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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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675 見え始めた希望



 莉奈はエギエディルス皇子が、そんな事を考えているとは露知らず、嬉々として話を続けた。

「"重曹団子"を与えてみるなんてどうかな?」

「「重曹団子?」」

「重曹と砂糖、ハチミツを混ぜた毒餌です」

 おばあちゃん家に行った時、軒下にある白い団子を見かけた事がある。

 蟻が仏壇から盗むにはかなり大きいそれは、何かと訊ねたら"重曹団子"であった。

 殺虫剤だと家庭菜園で採れる野菜に薬剤が付くと、害のない練り餌"重曹団子"を作って設置したのだと聞いた覚えがある。ただ、コレはあくまで、甘味好きな蟻オンリーで、木材を食べる白蟻とかには効果がないらしい。

 ……となると、キラーアントにも効果がない可能性もあるが、試す価値はあるのではと考えた。



「「毒餌」」

 そんな手もあるのかと、アーシェスとアーリャが感心する背後で、シュゼル皇子が小さく唸っていた。

「なるほど、毒餌ですか。それはイイ案ですね。しかし、毒となる重曹ならヴァルタール皇国でも、このウクスナでも採れますが……砂糖やハチミツは大量となるとちょっと」

 確かに、小さな蟻ならともかく、超巨大な蟻に対しての重曹団子なのだから、相応の量が必要だろう。

 しかも、シュゼル皇子のこの反応を察するに、代わりになる様な甘味類も、大量に用意するのは難しそうだ。



 どうしたものかと莉奈も唸っていれば、フェリクス王がチラッとこちらを見た。

「リナ、要は甘さを呼び餌にして、毒となる重曹を摂取させるのが目的なんだろ?」

「そうですね」

「なら、別に砂糖やハチミツじゃなくとも、キラーアントの好物に重曹を塗布して投げ込めばイイ」

「なるほど」

 フェリクス王の応用方法に、ローレン補佐官が納得していた。

 重曹団子は、砂糖やハチミツは重要ではなく、蟻に毒である重曹をいかに食べさせるかが重要。

 莉奈の話を聞いていたフェリクス王は、シュゼル皇子同様に、重曹団子の役割を理解したみたいだった。



「それなら、どうにかなりそうですね」

 ローレン補佐官曰く、重曹は鉱石なので、意外と簡単に手に入るそうだ。

 莉奈みたいに口にするなら、安全性も考え純度は高い方がイイが、蟻にはどうでもイイ。産地によっては、乾燥させたり粉砕したりと手間はあるが、高価な物でもないし量は豊富だ。

 アーシェスとアーリャも、希望の光が見えたとばかりに、頷いていた。



「「後は、キラーアントに効果がある事を祈るのみだな」」

 蟻とキラーアントは似て否なるモノ。

 可能性はゼロではなさそうだが、過度の期待は持たない方がイイと判断したらしい。

「ちなみにキラーアントって"蟻酸ギサン"を出したりします?」

「"蟻酸"?」

「うん、毒? みたいな液体?」

 莉奈が言った"蟻酸"に対して、エギエディルス皇子が興味深々顔で訊いて来た。

 敵を攻撃する酸みたいな液体や、フェロモンみたいなモノで、蟻の道標にも使うとか、教育テレビとか昆虫の不思議図鑑で見た様な記憶がある。

 蟻の魔物も似たような生態なら、蟻酸も出すのでは? と思ったのだ。



「その蟻酸を持ち合わせていると、効果があるのですか?」

 莉奈の言わんとしている事が、今の簡単なやり取りで分かったらしい。

 さすがはシュゼル皇子だ。話が早い。

「その蟻酸に重曹が反応して、蟻に効くらしいんですよ」

 莉奈も良く分からないが、その2つが化学反応を起こして、体内で二酸化炭素を発生させて死に至すとか何とか。

 だから、キラーアントが蟻酸を持っていれば、蟻同様に化学反応を起こすに違いない。



「なるほど」

「蟻酸なら、キラーアントも吐くな」

「なら、効くんじゃね?」

 シュゼル皇子が興味深そうに訊いていると、フェリクス王とエギエディルス皇子が小さく頷いていた。

 どうやら、キラーアントも蟻酸を吐くらしい。

 しかも、腐食性や酸性だったりと、個体により色々と違うそうだ。

 莉奈とフェリクス王達の話を訊いていたアーシェス兄妹や、護衛達の表情もみるみる内に明るく変わっていた。



「後はキラーアントの侵略が早いかーー」

「毒餌の効果が早いかーー」

「モルテグルの消滅が早いかーー」

「「やめてくれる!?」」

 フェリクス王兄弟の容赦のない言葉を、アーシェス兄妹が慌てて止めていた。

 せっかく見え始めた希望だっただけに、再び叩き落とされると絶望感が半端ない。分かっている現状を、わざわざ口に出さないで欲しかったのである。

 






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