6 鑑定
なんとも微妙な朝食の後、あの超絶美青年ことシュゼル皇子が、一人の男性を伴ってやって来た。
「おはようございます。リナ、昨晩はよく眠れましたか?」
とにっこり微笑むシュゼル皇子。
……おぉ、朝から笑顔が眩しい。
女子校生がここにいたら、黄色い声どころか、叫び声が響きそうだ。
「御配慮ありがとうございます。……思ったより眠れました」
にっこり微笑み返し。
……は~い。うそで~す。
眠れない処か、ガッツリ眠りました。もう、本人が引くぐらい、まさかの熟睡ですよ。
神経図太いわ~って思われるのがイヤだから、言いませんけど……ね?
「それは、よかった」
とさらに優しく微笑むシュゼル皇子に、心が和みつつ莉奈は、ふと思った。
確かに、このシュゼル皇子はビックリするくらい美青年だ。
だけど、血色が悪い気がするし、ガリガリとまでいかないが、痩せすぎな気がする。
病気ではないのだろうが、世のおばちゃんだったら、「兄ちゃん、ちゃんとごはん食べてる?」っていうレベルだ。
「……どうしました?」
あまりにも、ジロジロ見ていたのが良くなかったのか、シュゼル皇子に不審がられてしまった。
「あ、いえ。……朝、早くからどうしたのかなと、思いまして……」
チラリと、シュゼル皇子の隣の男性を見つつ莉奈は言った。
先程からいる、この男性は誰なのだろうか?
シュゼル皇子程じゃないが、この人も美形だ。
「あぁ、そうでしたね。彼は魔法省長官、ヴィル=タール」
「以後、お見知りおきを。リナ様」
とシュゼル皇子の紹介を受けて、ヴィル=タールさんが軽くお辞儀をした。
「……えっと、様はつけなくて結構です。タール様」
様なんてつけられる身分ではないし、つけられた事もない。
っていうか、明らかにタールさんの方が身分は上だ。
そんな人に "様" 呼ばわりは勘弁してもらいたい。
そういえば、ラナ女官長達もつけてたな、と莉奈は思い出し、後で敬称外すように言おうと思った。
「では、私の事もタールと……」
と様はつけなくていいと言われた。
「朝、早くから来たのには少々、理由がありましてね?」
「……はい」
「こちらの勝手な申し出で恐縮なのですが、リナには "鑑定" を受けて頂けたらと……」
とシュゼル皇子はにっこり微笑んだ。
「……鑑定……ですか?」
莉奈は、可愛くもないだろうが、コテンと首を傾げた。
"鑑定" と言われ、正直思い浮かぶのは、某TV番組。お宝を鑑定するヤツだ。私に、そんなお宝は持ち合わせている訳がない。"莉奈には" と言ったのだから、私自身なのだろう。
……えっ? 私を鑑定してどうするの?
「こちらの世界には、魔法が存在しているのは御存知ですよね?」
いまいち理解していない莉奈に、シュゼル皇子は説明をしてくれる。
「……はい」
だって、その魔法でこっちの世界に連れて来られた訳だし……。
「この世界には、主に7つの魔法が存在します。……まずは基本の、火、水、風、土。それに、光、闇、そして聖を足した7つです」
ふむふむ……7つですか。
って言うか、魔法なんてない世界からやって来たんですけど……鑑定、やる意味ありますか?
「魔法を使える者は、50人に一人とも100人に一人とも言われ、そう多くはありません。……ですから、聖女かどうかはともかく、あなたの技能を鑑定させて頂けませんか?」
と、シュゼル皇子は真面目にお願いしてきた。
……まぁ、願わくば魔法が使えたのなら、この国のために貢献してくれたらいいな……と言う事なのだろう。
見え隠れするシュゼル皇子の素直な心情に、莉奈はコクリと頷いた。
いくら一方的に喚ばれたとはいえ、何もしないで居られる程、図太くはないし何かしら出来るならしたい。
「ありがとうございます」
シュゼル皇子と魔法省長官は、頭を下げるのであった。