ毛の髪をしていて日焼けとかしていないのか白く綺麗な肌をしていた。
「ほら、ちゃんと見て」
「………………うっ」
駄目だ。少しは見えたけど呼吸が………………。
やっぱり、駄目なのかな。これは一生直らないものなのか。
そして、過呼吸が落ち着いた頃に美月から声が掛かった。
「兄さん。その、兄さんが苦しくないなら、明日からこれしませんか?」
「え……………。えっと、美月に迷惑じゃないなら、その、お願いしても良いか?」
決して苦しくない訳ではない。むしろ死にたいと思うぐらい過呼吸は苦しいものだ。
「では、明日から特訓しましょう!」
「うん。お願いします」
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