685 ギリッシュチュネチロックコシピロ・ローリ・ロールとマビスラブラチュネチロックコシピロ・ローリ・ロール
王竜と真珠姫はややこしい名を耳にし、仲良く眉根を寄せている。
そして、なんだか面倒くさい話だとでも思ったのか、倒れている小竜を連れて夜空に溶けて行ってしまった。しかし、あまり遠くへ行く気はないのか、近辺をグルグルと旋回している。きっと辺りを警戒してくれるのだろう。
「あの種別違いが役に立つのか」
そんな竜達を見つつ、先程のチュネチロックコシピロ・ローリ・ロールを思い出すフェリクス王。
口にすると身体が発光するという、インパクトが強い蜜玉。
魔力を溜め込む玉は役に立ちそうではあるが、ギリッシュだのマビスラブラとかいう違う品種が、キラーアント殲滅の最善案に結びつかない。
莉奈達も想像がつかず、シュゼル皇子を見た。
「えぇ、どうやらアレ"寄生種"らしいんですよ」
「寄生種?」
「はい。なんでも、他の生き物に卵を産みつけるとか何とか」
元々知っていたのか、【検索】して視たのか知らないが、シュゼル皇子はほのほのとしている。
「マジかよ」
エギエディルス皇子が腕を摩りながら、訊いていた。
想像したら気持ち悪くなったらしい。
「ちなみに、皮膚にとかですか?」
ダニとかハエの一種は、角質層と呼ばれる皮膚の中に、卵を産みつけると聞いた事がある。
田んぼにいるスクミリンゴガイは、稲や田んぼの縁に卵を貼り付けるタイプだ。
その魔物はどちらかのタイプなのかなと、莉奈はシュゼル皇子に軽い気持ちで訊いてみた。
「いえ、身体の中みたいですよ?」
「ソウデスカ」
訊くんじゃなかった。
穿ればどうにかなるレベルではなく、ガッツリと中に産みつけるらしい。
あの魔物は、蜜玉が美味しいカラフルなヤツだと思っていたが、その仲間はとてつもなく恐ろしい魔物だった。
「あぁ、宿主の身体を栄養にする系か」
「その様ですね」
フェリクス王はその返答に一瞬顔を顰めたものの、なるほどと顎を撫でていた。
その様子から見て、身体に卵を産みつけるタイプの魔物が、他にもいそうである。産みつけられたらたまったものではないが、キラーアントに天敵みたいなモノがいるだなんてラッキーだ。
もし、ああいった繁殖力の高い魔物に天敵がいなければ、ドンドンと増え続け、きっとこの町だけではなく、国が大変な事になっていたに違いない。
「ちなみに、それってキラーアントにだけですか?」
哺乳類にしか寄生しない虫や細菌がいる様に、キラーアントみたいな昆虫系にしか寄生しない魔物なのかなと、莉奈は気になった。
「いいえ、主に外骨格系の生き物を好んで、卵を産みつけるとか」
「なるほど、外敵から子供を守るために、外骨格の硬い生き物を……」
シュゼル皇子の答えに、ローレン補佐官が頷く。
どんな生き物も、卵や幼体だと弱く外敵が多い。
その弱い時期を、硬い外骨で覆われた魔物に卵を産みつけ、守らせるのだ。そして卵から孵った幼体は、その身体を栄養源にして、スクスクと育っていく訳だ。
なるほどと頷く反面気持ち悪い。
しかし、天敵なら利用しない手はないだろう。
アーシェスはモルテグルの未来が、完全に見えた気がした。
「なら、それを捕まえて巣に入れればイイのね?」
「そうですね。どこにいるか分かりませんけど」
現段階で居場所を知っているのは、エギエディルス皇子の番だけだ。
たまたま見つけただけにしろなんにしろ、その付近を探せばまだいるかもしれない。可能性はゼロでないだけ、ワンチャンありそうである。
「チビは知ってそうだよな」
「唄を歌っていたくらいだしね」
エギエディルス皇子が夜空を見上げたので、莉奈も同じ様に見上げる。
確か小竜はあの魔物を、ボウボウとかジョウジョウとか言っていたし、何だか知っていそうな口振りだった。
それを踏まえると、どこにいるかまったく分からない我々より、情報は持っていそうである。ただ、アッチとかコッチとか漠然とした場所しか、言わない様な気がするけど。
「おチビちゃーーん!!」
モルテグルの未来を握っているであろう小竜を、アーシェスは呼んでみた……が、来る気配などまったくない。
代わりに返事をするのは、どこか遠くにいる魔物だけ。
これでは、人の声に反応した魔物の方が、小竜より来そうである。




