表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

668/674

668 基礎があるからこそ、成り立つ説明



 ーー結果。



 アーリャの魔法に不安を覚えたシュゼル皇子が、仕方ないとばかりにアーリャのボウルにも氷魔法を掛けていた。

 エギエディルス皇子も近くにいるので、また魔法を使った時、末弟に何かあったらと心配だったのかもしれない。



「卵白には砂糖を大さじ1杯入れて、そこにある泡立て器でツノが立つくらい泡立てて下さい」

 莉奈がそう説明したら、泡立て器を初めて見たアーリャが、首を傾げていた。

「泡立て器? 何だか面白い道具だな」

「攪拌させたり、泡立てたりする時に使うのよ」

 アーシェスは何度か王宮に来た事があるので、泡立て器の存在は知っていたらしく、アーリャに使い方を説明している。



「"角が立つくらいまで"とは、一体何の角をここに立てるつもりなんだ?」

「はい……え?」

「ユニコーンの角か?」

「……えっと?」

 そんな質問をされるとは思わなかった莉奈は、言葉に詰まる。

 メレンゲをツノが立つくらいに泡立てるのであって、ツノを実際に立てるのではない。

 王宮にいる料理人達は、普段から料理に携わっていたので、莉奈の説明で何となく理解していた。(何の角かは訊いていたけど)

 だが、完全な初心者アーリャは、ツノが立つという比喩表現すら分からないらしい。莉奈が普段何となくしていた説明は、基本を知っているからこそ、成り立つのだと思い知る。



「どうせなら、立派な角を立てたいな」

「……」

 至極真面目にそう言うアーリャに、エギエディルス皇子は唖然だ。

 ツノが立つくらいと言ったせいで、泡立てて固くなったメレンゲの中に、何かの動物のツノをブッ刺すとでも思ったみたいである。

 残念ながら、卵白をいくら泡立てても、メレンゲの上にはツノは立たないだろう。いや、虫の角くらいなら立つかもしれないが……今のところ立てる予定はない。



「立派な角って……あなた何を言っているのよ?」

「え、何って、立派な角を立てたいなと?」

 いたって真面目なアーリャに、アーシェスは盛大なため息を吐いた。

「ねぇ、リナ。角が立つくらいって、しっかりと泡立てるって意味でイイのよね?」

 莉奈も唖然としていれば、料理経験のあるアーシェスが、何となく理解出来たらしく訊いてきた。

 突拍子もない事をするのが莉奈だ。万が一もありそうだし、一応確認したかったらしい。

「あ、そうですね。泡立て器で持ち上げられるくらいにしっかりと」

「ボウルをか?」

「もう、卵白に決まっているでしょう!?」

 アーリャが疑問を口にしていれば、アーシェスがツッコミを入れていた。

 しっかり泡立てれば、ボウルも持ち上がるかもしれないが、試した事はないので頷けない。アーリャの発想には莉奈も驚くばかりである。



 とにかく、莉奈がする説明を、アーシェスがアーリャに説明し直す事で落ち着いた。

 アーリャはお嬢様を通り越して、厳重な箱に入れられて育った王女様で、現公王。何も知らないのは仕方がない。



「ボウルの下に、濡れたフキンを敷いて置くとズレないので使って下さいね」

 莉奈は濡れたフキンを、エギエディルス皇子とアーリャに渡した。

 攪拌する時に手で押さえているより、濡れたフキンを敷くとボウルが固定されるので、泡立て器に力が入りやすいので楽になる。

 なるほどと、アーシェスがボウルの下に濡れたフキンをしいていた。



「では、頑張って泡立てて下さい」

 莉奈はとりあえず説明を終えると、魔法鞄マジックバッグから"豪神ナックルダスター"を取り出し装着する。

 これを着けると補正効果のおかげで、戦闘能力が爆上がりになるのは検証済。

 その数ある補正の1つ"瞬発力"が、もしかしてメレンゲ作りに役立つのではと考えたのだ。



「……お前」

 何をやるつもりだ? と不審がるエギエディルス皇子を横目に、莉奈は泡立て器を手に持ち、卵白に集中する。




 ーーシャカシャカシャカシャカシャカ!!




 想像通りに、莉奈の手が素早く動いた。

 その速さは……まるでハンドミキサーが如くである。

「……」

 エギエディルス皇子は、高速に動く莉奈の手を見て、口をポカンと開けていた。

 まさか、武器をそんな風に使うとは思わなかったのだろう。

「……イカレた使い方をしやがる」

 その武器をあげたフェリクス王も、呆れ笑いをしていた。

 自由に使えばイイと渡したが、そんな使い方をするとは想定外だ。

 もちろん、ナイフや斧など、武器の中には違う用途に使う事もある。しかし、それは元からそう使う物を、武器として活用しているだけ。

 拳を護り打撃を強化するための武器"ナックルダスター"は、どう転んでも武器から逸脱しない物だと考えていた。だが、それは固定観念だったと、フェリクス王は思い知る。

 補正効果があるとはいえ、ナックルダスターを調理補助として使用するのは、後にも先にも莉奈だけだろう。



「面白い事を考えますね」

 同じ様に、驚き感心していたのはローレン補佐官だ。

 莉奈の発想は、いつも斜め上で感服さえする。ナックルダスターの補正を上手く利用しているなと、納得していた。

「リナらしいですね」

 シュゼル皇子も、にこやかな表情で感心していた。

 物騒な武器を、平和的な使い方もあると見せたのだ。それが何とも莉奈らしいなと、フェリクス王達は思うのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ