683 攻撃が最大の防御なり?
せっかく、亡き者ならぬなかった物にしたのに、まさか帰って来るとは……。
もはや、運命のイタズラを通り越して、嫌がらせにしか感じない。
莉奈はこの世界の神を呪いながら、香ばしい匂いのするカカ王を、無表情で魔法鞄にしまった。もう一度蹴り飛ばしたいところだが、そんな事を何度もやったら、不自然過ぎて逆に疑われそうだ。
あの時、もし小竜に当っていなかったら……と莉奈は思ったが、それすら運命に弄ばれている気がした。
だが、人間諦めが肝心だと、莉奈は頭を切り替える。
辺りにはカカ王だけでなく、木の実や岩など色々と転がっていた。何かに使えるかもしれないので、木の実と一緒に拾っておく。
王宮に戻ったら【鑑定】すればイイだろう。
莉奈が夢中になって拾い集めている姿を見て、シュゼル皇子が"カカ王"について、何も訊いてくる事はなかった。
カカ王だけなら怪しまれたかもしれない。しかし、その他の物も拾い集めていたので、カカ王もどうやらその他に紛れたらしかった。
エギエディルス皇子は、こんな時にも何か拾い集める莉奈に、呆れまくっていたけれど。
「やるなら呼んで下さい」
どこかへ行っていたハズの真珠姫が、フワリと地へ降りて来た。
王竜の閃光と爆発音は、どこにいても感じたらしい。
そもそも、竜とは本来なら好戦的な生き物。だが、本気を出すと人が滅亡しかねないので、我慢しているのだ。
それなのに、王竜がド派手に攻撃しているのが見えたのだから、真珠姫はさぞかし驚いたに違いない。
王竜でなければいけない理由がないのであれば、自分にやらせて欲しかったと。
少し本気を出せて満足している王竜を、真珠姫は羨ましそうに眺めていた。
「あなたが近くにいないから」
シュゼル皇子を降ろし、シレッと夜空へ飛んで行ったのは真珠姫だ。
フェリクス王達は、とりあえずキラーアントを一掃出来るのであれば、王竜でも真珠姫でもどちらでも構わなかった。
だけど、真珠姫はいないのだから、頼み様がない。王竜がそこにまだいたから、お願いしただけの事。ただそれだけだった。
シュゼル皇子がそう言えば、真珠姫は不服そうな視線を向ける。
なにせ、吹いて鳴らせば遠くまで聴こえる"鳴り笛"という、便利な物がある。まだ、近くに飛行していたのだから、吹いてくれればすぐに来れたのだ。
それが、どうにも納得がいかないのか、真珠姫はブツブツ文句を言っている。どうやら王竜の攻撃は、魔物を触発させたのではなく、真珠姫を触発してしまったらしい。
シュゼル皇子はほのほのしながら、そんな真珠姫をチラッと見た。
「まぁ北側にも魔物がいますから、少しくらいなら」
シュゼル皇子が言うが早いか、真珠姫は待ってましたとばかりに地を蹴った。
空に駆けた真珠姫の瞳は、爛々としていてやる気に満ちている。
「弱めにお願いしますよ〜」
一応、シュゼル皇子が声を掛けているが、戦闘モードに切り替わった真珠姫に、聞こえているかどうか分からない。
あっという間に戦闘態勢に入ったらしく、真珠姫の口から閃光が見えた。
ーーチュン!
だが、一応"弱め"と聞いて配慮したのか、王竜みたいに地平線へ一直線ではなく、チュンチュンと小刻みに放っている。
まるでシューティングゲームの様に放たれたビームは、当てられた対象物が派手にドゴンドゴンと弾け飛んでいた。
今さっき見た王竜の攻撃に比べたら、小さな爆撃だが、あれはあれでスゴい攻撃力だと思う。狙った魔物に閃光ビームを的確に当て、確実に倒しているのだから。
「「「……」」」
あらたに始まった戦闘に、モルテグル兵達は頬を引き攣らせていた。
モルテグルは今、竜に救われているハズなのに、目の前に広がっているのは、何故かこの世の終わりの様な光景だ。
莉奈達の通って来た西側は、荒野か焼け野原みたいだし、フェリクス王が何かいると言っていた北側は、現在進行形で爆発中。
助けて欲しいと懇願していたハズのアーシェスさえ、何だか複雑そうな表情をしている。
おそらく、アーシェスの中では、もっとスマートに解決してもらう予定だったのだろう。想定と真逆の解決法で、何も言えなくなってしまったらしい。
きっと町の中は、さらに混沌としているのでは? と莉奈は思う。
なにせ、誰が何をやっているか知っていてもこうなのだから、何も知らなければ恐怖しかなく、阿鼻叫喚な光景が広がっていそうな気がする。
莉奈は、楽しそうに暴れている真珠姫と小竜を見て、モルテグルの人達が竜に怯えなければイイな……と思うのであった。
作者、三連休は出勤だったので頭が疲れていたのか、曜日感覚が…
完全に日曜日と月曜日を間違えて投稿しておりました。
(むしろ、投稿した記憶がない)
なので、来週の月曜日はお休みするかもしれません。m(_ _)m




