89 やっほ~~
「超絶って……そんな欲しいのかよ」
あまりの、剣幕に引き気味のエギエディルス皇子。
そんな物を欲しがる意味がわからない。
「欲しい!!」
小さくてもいいから、浴槽にのんびり浸かりたい。
「なんかよくわかんねぇけど、そのくらいなら……俺が魔法で作ってやるよ」
城や屋敷が欲しいと、言っている訳ではないし、簡単に作れるしいいかなと快諾した。
「やっほ~~!!」
莉奈は、両手をあげて喜んだ。
念願の浴槽だ。これで肉まん生活ともおさらばだ。
「リナ……そんなに嬉しいの?」
莉奈の喜び様に、ラナが呆れ笑いをしている。
「ちょー嬉しい!!」
大喜びの莉奈である。なかば小躍りしそうな勢いだ。
「身体を、お湯に浸けてどうするの?」
モニカは、莉奈のあまりの喜び様に、浴槽が気になったらしい。
「のんび~~りする」
子供ではないので、泳いだり、オモチャで遊んだりはしない。
寝る事はあるかもだが。
「ふ~ん? のんびりするだけ?」
「するだけ……だけど」
「だけど?」
「浴槽に浸かって身体を温めると、疲れも取れるし、肩こり、腰痛、不眠症にもいいんだよ?」
おまけに、源泉かけ流しの温泉だ。効力は良いに決まっている。
「……え? そうなの?」
モニカが、驚いていた。温泉の効力なんて、知らないで使っているのだろう。
「そうだよ? 温泉治療って療養もあるし、擦り傷とか神経痛なんか良くさせるには、温泉に浸かるの有効だと思うよ?」
痔にも効くけど、それは言わない。
「え? マジか!?」
今度は、エギエディルス皇子が驚いていた。
「エドは別に……神経痛とかないでしょう?」
妙に食いついてきた、エギエディルス皇子に苦笑いだ。
全然子供だけど、実はあるのかい?
「ないけど! 疲れとか、擦り傷にいいなら……軍部の方にあった方がいいかなって」
と真剣に考えているエギエディルス皇子に、莉奈は口端を弛めた。
基本的に真面目なんだよね、この子。だから、少しでもこの国を良くしようと、一生懸命で私を【召喚】させてしまった訳だし。
初めは当然、頭にもきたけど……今は可愛いし弟みたいで、何か手伝ってあげたいと思う。




