611 ウルッシュバードVS……?
予約投稿するのを忘れていました。( ・∇・)テヘヘ
「エド、帰ったらからあげまつりだよ!」
莉奈がそう嬉々として言うまつりは、当然何かをまつる"祀り"じゃなくて、おまつり騒ぎの"祭り"なのだろうなと、エギエディルス皇子は半目になっていた。
こうなると、もはや祭られるウルッシュバードにすら、同情心が湧いてくる。
「来るぞ!」
すぐそこまで、距離を詰めて来たウルッシュバードに、より一層の警戒をするランデル達。
その声に、莉奈のせいで一瞬、戦う気力が削げそうだったエギエディルス皇子も、すぐに頭を切り替え剣を構えた。
そろそろ襲い掛かって来る。
そう思い、フェリクス王以外の者達は、各々武器を手に集中した。
……が、真っ直ぐ突進して来るハズのウルッシュバードが、いつまで経っても襲ってこない。それどころか、何故か50メートル先で急に左右二手に分かれているではないか。
おそらく、莉奈達という獲物を取り囲み、混乱させたり一斉に襲い掛かるつもりに違いない。そうランデル達は判断し、再び警戒した。
たとえ囲まれたとしても、ウルッシュバードなどランデル達の敵ではないが、油断は大敵だ。
そう思いつつ構えていたのだが……ウルッシュバードは莉奈達を囲もうとする気配すら、まったくなかった。
二手に分かれた群れは、そのまま囲む事なくYの字を描く様に進み、莉奈達を完全にスルーである。それはまるで、莉奈達を障害物だとばかりに避けている様に見えた。
「「「……え、どういう事??」」」
こんな事は初めてで理解が出来ず、ランデル達は互いに顔を見合わせていた。
かなりの数に気構えていたランデル達は、自分達を避けて走り去って行くウルッシュバードの姿に、ハテナマークしか浮かばない。
体力を消耗させず、どう戦うかとか考えていただけに、完璧に拍子抜けである。
一応、土煙りに紛れて襲って来るかもと、しばらく気を張ってはいたが……ウルッシュバードの姿はドンドン遠くへと、小さくなっているではないか。
……一体、何が起きているのだ?
ランデル達や、アーシェス、ローレン補佐官の頭の中にはずっとハテナマークが浮かんでいた。
そんな中、ただ1人、その様子を見て理解を示す。
「鳥ってやっぱ、臆病なのな」
エギエディルス皇子だけが、小さくなるウルッシュバードの群れを見ながら、何か納得し剣をしまっていたのだ。
その言葉に、ランデル達は顔を見合わせていた。
ウルッシュバードを臆病者だと感じた事はない。ましてや、1羽や10羽ならともかく、あの数だ。たとえ臆病だったとしても、あそこまで来たら襲って来るだろう。
だが、何故かエギエディルス皇子は、鳥系は臆病者が多いと思っている口調だ。
どうしてそう思うのだろうか?
ーーとランデル達が、今度は違う意味でハテナマークが浮かぶ中、莉奈は1人……皆とは違う所に視線を向けていた。
ウルッシュバードが臆病かだなんて、莉奈は知らない。
知らないが……決して、臆病という理由だけではない気がする。ウルッシュバードは、危険察知能力が高いだけ。
だからこそ、こちらに向かっている途中で"魔王様"の存在に気付き、緊急回避したのではないかと推測する。
だって、エギエディルス皇子は以前、ロックバードに対しこう言っていたではないか。
『フェル兄を見て逃げるんだぜ?』と。
それが、鳥系の魔物……いや、魔物全般に通用する言葉だとしたら?
ロックバードが逃げ出すのだから、同じ様なウルッシュバードも逃げるのは、至極当たり前ではなかろうか?
強いて違うといえば、地を爆走して逃げるか、飛んで逃げるかの違いぐらいだ。
"コレガ魔王ノ力"
莉奈は、フェリクス王の真の力を目の当たりにした事よりも、ウルッシュバードが逃げた事にガッカリした。
「あ〜ぁ、魔王のせいでからあげが〜」
ーーバシン。
心の声が完全に漏れた莉奈の頭に、フェリクス王の鋭い平手が落ちてきた。
莉奈の言う"魔王"が誰かなんて、今さら説明しなくても、本人ですら分かるらしい。




